第280話 婚約について6 -一区切りですかね?-

「エレナ姫以外は全員の婚約指輪を買ったぞ! 頑張ったんだから褒めて!」


「お疲れ様でした。ちなみにソフィアとクロにはどんな指輪を買ったんですか?」


 王都の屋敷に戻ってきた亮二達が嬉しそうにしながら帰ってきた。紅茶を手渡しながら、どんな指輪を送ったのかを確認してきたメルタに亮二がソフィアとクロの指輪の詳細を話すと、メルタは羨ましそうな顔をしながら値段の確認をしてきた。


「リョージ様が指輪のデザインを考えられたのですか? それを一から作る? ソフィアのために? なんて羨まし……。じゃなかった。それだと、かなりの高額になるんじゃないんですか? 王都の装飾品店と言えば王族も利用する名店ですよ?」


「大丈夫! 逆に金貨50枚もらったから!」


 亮二の回答にメルタが不可解な顔をしながら首を傾げて説明を求めてきたので、亮二は装飾店で出来事の詳細を話し始めた。最初は普通に指輪を選んでいた事。クロの指輪はすぐに決まったが、ソフィアの指輪がなかなか決まらなかった事。5個の候補の中から、最後に残った2つの指輪を組み合せるデザインを提案した事。店長から提示された金額が高かったので、自分でデザインを引き受ける事で値段の交渉した事。などを説明した。


「で、サンプルを作って見せたら、店長さんが物凄く食いついてきて『ぜひ、それを店で販売させて下さい!』って、こっちが引くくらいの勢いでお願いされたんだよ」


「そ、それは凄い話ですね。専属のデザインを考える方が居るはずですが、なにも言われなかったのですか?」


 横で2人の話を聞いていたカレナリエンが顔を若干引き攣らせながら話に入ってきた。横でメルタや、一緒にいたはずのソフィアやクロも同じように驚いた顔をしているのに亮二は苦笑しながら続きを話し始めた。


「専属のデザイナーの人だけどさ。俺のデザインを見た瞬間に涙を流しながら『師匠!』とか言い出してさ。そこからデザインの話で盛り上がってさ。それを見ていた店長もお願いだから指輪を店で売らせてくれって言うんだけど、俺も領主として忙しいじゃん?だから『置いとくから存分に見てくれていいよ』って言ったら、『有難うございます! では、リョージ様の指輪はガラスケースに入れて展示させて頂きます。それと、展示代として今回の指輪の代金は結構です。それとお借りする金額として金貨50枚をお支払いします!』って話になったんだ」


「ま、まあ。相変わらず無茶苦茶な話ですが、リョージ様だから仕方ないですよね。それにしても装飾品の店に買い物に行って、逆に金貨50枚を貰ってくるのはリョージ様くらいでしょうね」


 メルタは亮二の話を聞きながら苦笑を浮かべると、用意したお菓子を亮二に手渡すのだった。


 ◇□◇□◇□


「後は、エレナ姫との婚約だけだよな。ちなみにエレナ姫って1週間後には領都に到着するんだよね? そこで婚約の発表をするのかな? なにか聞いてない?」


「エレナとの婚約についてですが、ちょっと話をしている最中なんです。リョージ様の婚約者が6人程度・・・・しか居ないのは駄目との話になりましたので、婚約者の最終的な数と、エレナとの婚約を発表する時期自体も調整中です」


 紅茶とお菓子を食べながら、何気に話題に上げたエレナ姫の話に、カレナリエンが真剣な顔で答えてきた。自分の知らないところで婚約者の数を調整されている事に、亮二が紅茶を吹き出しそうになりながら叫んだ。


「ちょ、ちょっと! なに婚約者の数を調整って! それに今、『6人程度』って言った?」


「はい。そうですよ。なにかおかしかったですか? リョージ様のように強くて、爵位も持っていて、近々、冒険者ランクもSになるとの噂がある方の婚約者が6名程度では少ないかと。サンドストレム王国以外の国々もリョージ様に興味を持たれ始めているとの情報もありますので『国内だけで婚約者を固めてもいいのか? 』との話も出ております」


 あまりに簡単にハーレムを薦めてきたカレナリエンの言葉に亮二は唖然としながら話を聞いていた。そんな様子を面白そうに眺めながらカレナリエンはさらに話し始めた。


「それに、リョージ様がいつも言われている『てんぷれ』だと、婚約者の数は多い方がてんぷれじゃないですか? 以前、お聞きしたニホン国のお話を聞く限りでは、妻の数は多くても大丈夫との話を聞きましたが?」


「ちょ! それは俺の国にいた昔の将軍で奥さんが多い人が居たって話じゃん! 将軍はニホン国での最高権力者なんだよ! だから奥さんが多くても養えたんだよ。奥さん達専用の建物とかも有ったけど、維持費が物凄く高いって話だよ。って、俺は何の話をしてるんだよ!」


 亮二が混乱したまま大奥の話をし始めていたが、途中で我に返ると話を終了させるのだった。


 ◇□◇□◇□


「取り敢えず、現れても居ない婚約者の話は置いといて。エレナ姫との婚約話は先に伸びるって事だよね?」


「そうなりますね」


 ぐったりとした表情で亮二が確認すると、カレナリエンがすまし顔で答えてきた。しばらくは疲れた顔で紅茶を飲んでいた亮二だったが、ふと何かに気付いたかのようにカレナリエンを見つめてきた。自分の視線を感じたカレナリエンが露骨に視線を外したのを見た亮二は、ジト目になりながら呟くように確認した。


「ひょっとして、エレナ姫との婚約話って前から延期になるの知ってたんじゃないの?」


「バレました? でも、ソフィアとシーヴとクロとの婚約話を宙に浮かしたままの状態は良くなかったんですよ?」


 舌を少し出しながら告白してきたカレナリエンに亮二は苦笑しながらも感謝の言葉を述べるのだった。

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