第78話 お金の価値は人それぞれ -無駄遣いなんてしてませんよね-
カレナリエンとメルタに「こってり」とお説教を2時間ほど受け、今後は無駄遣いをやめる事を約束させられた亮二が【C】ランク冒険者になってから1週間が過ぎていた。【C】ランクにアップしたお祝いに関しては、すでに一般市民と冒険者に限定して案内を掛けており、準備も着々と進んでいた為に今更中止にも出来ずに咎め無しで進められていた。
亮二がドリュグルの街に来てから規模の大小にかかわらず定期的にパーティーを行っており、ドリュグルの名物として恒例になりつつあったが、今回のお祝いパーティーは最大規模となっていた。さらに今回のパーティーは、前回と同じような屋台街を作ったのに加え、大道芸人を呼んでステージを開いたり、剣を使った模擬戦や歌合戦などをトーナメント形式で行い優勝者には賞金や景品を出すなどして大いに盛り上げていた。
今回の宴会は亮二のお抱え商人である事を内外に示すためにアウレリオが主体になって行っており、亮二との蜜月を見せつけられた商人たちは歯ぎしりをしながらもアウレリオの手腕を認めない訳にはいかなかった。様々なイベントで優秀な成績を収めたものは貴族や商人などに召し抱えられており、人材発掘の有用性が認められ、亮二がパーティーを開かなくなった後も定期的に開催されるようになり、亮二は「テンプレ通りだな」と感心するのだった。
□◇□◇□◇
「今後の事も有りますので、少しお時間を宜しいでしょうか?大事なことをお伺いしたいのです。リョージ様」
アウレリオから今回のパーティーの必要経費が書かれた羊皮紙を眺めていた亮二に対して、少し考えて聞くことに決めたと言わんばかりの顔をしたカレナリエンから質問が飛んできた。
「なに?俺に答えられる事?」
「リョージ様の所持金を教えてもらっていいですか?出会ってからお使いになられた金額が莫大な金額ですので、今後の生活を考えると気になりますので」
カレナリエンの問いかけに「ついに来たか」と呟きながら亮二は何とか誤魔化そうと話を始めた。
「そう言えば、ポーションが大分と売れたと思うけど、どのくらい出荷したの?」
「出荷数で言えば1500本になります。必要経費が瓶代しか掛かっていませんので、売れた分だけ利益ですね。後は税金の分だけ差し引いておけば大丈夫です。後ほど報告書をお渡ししますね。で、リョージ様の所持金は?」
「そ、そう言えば討伐した魔物をカルカーノ商会に買い取ってもらったはずだけど、金銭の受け取りは終わってる?」
亮二は何とか話を逸らそうとしたが、カレナリエンだけでなくメルタも参加してきた。
「金銭の受け取りはすでに完了しております。カルカーノ商会から受け取った金銭は屋敷の金庫に収めています。当面の生活費として使うために帳簿も付けますのでご安心下さい。で、お幾らお持ちなんですか?」
「て、鉄鉱石を精錬して純度の高いのを作った分の販売については?」
「それに関してもご安心下さい。シーヴの父親から王都の武器屋を紹介してもらっており、契約を完了させております。こちらに関してはリョージ様に精錬して頂く事になりますのでよろしくお願いします。で、リョージ様が今持っておられる金額はどのくらいなんですか?」
「じゃあ、依頼を受けた分の金額について…「「で、所持金は?」」、うっ!うぅ?」
2人から重ねるように問い詰められて逃げ場が無くなってしまった亮二は気弱げに「やっぱり言わないとダメ?」と甘えた感じで取り繕おうとしたが、2人からは「そんな可愛い顔しても誤魔化されません!」と目線で訴えられ、見逃してもらえる要素もなく、観念した亮二は所持金について説明する事になった。
「じゃあ正直に話すけど、俺も正確な金額は分からないんだよ。宝石主体で持って来たから、どこかで鑑定してもらったら詳細金額が分かると思うんだけど、2人なら分かるのかな?ちょっと出すから見てもらっていい?」
亮二はそう言うとストレージから宝石(中)を10個と(大)を4個取り出すと、2人に半分ずつ手渡した。「この状況って前と一緒じゃ?」と思いながら受け取ったカレナリエンは手の中で輝く苺サイズとゴルフボールより少し小さいサイズの大きさの宝石を眺めていた。
「やっぱり!前に宝石(小)ってリョージ様が言った時と同じ状況じゃない!!なにこの宝石の大きさは?小さい方って言っても大きいんだけどっ!こっちはリョージ様と婚約指輪を買いに行った時に見たけど、それより大きい方は今まで見たことが無い大きさなんだけど。ねえ、メルタは見た事ある?この大きさの宝石って?ちょっと聞いてるのメルタ!メルタ?」
カレナリエンは宝石(大)宝石(中)を手にしたまま硬直状態のメルタを揺さぶって気を確かにさせると、再度「知ってる?」と同じ質問をメルタに投げかけた。だんだんと焦点が合ってきた目でカレナリエンを見ると、もう一度宝石を見て大きく息を吸い込むと一気に吐き出すように叫んだ。
「こんな巨大な宝石なんて見た事ある訳ないじゃない!思わず意識が飛んじゃったわよ!リョージ様!これって王族レベルじゃないと持ってないと思いますよ!一体リョージ様って何者なんですか?」
メルタの叫び声に対して「俺はリョージだよ。他の誰でもないよ」と胸を張って答えるのだった。
◇□◇□◇□
「取り敢えず、この宝石は没収しますからね」
「えぇ!ちょっとそれは酷いんじゃない?」
「リョージ様は貴族で【C】ランク冒険者になられたんですから、これからどんな経費が掛かるか分からないので残しておきましょうね?無駄遣いは禁止ですよ」
「じゃあ、渡した以外で自分の稼いだのは使ってもいい?」
「え?まあ、これだけ宝石が有れば大丈夫ですが…」
「約束だよ!よし!言質も取ったし好きに使えるぞ!」
「ちょっと!待って下さい!まだなにか持ってますね、その言い方だと。全部出しなさい!あれ?リョージ様は?」
「メルタが宝石を袋に入れてる最中に徐々に距離を取って一瞬の隙を突いて走って逃げたわよ」
「止めてよ!カレナリエン!あの素振りならまだ宝石を持ってるはずよ!」
「リョージ様が持ってたら色々と買ってもらえるから良いかなと思って」
「よくない!」
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