第119話 謁見の翌日の朝の一コマ -入学前に色々と確認しますね-

「それにしても清々しい朝だね。俺の入学を祝福しているかのようだよ」


 亮二は宿舎の裏口で大きく伸びをするとストレージから”コージモの剣”を取り出して素振りを始めた。亮二のリクエストによって作られた”コージモの剣”は”ミスリルの剣”と同じ長さ、重さで作ってもらっている為にしっくりと手に馴染んでおり違和感なく素振りが出来た。素振りをしながら属性付与を【雷】属性から順番に切り替えて素振りを行うと満足気に剣を眺めた。


「属性付与もスムーズに出来るし、コージモ印の処女作としては完璧だよね。駐屯軍に渡した分はシリアルナンバー制にしてるから、今後プレミアム感も出るかな?」


 亮二は今後の剣の販売についての展開も考えながら剣の部分と魔道具の部分と分離させると、魔力を込めて”ライトニングニードル”と唱えた。


「おぉ!いい感じだね!この状態で違う属性魔法もいけるかな?”ファイヤーニードル””アイスニードル””ウィンドウニードル””ウォーターニードル””アースニードル”もういっちょ!”ライトニングニードル”簡単にいけたな。それに思ったよりも綺麗だな。っと眺めているだけじゃ駄目だよな。よし!あの木に向けて撃ってみるか」


 亮二は宿舎の裏口で育っていた3m程の木に向けて「Go!」と鋭く叫ぶと6種類の針は木に吸い込まれていった。「どんな感じかな?」と楽しみにしながら木に近付いて針の刺さった状態の確認を行ってみると、それぞれの突き刺さった箇所には属性の特徴が出ており炭化している箇所や水浸しや凍りついているのを見て亮二は頷いて同じ場所に戻って、もう一度6種類の属性で撃ち出そうとすると後ろから声がかかった。


「おはようございます、リョージ様。伝言が有るんですけど…何やってるんですか?」


「おはよう、カレナリエン。ちょっと”コージモの剣”の魔道具部分の動作確認しようと思って、6種類の属性で「ニードル」を作ってみたんだよ。威力自体はそれ程でもないけど属性で攻撃出来てるって良いかもね。個人的には”ライトニングニードル”が魔物を倒した時に傷が残りにくいから好みだけどね。Go!」


 カレナリエンの問い掛けにやっている事を答えながら2度目の”6属性ニードル”を撃った後に木に近付いて1撃目と全く同じ場所に当てた事に満足してカレナリエンの方を見ると口をパクパクとさせて木に対して指を指していた。亮二はカレナリエンと木を見比べて「ぽん」と手を叩くと両手を合わせてカレナリエンに謝罪を行った。


「ゴメン!この木で魔法を試しちゃ駄目だっただね。取り敢えず治すから許して」


 亮二は慌てて木に手を翳すと魔力を練り上げて木が元に戻るイメージを行った。亮二が翳した手を除けると木は元に戻っており「良かった。回復魔法も難しいけど何とかなるな」と呟くとカレナリエンに向かって満面の笑顔で語りかけた。


「これで大丈夫でしょ!」


「取り敢えず混乱してきたのでリョージ様はそこに正座してもらって良いですか?」


「え?なんで!」


 亮二の叫び声に取り合わずにカレナリエンは亮二に対して正座を要求するのだった。


 ◇□◇□◇□


「カレナリエン。流石にこの状況での正座に関しては説明を求める。俺、何か悪い事した?」


「すいません。ちょっと理不尽な状況が目に入ってきたので思わず」


 亮二が正座しながらカレナリエンに説明を求めると、申し訳無さそうに説明を始めた。


「まずは”コージモの剣”って分離するんですか?」


「そう!かっこいいでしょ!でも、コージモさんに作ってもらった101本の剣の内で分離するのは「シリアルNo.000」の俺の剣だけなんだよね。魔法剣士を目指すからには格好良さもないと!」


「そうなんですね。格好良さの為に分離は普通はしないんですけどね。それは置いといて、属性魔法で6種類の”ニードル”を撃ちだされてましたよね?」


「やっぱり色々と出来た方が格好良いと思うんだよね。それに6種類も撃てば属性を無効にする魔道具とか有っても何かは通りそうじゃん?」


「えっと、6種類撃てるのも格好良いからって事ですね」


「テンプレでも有るよ!色々な属性が使えるってのは!」


 亮二の勢い良く答えた内容にカレナリエンは頭を抱えるとブツブツと呟き始め、亮二が「大丈夫?カレナリエン?」と心配しだしたタイミングを待っていたかの様に顔を上げると悟りきった笑顔で亮二に話しかけてきた。


「大丈夫です!やっと私の中で決着が付きました。リョージ様が通常ならあり得ない分離する剣を持っている事も!魔法史の中で複数属性を同時に固定して打ち出した人物はいないのにリョージ様は出来る事も!すべては”リョージ様だから”で片付ける事にしました!」


「え?カレナリエン?なんでそんなに素敵な笑顔で凄いこと言っているの?扱いが酷くない?」


「では、リョージ様はご自分の事を”普通の人”って思ってるんですか?」


 素敵な笑顔を維持したままの状態で質問された事に亮二は反論が出来ないまま絶句すると、やっと一矢を報いた感じでカレナリエンは通常の笑顔に戻るのだった。

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