第277話 婚約について3 -順番に話が進みだしましたね-
「ただいま。無事にシーヴと一緒に婚約指輪を買ってきましたよ。シーヴは引き継ぎが終わったら領都にやってくるってさ。後はクロとソフィアの婚約指輪が必要だよね?」
「覚えてくれてて嬉しい。すいーつをもらうより感激」
亮二が報告をしながらクロとソフィアの指輪も買いに行く事を伝えると、クロも無表情だが嬉しそうな雰囲気を醸し出しながら答えてきた。亮二はクロの様子を嬉しそうに眺めながら、転移して王都に向かってソフィアにも話をする事を伝えるとカレナリエン達も一緒に付いて行くと言い始めた。
「別に構わないけど、どうしたの? シーヴの時には付いて来なかったじゃん?」
「シーヴの時とは状況が違います。少し婚約者会議も必要となりますので」
カレナリエンの説明に首を傾げながらも連れて行く事に不都合はない亮二は、転移魔法陣を展開しようとして、ドリュグルでプレゼントを購入した事を思い出すと、それぞれに手渡した。
「リョージ様。これは?」
「これは、いつもお世話になっている皆に、俺から感謝の気持ちを込めて買った品だよ。カレナリエンは風属性魔法が強化されるイヤリングでしょ。メルタには魔力が増強されるネックレスと、クロには俺が作った腕輪型アイテムボックスだろ。それと、ライラには首輪はダメだと思ったから魔力回復されるリボンだよ」
亮二から手渡された装飾品を受け取ったカレナリエンやメルタは、魔道具である事を確認すると諦めの表情を浮かべ、クロとライラは良く分かっていないような顔をしていた。
「リョージ様は魔道具の価値をご存知ですか?」
「急にどうしたの? 魔道具は色々と能力を引き上げてくれるから貴重なのは知ってるよ?」
メルタの問い掛けに、亮二が首を傾げながら答えるとカレナリエンが補足をしてくれた。魔道具は数が少ないために高額になる事。一般的な冒険者では持っている者はほとんど居ない事。日頃の感謝としてプレゼントするには高価過ぎる事。などを順番に丁寧に説明された亮二は軽く頷きながら答えた。
「でも、魔道具だったら俺でも作れるよ?」
「そうですね。ですが、リョージ様だから魔道具を作るなんて簡単に言えると思ってくださいね。
「確かにメルタの言うとおり、リョージ様って神話に出てくる勇者や偉人賢人達よりも凄いよね。婚約者はソフィアで終わらそうと思ったけど、リョージ様だったらもっと大丈夫そうだよね。ちょっと、エレナと相談して婚約者の数を修正した方がいいかもしれないわね」
メルタの説明にカレナリエンが同意しながら最後は小さな声で呟いていたので亮二には聞こえなかった。メルタから完璧超人のように言われた亮二は苦笑しながらも話を終わらせると、ソフィアのいるサンドストレムすいーつ普及研究所に一同を連れて転移するのだった。
◇□◇□◇□
「お疲れ様です。リョージ様。本日のご訪問はどうされたのですか? それも皆さん一緒に?」
サンドストレムすいーつ普及研究所にやってきた亮二達一行に、ソフィアの秘書が話しかけてきた。亮二から急で悪いがソフィアと面談したいと伝えると、空気を察したのか早急に日程を調整すると研究所長室に案内をするのだった。
「そう言えば、前に装飾品を送った件なんだけど」
研究所長室に向かう途中に男性が女性に装飾品をプレゼントした事で勘違いをする可能性があり、紛らわしい真似をしたと亮二が謝罪すると、秘書は嬉しそうに笑いながら謝罪は不要である事を伝えてきた。
「大丈夫ですよ。私は既婚者ですから勘違いする事はありませんので。それに、ドリュグルの英雄で時の人のリョージ伯爵からプレゼントを貰ったのですから、家に帰って主人に自慢しましたよ。『俺には、こんな高価なプレゼントは無理だが、気持ちなら負けない!』と言ってもらえたので感謝していますよ。普段はなにも言わない人なので」
惚気話を聞かされた亮二はホッとしながらも苦笑すると「末永く仲良くね」と返した。ひとしきり笑っていた秘書だったが、急に真面目な顔をするとソフィアの事を話し始めた。
「最近の所長は恋する乙女全開状態です。見ているこっちが恥ずかしくなるくらいに。今日のご訪問はその件と関係あると思ってもいいですか?」
「ああ。新聞で書かれている事を本当にするために今日は来たんだよ」
亮二の言葉に秘書は嬉しそうにしながら「所長をよろしくお願いします」と頭を下げるのだった。
◇□◇□◇□
「では、リョージ様は少しだけ待っていて下さい」
「えっ? どう言う事? 俺がソフィアに結婚の申し込みに来たんだよね?」
カレナリエンから所長室の前で待つように言われた亮二だったが、一同からの視線を受けるとコクコクと頷いて秘書と一緒に扉の前で待つことを了承した。
「私達もソフィアと今後の事について話し合いをする必要があるんですよ。すぐに終わりますから、リョージ様は秘書さんとユックリと喋っていて下さい。大丈夫ですよ。ソフィアを苛めたりしませんから」
「分かりました」
思わず敬礼しながら了承した亮二に対して、カレナリエン達は苦笑しながら所長室の扉を開けると中に入っていった。所長室の中で、どのような話が行われているか気になっていた亮二だったが、聞き耳を立てる訳にもいかずに、3分ほど秘書と雑談していると扉が少し開いて、隙間からクロが顔だけを出して中に入るように伝えてくるのだった。
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