第112話 晩餐会での一コマ -晩餐会は楽しいですね-
時間になり、亮二達は晩餐会の会場に案内された。主催者の席には王が座っており、隣には王妃や王子、王女達が並んでいた。上座から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士の順番で席に着いたのを確認すると晩餐が始まった。男女が隣同士に座り、亮二が晩餐会のルールを知っていたらロシア式給仕と気付いたかもしれない。大皿で一品ずつ運ばれ、その都度、執事がサイドテーブルで取り分けており王家の権威を見せ付けるかのように高級食材や調味料などがふんだんに使われていた。
「本当に旨いね。お土産で持って帰れないかな?」
「お願いですから止めて下さいね。いくらリョージ様がアイテムボックスを持っているからって駄目ですよ」
「食事の礼儀作法も知らない田舎者が見苦しいよ。出来ないだろうが僕のように”華麗”に”優雅”にしてもらいたいものだね。それに淑女を両脇に侍らせているが何様なんだい?君には不釣り合いな2人じゃないか」
亮二とカレナリエンが料理を食べながら会話をしていると横から馬鹿にしたような口調で男性が話しかけてきた。亮二とカレナリエン、メルタが男性に目を向けると気障ったらしい仕草で亮二を無視するかのように語り始めた。
「うら若き女性がそんな子供のお守りなんてすべきではないですな。どうですか?食事の後に王宮の庭園に散歩でも」
「結構です。私はリョージ様と一緒に庭園の散歩に行きたいので」
「同じく、婚約者が他の男性と夜の庭園に行くのは不謹慎ですからね」
男性からの誘いをにべもなく断った2人に、まさか自分が断られるとは思っていなかった男性が青筋を立てて亮二の事を睨んできた。亮二は男性の視線を歯牙にも掛けずに華麗に無視を決め込むと「礼節 7」のスキルを使って食事を始めた。
男性の目にはちょっと前まで馬鹿騒ぎをしていたはずの子供が、完璧な礼儀作法で食事を始めるのが目に入った。しばらく呆気に取られたように見ていたが、我に返ると「貴様の顔は覚えたからな」と真っ赤な顔をして自分の席に戻って行くのだった。
◇□◇□◇□
男性に絡まれた以降は料理が出てくる度に「持って帰りたい」と亮二が呟く度に両脇から止められる以外は特に何事も無く終了した。騒動が巻き起こったのはデザートが出て来た時である。場がざわついたかと思うと視線が一点に集中した。
「リョージ様、お久しぶりです。お元気にされてましたか?」
亮二に語りかけてきたのは王位継承順位は8位の”エレナ=サンドストレム”だった。王族が主賓席から立ち上がり、しかも騎士の場所まで自らやって来るのは前代未聞の事態だった。
周りの従者たちが慌てて姫を席に戻そうとしたが、「お下がりなさい」との一言で泣きそうな顔になりながら元の場所に戻っていった。
「エレナ姫。従者さん達が可哀相ですよ。お席にお戻り下さい」
「すぐに戻りますわ。その前に、リョージ様、カレナ、メルタさん、ご婚約おめでとう御座います。お祝いの品は後日お渡ししますが、まずはお祝いと思いまして」
「過分なお祝いありがとうござます。成人してからの結婚式なので後2年ありますが、2人とも不幸にすること無く、全員で幸せな生活が送れるように全力を尽くします」
「有難う。エレナ」
「有難うござます。姫さま」
エレナの祝辞にそれぞれの気持ちを込めて返事をした。カレナリエンについては周りに聞こえないくらいの声で親友に感謝の言葉を述べていたが。
「では、姫さま。お祝いも言われた事ですので席にお戻りを」
「実は、リョージ様。もう一つお願いがあるのです」
エレナの素晴らしい笑顔を見ながら亮二は嫌な予感が全力で襲ってきていたが、表面には出さずに笑顔で「何でしょうか?」と尋ねた。
「私、以前頂いた”ぷりん”が食べたいです。お父様に話したら『だったら作ってもらえばいいじゃないか』と仰りましたので」
「えぇ!お父様って王様の事だよね?じゃあ、王命じゃん。大体、ここに居る人数分を作るなんて出来ないよ?」
「大丈夫ですよ。私達の分だけでいいですから20名分くらいです」
「いや、十分に多いからね」
亮二はゲンナリとしながらエレナの要求を聞くと厨房に向かうのだった。
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「貴方が”ドリュグルの英雄”のリョージ様ですか。エレナ姫から色々と話を聞いております。何やら私達が見た事がない料理を作られるとか」
厨房に案内された亮二を30代後半位の男性が出迎えた。エレナから亮二が作った「アイスクリーム」と「プリン」の話を聞いており、アイスクリームについては作り方を書いたレシピを基に作成した王宮の料理長との事だった。
「アイスクリームを再現出来たんですか?まさか雪のある所まで行かれたとか?」
「いえいえ、王様が宮廷魔術師様に命令して訓練場の1角に”ブリザード”を唱えさせて、その氷を使って作りましたよ」
「うぇぇ!王様!宮廷魔術師に何させているの?」
「宮廷魔術師様も楽しそうでしたけどね」
亮二はプリンを食べたがっているのはエレナではなく、王様じゃないのかな?と思いながらも作成に取り掛かるのだった。
亮二が料理長と一緒に魔法まで駆使して作成したプリンは王族一同に大絶賛され、王様が「リョージに爵位を与えるのはどうか?」と呟いたために家臣一同が大混乱を起こしたのは別の話である。
◇□◇□◇□
「やっぱり、リョージに「ぷりん子爵」の称号を与えるのは駄目かの?」
「駄目です!第一、リョージ殿が嫌がります!どこの世界に「ぷりん」で爵位を与える王がいるんですか!」
「お父様、リョージ様の話では「かすたあどぷりん」「くりいむぶりゅれ」「ぷりんしょこら」などもっとたくさんの種類が有るそうですよ?」
「なんと!ではリョージに「ぷりん伯爵」の称号を持って遇するのは…」
「だからダメですって!」
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