第62話 魔術師ギルドにやってきた -魔法使いは長い髭にローブですよね-

「はい、リョージ様。ここに正座!このポーションはかなりの濃度を感じますが薄めて使うことは出来るんですか?」


「やってみないと分からないけど、100倍位に薄めて使ったら魔術師ギルドが販売しているポーションの5倍位の効果になると思う」


 亮二の説明するポーションの余りの効き目の良さにカレナリエンは眩暈を起こしながら亮二に正座するように伝えると仁王立ちになって説明を始めた。


「いいですか!リョージ様。ポーションは魔術師ギルドが一括して製造卸をしています。ある程度、魔術師ギルドにお伺いを立てておかないと後で文句を言われますよ?」


「じゃあ、早速このポーションを持って魔術師ギルドに挨拶に行こう」


 説教混じりの説明は嫌だとばかりに立ち上がろうとした亮二をカレナリエンが片手を上げて止めた。


「まだです!正座はそのまま!ちなみにアウレリオの所にどのくらいの金額で収める予定だったんですか?」


「取り敢えず様子見で銀貨1枚位?」


「やっぱり!どこの世界に今のポーションより5倍も効き目がある高級品を捨て値で売る人がいるんですか!」


「試験販売だから安くてもいいかなと」


 亮二がモゴモゴと呟いているのを聞いていたメルタが助け舟を出した。


「ねえ、カレナリエン。リョージ様のやり方も別に問題ないんじゃない?カルカーノ商会だけでテスト販売って感じで売り始めて、利用した結果を店に貼り出していけば、ほっといても売れる様になるよ。特に効果が5倍もあるんだから九死に一生を得た冒険者はずっと買い続けるんじゃないかな?」


「それはそうなんだけどね」


 メルタの援護射撃に感謝の視線を投げると亮二は立ち上がりポーションを薄める作業を行うために庭に向かっていった。


「何をされるんですか、リョージ様?」


「ちょっと、作業小屋を作ろうと思ってさ。家の中で作業してたらポーションを置く場所が無くなるだろ。この屋敷の庭ってさ、無駄に広いから小屋くらい作れるかなって」


「どう言うことですか?」


 亮二は一緒に付いてきた3人に説明するより見せたほうが早いと考え、納戸がある部屋をイメージして【土】属性魔法を使い始めた。呆然、唖然、愕然とした表情を浮かべている3人の目の前で地面から土がせり上がっていき小屋になる光景が目に入った。10分も掛からない時間で完成した小屋の中に4人で入ると、壁面には棚が並んでおり色々な物を置くのに適していて中央には4人で食事が出来るほどの大きさの机が設置されていた。


「こ、これは?」


「小屋が欲しかったから作ってみた!って感じかな?大丈夫だよ!壁自体も強化したし棚もカレナリエン達が乗っても壊れないように頑丈にしているから。頑丈さを求めて魔力を注ぎ込んだから、魔力が思っていたよりも減ったから同じ感じの小屋だったら10棟も作れないかな?」


 疲れた顔をして説明した亮二にシーヴは尊敬の目を、メルタは小屋を建てた際にかかる経費が浮いた事を褒め称える目を、カレナリエンは魔力の使い方が無茶苦茶である事を責めるような目をして亮二を見つめるのだった。


 ◇□◇□◇□


「これはこれは。”ドリュグルの英雄”殿が魔術師ギルドにどの様なご用件で?」


 屋敷を出た亮二とカレナリエンは魔術師ギルドを訪れていた。受付にて魔術師ギルド長を呼び出して待つこと10分。応接室に通された2人の前に年老いた男性がやって来た。右手には杖を持ち、白い髭を生やしてローブ姿であり亮二の世界の映画や小説にはよく出てくる“まさに魔法使い”の出で立ちであった。


 - おぉ!マジモンの魔法使いだよ。杖を持ってるぞ!杖を!白い髭にローブ姿って、古今東西や異世界関係なく魔法使いの共通点なんだな -


「どうかされましたか?」


 自分の事をじっと見詰めて話し始めない亮二に対して不思議そうな顔で問い合わせた。


「いえ、すいません。私の国で魔法使いは若いものが多かったもので、思わず魅入ってしまいました」


「ほう、リョージ殿の国「ニホン」では若手の魔法使いが多いのですな。それは羨ましい限りで。我が国では中々後継者が出てこないので、こんな老いぼれが第一線で打ち合わせをする必要がある」


 お互いに軽く会話を話しながら様子を伺っていると、カレナリエンが痺れを切らしたかのように亮二の腕を突いた。亮二はカレナリエンの方を向いて頷くと、腰のアイテムボックスを装っている袋からストレージ経由でポーションを取り出すと魔術師ギルド長に手渡した。


「これは?」


「今、ギルド長が持っている瓶の中には従来よりも5倍効き目の強いポーションが入っています」


「は?」


 思わず、素の状態で返事をしてしまった魔術師ギルド長はポーションに含まれている魔力感知を行い、通常のポーションとは比べ物にならない魔力を含んでいる事を確認した。


「これは凄いポーションですな。牛人討伐で利用された秘薬と同じ物ですかな?」


「よくご存知ですね。流石に秘薬よりは数段落ちますね。早速ですが、今日のお願いは魔術ギルド長が手に持っているポーションの販売する為の許可を頂きたくて」


「法律では特にポーションの販売は禁止されてませんので好きにされても良いのでは無いですかな?このポーションならカルカーノ商会などが喜んで大口取引をしてくれるでしょう?」


 もっともな話をする魔術師ギルド長に亮二は訪問理由を伝えるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る