第285話 街道整備の視察5 -結果発表ですね-

「お疲れ様! 3日間の競争をよく頑張ってくれた。10チームの進み具合と丁寧さを、しっかりと見てきたら10位から順番に発表するぞ」


 亮二の声が集まった10チームに届いた。3日間のトータル作業量は、貧民対策を始めてから最高を記録しており、作業を行った労働者達は、今までの作業がいかに効率が悪かったのかを痛感していた。また、亮二が来て色々と指導した事によって、今後の作業も効率よく出来る自信にもなり多くの者は喜んでいた。


「よし! じゃあ、さっそく10位から発表しようか。まず10位は……」


 亮二の発表に10位と言われたチームからは落胆のため息が聞こえてきた。だが10位にも賞金が出ると聞き、その金額が銀貨5枚であるとの発表に大歓声が上がった。


「10位のチームも落ち込む必要はないぞ。いつもリカルドから貰っている報告書に書かれている作業量から計算しても、この3日間で行った作業は2倍近くだからな。その結果の銀貨5枚だと思って! 残りの工事も、その調子で頑張ってくれよ」


 銀貨5枚を手渡されたチームは金額の多さに戸惑いながらも、一人ひとりに手渡してくる亮二の優しさに感激の表情を浮かべていた。また、亮二から3日間の作業量がいつもの倍近くあるとの報告に驚きながらも、自分達の作業量に胸を張って賞金の銀貨を受け取るのだった。


 ◇□◇□◇□


「じゃあ、次は9位から6位までの結果を発表するな。一気に発表するのは、ほぼ同じ結果だからだ。ちなみに、10位との差もそれほどないから喜びすぎるなよ」


 亮二の言葉に9位から6位と言われたチームは複雑そうな顔をしていた。自分のチームが1番だと思っていたのにもかかわらず意外と順位が低い事と、10位との差がそれほどないと言われたからである。不満そうにしている4チームを見ながら亮二は内容を軽く説明し始めた。


「本当に4チームは僅差だ。評価で差がついたのは仕事の進め方や丁寧さだ。作業量だけだったら上位のチームと変わらなかったぞ」


「ははっ! 残念だったな。今までの事を思ったら頑張ったほうじゃないのか?」


 ブルーノの取り巻き達が悔しそうにしている4チームに話し掛けた。余裕を感じての発言だったのだろうが、急に淡々とした表情になって発表した亮二の言葉が耳に届くと驚愕の表情になりながら大声で叫んだ。


「嘘だ! 俺達が5位なんて! リョージ伯爵! 嘘ですよね!」


「嘘じゃないぞ。厳選して判定したんだからな。理由は説明してやるから安心しろ」


 ブルーノ達のチームから上がった声と表情を見ながら亮二は嬉しそうに説明を始めるのだった。


 ◇□◇□◇□


「まず、ブルーノチームについてだが、進み具合だけで言ったら上位3チームと変わらない。だが、仕事が雑すぎる! デコボコがある街道なんて危険すぎるだろ! それに道具が壊れたのを報告しなかったな。道具を使わずに作業をしたから道が踏み固められずに、すぐに修繕が必要になる状態だった。なぜ道具が壊れた事を報告しなかった?」


「そ、それは、その。道具を壊したのを言いたくなくて……」


 亮二の指摘に、抗議していたブルーノチームの勢いは弱くなり、最後は下を向いてしまった。さらに勤務時間が他のチームより少なくサボっていた事や、道具を粗末に扱った事、他チームへの言葉遣いやリカルドへの報告を怠った事などを指摘されると何も言えなくなってしまった。


「お前たちは力任せに作業をして進んだ気になっていた。だが、俺が指摘した内容を評価に反映させていくと大きく順位を落として5位の評価になるんだよ。それにお前達は作業時間を誤魔化したな? 他のチームに比べてお前たちの作業時間は少なすぎるんだよ。大方『俺達は一番進んでるんだから少しくらい休憩しても大丈夫』とでも思っていたんだろう? そこも大きく評価が下がるポイントだ。これだけ説明されて、まだなにか反論があるか?」


 評価が下がった理由を細かく説明されたブルーノは、ぐうの音も出ない状態になり肩を落とすと座り込んでしまった。いつもの無駄に自信に満ち溢れている表情ではなく、疲れ切った表情のブルーノを見たリカルドが心配そうに駆け寄ろうとしたが、亮二は手を挙げて止めると残りの結果を発表した。


「よし、後の結果についてだが、4位から2位までは同じだ。この3チームはブルーノ達と作業量では同じだが丁寧さは群を抜いていた。俺が手を入れる必要がほとんどないくらいだったからな。これからもその調子で作業を頑張ってほしい。3チームには金貨1枚と王都で流行っているスイーツ詰め合わせをプレゼントしよう!」


 亮二の発表に3チームは最初はブルーノに遠慮していたが、賞金の多さとスイーツの詰め合わせを貰えると聞いた瞬間に喜びを爆発させていた。3チームの喜びがひと段落したのを確認した亮二は1位の発表を行うのだった。


 ◇□◇□◇□


「よし! じゃあ1位の発表を行うぞ! 皆も分かっているかと思うがリカルドチームだ。さすがに俺が騎士として取り立てただけはある。進み具合自体は上位チームより少ないが、丁寧な仕事と役割分担がしっかりしていた事、それに道具の手入れも完璧だった。他のチームへの手助けもしていたし、修繕作業以外にもリーダーとして報告書の作成や、部材のチェック、食料の確認や賃金の支払いなどもしていた。その辺も加点対象になっている」


「でも、それは責任者として当たり前の仕事だし、それで加点されるのはおかしいんじゃなか?」


 亮二の説明にリカルドが異議を申し立ててきた。亮二は面白そうな顔をしながらリカルドの話を聞いていたが、しゃがみ込んでいるブルーノに近付くと質問を行った。


「なあ。ブルーノ。お前だったら修繕作業が終わった後に、報告書の作成や部材のチェックを出来るか?」


「いや。俺は修繕作業をした後は飯食って寝てただけだ。リカルドと役職を代わっても、そこまでの仕事なんて出来ねえよ。……すまなかったな。リカルド。俺はお前がそんなに頑張ってるなんて考えた事もなかったよ。お前は俺たちの仕事が終わった後も色々と頑張ってくれてたんだな」


「なに言ってんだよ。お前達が頑張ってくれてるから、この事業は進んでるんじゃないか。俺はお前達が仕事をしやすいようにしてただけだよ」


 リカルドの言葉を聞いたブルーノは、しばらくリカルドを唖然とした表情で見ていたが、居住まいを正すと深く頭を下げて今までの謝罪をするのだった。

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