第63話 魔術師ギルドとの交渉 -お墨付きが欲しいですね-
「実は、このポーションをカルカーノ商店で販売しようと思っているんですが、どこの誰が作ったのかも分からないような商品なんて誰も買わないと思うんですよね。それに、無名のポーションのラベルに「効果5倍」なんて書かれていたら胡散臭さが先にくると思いませんか?」
「確かに、儂が冒険者だった頃で「効果が5倍」と書かれていポーションが売って有ったとして本物かどうかをまず怪しみますな。その後に金額を見るだろうが、ちなみに5倍ポーションを幾らくらいで販売するつもりですかな?」
カレナリエンの説明に対して魔術ギルド長は納得すると販売価格について確認を行った。魔術師ギルドの長としては効果が5倍のポーションが市場に流れるとなると価格によってはポーションの生産量や価格の見直しが必要となるからである。
「まずは、試験販売として銀貨5枚で考えています。通常のポーションと同じ値段ですが、1週間限定の本数も制限して販売します。そこでギルド長にお願いしたいのはウチノ家で作成したポーションに対して『このポーションは問題なく使用できますよ』とお墨付きを与えて欲しいのです」
「お墨付き?つまり、そちらで作成したポーションに対して『魔術師ギルドで確認した結果は問題ない』と一筆入れるということかの?」
「そうですね。こちらで作成したポーションを販売すると魔術師ギルド側としては1週間売上が落ちるかもしれません。その対価としてポーションの売上の1割を魔術師ギルドに対して手数料としてお支払いさせて頂きます。ちなみに5倍ポーションは試験販売が終わった段階で金貨1枚に価格変更して販売予定です」
魔術師ギルドの長はカレナリエンからの提案について考えていた。ウチノ家から5倍ポーションが売り始められると間違いなく売上は下がる。どの位落ちるか予測は出来ないが、高位の冒険者になればなるほど5倍ポーションを購入するだろう。それなら魔術師ギルドでは、今後は初心者向けポーションとして販売した方が利益は出そうである。落ちた売上はウチノ家からの手数料で影響は少なく、むしろお墨付きを与えるだけで入ってくる売上1割の方が大きいのではないかと思ってしまう程だ。
「相分かった。それなら、お墨付きだけでは手数料として貰いすぎじゃから検査も引き受けよう」
「検査ですか?」
「ああ、これからどの位の販売を見込んでいるかは分からんが、例えば50本の中から無造作に数本取り出して検査を行い、必要魔力を下回っているようなら販売しないと明記した方がいいじゃろうな」
「さすがですね。それなら、こちらとしては魔術師ギルドが公認して頂いていると分かる様なデザインに変更する必要がありますね。では、その内容で契約を結びましょうか」
カレナリエンが自分のアイテムボックスから羊皮紙とペンを取り出すと、魔術師ギルドの長と話し合った内容を記載して契約書を作成して、亮二と魔術師ギルド長が署名を行ったのを確認者としてカレナリエンが署名し、最後に前回の金銭貸借契約書の時の様に何やら聞き取れない言語で契約書に語りかけると契約書が淡く光り始め、亮二と魔術師ギルドの長を包み込んだ。
「これで、契約は完了となります。5倍ポーションはいつ魔術師ギルドに持ってくればよろしいでしょうか?」
「いつでも構わんよ。最初の1週間は儂自身がチェックする。正式販売になった時にはチェックリストを作るので他の者でも出来るようになっとるじゃろ」
トントン拍子に進んだ上に、今後の事も考えて用意周到な対応をしてくれた魔術師ギルドの長の手際の良さに感心しながら魔術師ギルドを後にするのであった。
□◇□◇□◇
屋敷への帰り道で亮二とカレナリエンは今日の魔術師ギルドとの話し合いについて確認しながら話していた。
「リョージ様。無事にポーションの契約が結べて良かったですね」
「ああ、こちらの思った以上の成果になってるからカレナリエンには何かボーナスが必要だよな」
「「ぼーなす」ですか?聞いたことが無いんですが、それはどのようなものなんですか?」
- そっか、こっちの世界にはボーナスなんて無いんだな。ご褒美って言い直したほうが分かりやすいかな?でも、せっかくだからボーナスを広めてみるか -
亮二はカレナリエンにボーナスについて説明を始めた。
「つまりは想定以上の成果を上げた者に対して、ご主人様から特別に褒美を貰えるって事ですよね?ギルドの特別報酬みたいな感じですかね?」
「そう、つまり今回の場合だと5倍ポーションを作る際に魔術師ギルドに名前を借りるだけのつもりが、検査までしてくれることになった。しかも、最初は魔術師ギルド長自ら検査をしてくれる。こんな巨大なお墨付きを貰えるなんて幸先いいよね。だからカレナリエンにボーナスを支給する事とする」
「有難うございます。これからも頑張りますね」
「って事で、これからカレナリエンの為にボーナスを使って買い物に行こう!」
亮二はそう言うとカレナリエンの手を引いて宝飾店に向かって歩き出すのだった。
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