第287話 エレナ姫到着 -来てくれましたね-
王都から出て2週間、旧レーム領の領都に着いたエレナは着任の挨拶をするべく亮二を呼び出した。しばらく待たされたエレナだったが、現れたのはカレナリエンだった。亮二が迎えに来なかった事にがっかりした表情を浮かべたエレナだったが、久しぶりの友との再会に喜びの花を咲かせるのだった。
ひとしきり話をしたエレナが亮二が迎えに来なかった事に対して無言で確認すると、カレナリエンは苦笑を浮かべながら執務室への案内を始めた。
「亮二様は
「気にしてないから。今回は王位継承権8位のエレナ姫ではなく、特別監査官のエレナとして赴任したんだから。それはいいのだけど、リョージ様はどうされたの? 緊急事態?」
カレナリエンの謝罪にエレナは頭を振って問題ない事を伝えたが、亮二が執務室に居るにもかかわらず迎えにこない事を疑問に思いながら執務室の扉を開けるのだった。そこで目に入ったのは山のように積み上げられた書類と、一心不乱にペンを動かしている亮二の姿だった。
「特別監査官として赴任する事になった、エレナ=サンドストレムです。これからお世話になりますので末永くよろしくお願いします。公私共にお世話になりたいので、私の部屋に夜に来て頂けると嬉しいです。ところで、リョージ様。大量の書類と格闘されているようですが、物凄く忙しいのですか?」
「ようこそ。エレナ姫。特別監査官の挨拶にしては私情がてんこ盛りのような気がしますがよろしくお願いします。そうなんですよ。文官の数が圧倒的に足りてなく仕事がなかなか終わらないのです。ひょっとしてお供の方は文官ですか? 問題なければ手伝ってもらえると助かります? あっ! お迎えにも上がらずに失礼いたしました。本当に仕事が立て込んでおりますので」
着任の挨拶をしたエレナだったが、あまりにも忙しそうにしている亮二達をみながら質問をすると、苦笑しながら亮二が返答をした。返事をしながらも山のように積まれた書類を亮二はエレナと話をしながらペンを走らせており、その横ではニコラスとメルタが次々と運び込まれる書類に目を通しながら振り分けをしていた。2人は重要度によって書類を仕分けており重要な案件や緊急対応が必要なものについては亮二の決済待ちの山に、重要度が低いものについては別室に居る文官の部屋に送られていた。
「発展著しい旧レーム領の内情がここに集約されている感じですね。分かりました。さっそく、作業に取り掛からせて頂きます。皆の者、リョージ様の手伝いを」
「ははっ!」
書類の山を呆れたように見ながら、エレナは一緒に付いて来ていた配下の文官達に指示を出し、自らも書類を手に取って作業を進めていくのだった。
◇□◇□◇□
「いや。本当に助かりました。エレナ姫に付き添って来られた方々は優秀ですな。それに姫もこれほど文官としての能力があるとは。さすがリョージ様の婚約者となられる方ですな」
「有難う。ニコラス。あなたがリョージ様を支えてるので安心しています。これからも期待していますよ」
作業が一段落した一同はお茶やスイーツを食べながら休憩をしていた。エレナと一緒に来た文官たちの能力は高く、マルセル王がエレナの為ではなく人材が不足している亮二の為に送ったのは一目瞭然だった。
「最初に見た時は繁栄の象徴かと思いましが、それにしても量が異常に多いですよね?書類の山なんて初めて見ました」
「それは、リョージ様が立てた政策を実行したのと外遊をされていたのが原因ですね」
作業が終わった一同は食堂に移動して休憩をしていた。先ほどの書類の多さにエレナが感想を述べると、メルタが紅茶の用意をしながら忙しい理由の説明を始めた。
亮二が赴任してから矢継ぎ早に施策を打った事。食糧難事情を解消する為に大量の商人を呼び込んだ事。点在する街や村に立札で困っている事を募集した事や、深き迷宮から取れる魔石や素材が大量に送られてきている事。などの対策が上手く回り始めており、要望や報告、嘆願や連絡に相談などが大小関係なく領都に集まっている事が原因であるとメルタは説明し、最後に苦笑しつつ亮二を見ながら最大の原因を説明した。
「一番の原因は、今そこでお菓子を食べながらマッタリとしているリョージ様なんですけどね。エレナ姫が到着する直前に3日間も執務を放置して、街道整備事業に遊びに行かれてたんですから」
「遊びに行ってないぞ! リカルドとの約束を思い出したから行っただけだよ! その後は、心を入れ替えて執務に専念してるじゃん!」
メルタの台詞に亮二はお茶を飲みながら反論してきたが、周りから最初から頑張ってくださいと言われるとぐうの音も出なくなり、ふくれっ面をしながら紅茶を飲み干すのだった。
◇□◇□◇□
「そう言えば、お父様から書状を預かっております」
「えっ? マルセル王から?なんだろ?」
エレナから書状を受け取った亮二が封を開けて中を確認した。
「えっと。『旧レーム伯爵領をウチノ伯爵領と変更し、ユーハン辺境伯領にある駐屯地及び盤面の森を治める事を命ずる』だってさ。それと2年間は税の軽減と兵役の免除を許可するって。後は……」
亮二が書状を読み上げていたが途中で脱力してしまった。一同が訝しげにしていると、疲れた顔の亮二が手紙を差し出してきた。
「えっ? 読めってことですよね? 『そう言えば、そろそろあいすが食べたくなってきたのう。ぷりんでもよいぞ。そう言えばソフィア所長と恋仲らしいの。すいーつのフルコースが食べたくなってきたのう。恋人が5人くらい居ても構わんが、結婚するのはエレナを一番にするように』だそうです」
「まぁ。お父様がそんな事を? 恋人が何人居ても構わんなんて言わないで欲しいですわ! カレナリエン達と相談して妻となるのは10名と決めてますのに」
「そうですよ。それ以上は要相談ですからね。リョージ様」
亮二から手紙を受け取ったメルタが代読すると、エレナが怒りながら配偶者は10名と宣言してきた。エレナの言葉にカレナリエンが力強く頷きながら亮二にお願いをするのだった。
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