第24話

「まぁそうも行かないんだよ。あの組織の事はね」



 Dも目を瞑りながら答えた。ティムは逆に目が冴えてしょうがなかった。興奮しているのかもしれない。


「魔術師の塔の『独立性の原則』ですね」

 ティムも魔術師の塔という組織の原則を思い出しながら答えた。



 魔術師の塔は確かにそれぞれの国の法に縛られるが、その前に塔のルールに縛られる。それはパストン国とパストン国魔術師の塔の間で公式に定められている物でもあり、第一ルールは「魔術師の塔は公国権力から不干渉である」だった。


 つまりは魔術師の塔に事情聴取などできる筈もなく、それを要請した瞬間パストン公国の魔術師の塔は、パストン公国への協力を停止することは目に見えていた。


 Dは軽く頷きながら「難しい組織だよ。『魔術師の塔』って連中は。技術供給という意味で今の社会に必要不可欠な癖に、内容はブラックボックスも良いところだ。その提供している品物も、組織もね」


「公権力が呆れかえるね」とアニーが答える。

「彼らは別に公権に盾突いているわけじゃ無いからね。どちらかと言えば社会に貢献している。とは言えこの事態だからね。『魔術師の塔』だって公式には『遺憾である』とコメントを発している。明日にも党側のエージェントにも話を聞いてみる事としよう、とDは歯切れ悪く言った。


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