第226話 領都の屋敷に到着 -やっと入城しますね-

「これで一通り領都の状態と南北の格差が分かったから、領都の俺の屋敷になる場所に向かおうか」


「リョージ様の屋敷になるのって領都の中央にある、あのお城の事ですよね?レーム伯爵って屋敷じゃなくてお城に住んでたんですね。王都で屋敷に住むより、ここのお城の方が見た目も良くて良いと思うんですが、なんで王都に住んでたんだろう?土地無しの貴族じゃないのに?」


 亮二の言葉にカレナリエンが素朴な感想を返した。亮二達の目線の先には領都の中央に建てられている城が目に入っていた。かなり立派な城で防衛拠点としても昔は使われていたとの事だった。亮二は見た目は立派な城を眺めながら、「維持費だけで、どれだけするんだ?ここから改革していく必要がありそうだな」と呟きながら城門に居る門番に話しかけるのだった。


「こんにちは」


「ここはレーム城である!関係ない者を通す訳にはいかない!立ち去るが良い」


 門番の厳しい態度に亮二は安心しながら、ストレージから書状を取り出して門番に見せると「上の人を呼んできてよ」と伝えた。門番は亮二から受け取った書状を胡散臭げに見ると、書かれている内容に仰天した表情になりながらも直立不動の体勢をとった。


「失礼しました!リョージ伯爵の到着を上の者に伝えてます。おい!すぐに城代のニコラス様にリョージ伯爵が到着されたと伝言を頼む!」


 門番の言葉に「はっ!」と返事をすると、全力疾走で城内に入っていった。亮二も門番の後に続こうとしたが、最初に対応した門番がさり気なく道を塞ぐと亮二に対して世間話を始めた。


「どうですか?リョージ伯爵。王都からレーム伯爵領に来られた感想は?」


「そうだな。ユーハン伯爵領とハーロルト公爵領に王都を見てきたけど、レーム伯爵領は南部に元気が無いよな。北部はまだ見てないから分からないけど、南部は天候不順に増税が重なって離村している領民も多いようだったから、色々と手を入れないと駄目だなって感じてるよ?で、俺の進路を塞いでいる理由は本物かどうか分からないからか?」


「さすがに分かられますか?申し訳ありませんが、リョージ伯爵が本物かどうかの確認が取れれば案内させて頂きますので」


 苦笑をしながら返事をした亮二に門番は頭を下げながらも「職務ですので」と伝えると、そのまま道を塞ぎ続けるのだった。


 ◇□◇□◇□


 亮二達が暫く待っていると、10名ほどの集団が城門にやって来た。亮二の姿を見ると代表者である年配の男性が前にやって来て跪くと深く頭を下げてきた。


「リョージ様。失礼しました。私が城代のニコラス=シュトルムです。王都からお疲れのところを引き止めてしまい申し訳有りません」


「ああ、構わない。門番が役目をきちんとしてくれている事に安堵を覚えたよ。南部地方での代官の悪行を見て来たばかりだからな。それと、今まで城代の役目ご苦労。これからも俺を支えてくれよ。頼むぞ」


 亮二の言葉にニコラスは渋面を作ると「有難いお言葉ですが」と言いながら断りを入れてきた。


「私は、今までレーム伯爵の命により増税を行い、苦しんでいる領民に背を向けて王都に居るレーム伯爵に金銭を送ってきました。そんな私が、このまま城代の役目を行うのは領民が納得しないでしょうし、今後のリョージ伯爵の為にも私を断罪して空気を払拭して頂ければと思います」


「なにを言ってるんだよ?増税した分を南部の代官みたいに着服したのか?ニコラスはレーム伯爵の命を受けてやってたんだろ?それとも、実は増税して領民が苦しんでるの楽しんで見ていたのか?」


 亮二からの言葉に激昂した声でニコラスは勢い良く立ち上がると叫ぶように話し始めた。


「誰が好んで領民の生活が苦しくなる事をするものですか!領民の為に集めた税金が使えずに、領地に残っている役人や私達の給金を切り詰めてまで王都に送っていたのです!なんの為に働いているか分からない私達の気持ちが貴方に分かるわけがない!領民を苦しめた分だけ私達が断罪されなければ、誰が罪を償うと仰るのですか」


「その考えが間違っているんだよ。領都を含めて領民の話を聞いて回っていたが、ニコラス達に対して文句や怨嗟の声なんて聞こえてこなかったぞ。レーム伯爵一家に対しては怨嗟の声なんて優しいくらいの声だったけどな。そして、俺がやって来た事で領民は状況が変わる事を期待している。俺も色々と対策を考えて来ているが、1人で広大な領土への対策が出来るわけがない。領民の生活を以前のように、むしろ以前以上にするためにお前達の力が必要なんだよ。断罪される事で罪が償われると思っているなら死ぬ気で俺に協力しろ!」


 亮二の一喝にニコラス達は頭を垂れて、暫く沈黙を保っていたが意を決したように頭を上げると「全力でリョージ伯爵と領民の為に働かせて頂きます」と答えるのだった。


 ◇□◇□◇□


「よし、早速ニコラスは文官の長に任命する。それと、文官と武官のリストを作ってくれ。後日に面接して配置を考える。それと、他の者と協力して伯爵領全体の状況を調べてくれ。どの地域に重点的に食料援助をしたら良いのか?人口だけでなく、困窮具合も逃さないように調べてくれ。街道整備の順番はどうするのか?傷んでいる街道や重要度を決めて優先順位を付けてくれ。その他にレーム伯爵領で問題となっている事や隣接領域とで揉めている事などが有れば隠さず報告してくれ。ダンジョンの情報も教えてくれると助かる。攻略するのか、周りの街を発展させるのかも考えたい」


「はっ!畏まりました。1ヶ月以内に報告書をまとめて提出いたします。今までの話の中で兵力の話が出てきませんでしたが、そちらに関してはリョージ伯爵が対応されるとの事でよろしかったでしょうか?レーム伯爵が王都に行かれてから兵士達の規律が崩壊しております。領内の見回りに関しては、なんとか出来ている状態ですが、兵士達の士気が著しく低くて困っております」


 ニコラスからの言葉に亮二は「へぇ、兵士達のやる気が無いんだ。それはしっかりと教育しないとね」と嬉しそうに答えると、その満面の笑みを見たカレナリエンとメルタは苦笑しながら「「ご愁傷様」」と呟くのだった。

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