第286話 街道整備の視察6 -全て上手くいきましたね-

「よし! 1位だったリカルドチームには金貨3枚と王都のスイーツ10種。それと貧民対策が終了した後に、俺の領地への無料移住権をプレゼントだ。移住権を行使して、俺のところに来てくれた奴には家と仕事を紹介してやるぞ」


 亮二から賞金と賞品が発表され目録が手渡された。1位のチームからは歓声を上げながら亮二から商品と金貨を受け取ると、他のチームは羨ましそうな顔をしていた。貴族である亮二から紹介をしてもらえると言うことは、街道整備が終わった後も無職になる不安もなく新天地で生活が保障されるからである。


「それと2位以下のチームには、街道整備が終わった後に保守点検の仕事を斡旋するから、希望者は後でリカルドに言っといてくれ。この3日間は俺の視察に付き合ってくれて有難う。神都まで到着して事業が終了した時は盛大にパーティーをするから、それまでは気合を入れて頑張ってくれよ!」


 亮二の言葉に集まっていた一同から歓声が上がった。亮二は2位から4位のチームいた者達の中から数名リーダーとして任命し、その配下に6位から10位までのチームを付けて作業の効率化を図った。リカルドチームに居たメンバー達には、道具の修理やリカルドのサポート業務を任命し業務効率が落ちないように対策を行った。その後チームメンバー達はマルセル王より国王直轄の騎士に任命された。リカルドは亮二の騎士でありながら、国王直轄騎士に任命されたチームメンバー達を取りまとめるために男爵に叙爵され、サンドストレム王国全体の街道建設や修繕及び警備を統括するリカルド街道騎士団として活躍するのだった。


 ◇□◇□◇□


「で、お前達についてだが、どうする? このまま街道整備を続けるか? それとも俺のところで、一からお前達を鍛え直してやろうか?」


「えっ? 俺達を鍛えてくださるんですか? あれだけ、伯爵に啖呵を切りながら5位にしかなれなくて、リカルドだけじゃなくて他のチームにも負けてしまった俺達ですよ?」


 亮二の言葉にブルーノ達は驚きながら答えた。順位としては5位であり、本来なら誇れる順位であったはずだが、1位が当たり前と思っていた中での5位であり、ブルーノ達としては全く納得が出来ていなかった。亮二からの提案をブルーノや取り巻き達は嬉しそうにしながらも悩んでおり、亮二としてもブルーノ達の心情を理解した上での提案で悩みを払拭するためにさらに説得を続けた。


「ああ。せっかく身体に恵まれているのにもったいないだろ。だから少しだけ・・・・鍛えてやるから、訓練が終わった後は街道整備に復帰するなり俺の領地で兵士になるなり好きにしたら良い。身体を使った仕事なら、ほとんど出来るようにしてやるよ」


「ああ! 俺は喜んで受けるぞ! リョージ伯爵のところで鍛えてもらえるならリカルドのように活躍できる! お前達はどうする?」


「もちろん、俺達もブルーノさんに付いていきますよ。このままだと負けっぱなしの気分が拭えないですからね!」


「リカルド! 俺もリョージ伯爵に鍛えてもらってお前と肩を並べられるように頑張るぞ! ん? なんでそんな顔をしてるんだよ? リカルド?」


 ブルーノの宣言に亮二は嬉しそうにしながら、自分が領地に帰る時に一緒に連れて帰る事をリカルドに伝えると、亮二から訓練を受けているリカルドは当時の訓練を思い出して、青い顔をしながら頷きつつブルーノに心の中で哀悼を捧げるのだった。


 その後、亮二から特訓を受けたブルーノ達は、見送りに来たリカルドの憐憫を含んだ表情の意味を理解したが、途中で辞める訳にもいかずに虚ろな目をしながら訓練を受けるのだった。


 ◇□◇□◇□


「ただいま! 貧民対策の街道整備は順調に進んでいたよ。リカルドも立派になっててさ。皆にも見せてあげたかったよ」


「それは良かったですね。そう言えばリョージ様に一言ありまして」


 領都に返ってきた亮二が上機嫌で自室に戻るとカレナリエンとメルタが待っていた。亮二はリカルドに会いに行った事や競技をした事、王都でスイーツを食べた話やちょっとした騒動に巻き込まれた話などを楽しく話していた。


「あっ! そうだ。王都で新発売されていたスイーツがさ、なんとソフィアのところで開発されたんじゃないスイーツなんだよ。ここの店主が面白い人でさ」


「そうなんですね。スイーツ店の店主の話は後でじっくりと聞かせてくださいね。で、話は変わりますが、エレナの到着が2日後に迫っているんですよ。それに街道整備は王都と神都の間は順調かもしれませんが、こちらは未整備の場所も多いんですよ。それに領民から色々と依頼が届いていますし、北部の深き迷宮からも工事についての連絡が来ています。それにアラちゃん騎士団から新しい団員の装備発注依頼がきています。それに……」


 話をニコニコと聞いていたメルタだったが、相槌を打ちながら徐々に亮二に近付き始めた。亮二はメルタの目が笑っていない事に気付いて徐々に後ずさりしながら、乾いた笑いを浮かべると慌てたようにストレージからスイーツを取り出した。


「そうだ! お土産を買ってたのを忘れていたよ。さっき話していたスイーツで、食感が面白くてさ……「それは後で皆でゆっくりと楽しませて頂きます。ところで、リョージ様が楽しく遊んでおられた時に私はニコラスさんに呼ばれて、ずっと書類と格闘をしていたのですが。カレナ! 逃がしちゃダメ!」


「もちろん! 駄目ですよね。リョージ様。お仕事から逃げちゃ。今日からエレナが来るまでは執務室に閉じ込めますので覚悟しておいて下さいね。メルタのお説教を正座で聞くのが最初のお仕事ですよ」


 亮二が逃げようとした気配を察知したメルタはカレナリエンに命令を飛ばした。背後に回っていたカレナリエンに羽交い締めにされた亮二は、乾いた笑いを継続させながら2人の迫力に圧倒されつつ正座の準備を始めるのだった。

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