第60話 鉱山での魔法使い -鉱石掘りは良いですね-
亮二は鉱山最深部で腕を組んで考え込んでいた。ちょっと【土】属性魔法を使ってみたくてここまでやって来て、鉱山長の許可ももらったものの肝心の採掘に関しての【土】属性魔法の使い方がピンとこなかったのである。
- どうすっかな。あんだけ演出をして、時間まで融通をしてもらってるのに悩んでたらダメだよな。真後ろには鉱山長がガッツリと見ているし、鉱夫たちも休憩しながらチラチラとこっち見てるもんな。よし!取り敢えず【土】属性魔法を使ってみよう -
亮二はこれから鉱夫たちが掘る予定の場所に右手を当てると、目をつぶって土が左右に分かれながら空間が奥に進んでいくイメージを固めて魔力を放出した。「おぉ!」と後ろからどよめきが起こったので目を開けると幅5m、奥行き10mほどの空間ができており空間の左右には土が山のように積み上がっていた。
「おぉ!出来たじゃん!」
「いや、お前がビックリするのかよ!それにしても魔法って凄いな。リョージにこんな事されたら俺達の仕事が無くなるんじゃないか?」
鉱山長は魔法の威力に感嘆しながらも危機感を募らせて亮二を見つめた。
「それは大丈夫。流石に鉱夫さんがやっている量を毎日するのはとても無理だわ。そうだ、後で廃石を見せてもらってもいいかな?」
「ん?廃石なんてどうするんだ?」
「色々なイメージを固めたほうが魔法の効果が出るから練習用に持って帰りたいんだよ。廃石をくれたらお礼に今日予定していた分はするから」
「ああ、廃石で良いなら好きなだけ持って帰ってくれ。そっちの方が助かるからな」
早速、作業に取り掛かった亮二は鉱山長に言われるがままに【土】属性魔法を使って坑道を広げていった。坑道を広げる度に鉱夫から歓声が上がり、歓声が上がる度に亮二のテンションも上がっていき、気付けば3時間作業を行っていた。ここからは細かな作業となるので亮二の仕事は終了となった。亮二が【土】属性魔法で掘り出した残土を鉱夫たちが運び出そうとしていたのを止めると、残土に手を当てて片っ端からストレージに収納を行っていった。一番厄介な残土処理をストレージに収納する力技で対応したのだが鉱夫たちからは空間を広げた以上の歓声が湧き上がるのだった。
◇□◇□◇□
鉱山長から割り当てられた作業が完了したので廃石が置かれている場所に連れて行ってくれた鉱夫は亮二を見て首を傾げながら問い掛けてきた。
「ここが廃石置き場になるぞ。それにしてもこんなとこに来てイメージを固めるってリョージは言ってたけど本当に役に立つのか?」
「ああ、大丈夫。これで【土】属性魔法を使う時にもイメージが湧きやすくなるよ」
「そんなもんかね?じゃあ、終わったら適当に受付に声を掛けて帰ってくれ」
「鉱山長もよろしく言っといてくれ!」
案内した鉱夫は作業があるからと持ち場に戻っていった。廃石置き場に1人残った亮二はうず高く積み上げられている廃石を眺めると「よし!」と気合を入れて大きめの石を手に取ると「鉱物を抽出する」イメージで【土】属性魔法を通すと砂のようになって崩れ落ちていき、手元には球状のボールのようなものが残った。
「おぉ!何の鉱石か分からないけど出てきたな。銀色に輝いているけど、これって何の鉱石なんだろ?鉄鉱石の廃石にしては綺麗だな。ちょっと検索をしてみるか」
亮二はそう呟くとインタフェースを起動して手に持っているビー玉くらいの鉱石の鑑定を行った。
鑑定結果:鉄+10 純度100%の鉄の塊
「純度100%!マジで!純鉄じゃん。この廃石を全部抽出したらどんだけの純鉄が出てくるんだろう」
2時間ほど掛けて廃石置き場にある全ての廃石に【土】属性魔法をかけた亮二は流石にくたびれた顔をして地面に座り込むとストレージから鉱夫たちに配った果実水と軽食を取り出すと休憩に入った。思っていたよりも量が取れなかったのでガッカリしながら休憩を取っていたが、インタフェースからミスリルの剣を取り出すと横に置いて、抽出した純鉄の塊をミスリルの剣を参考に【土】属性魔法で整形を行っていった。
「これって短剣並みの大きさだな」
出来上がったミスリルの剣の縮小版を見ながら亮二はガッカリするとミスリルの剣と共にストレージに仕舞って鉱山を後にするのであった。
◇□◇□◇□
「って事で、これを見て欲しいんですよ」
亮二はストレージから鉄+10で作った短剣を取り出すとコージモに渡した。コージモは受け取った短剣を見て感嘆の声を出した。
「リョージ君、これってどこで買ってきたんだい?デザインは置いといて使われている鉄が物凄いく良いね。鋼を超える逸品だよ」
「買い取りをお願いしたらどの位になるかな?」
「そうだね、短剣としての価値は兎も角として素材にそれなりの値段が付くだろうね。その短剣の量なら金貨10枚ってとこかな?」
デザインのダメ出しを2回もされて若干へこみ気味だった亮二だが、金額を聞いて立ち直った。
「じゃあ、これをコージモさんに渡すんでこれで前に依頼した、剣と発動具を合体させた武器の素材にしてもらっていいかな?」
「こんな高価な物を使っていいなら素晴らしいのが出来そうだね。デザインは出来上がりつつ有るから楽しみにしておいてよ」
コージモは喜んで短剣を受け取ると背筋を伸ばして亮二に確認を行った。
「ところで、リョージ君。うちのシーヴがメイド見習いとしてお世話になるんだけど大丈夫かな?」
「ええ、大丈夫でしょう。メルタさんが『きっちりと教育をします』と言ってるから」
「シーヴは私の可愛い一人娘なんだ。将来に渡って面倒を見てくれるように頼むよ。もちろん、成人してからの話だけどね」
亮二の話にホッとすると父親として気なる事を追加でお願いをすると、亮二は困った笑顔で頷いて「将来の事は将来に決めるって事で」とお茶を濁すのだった。
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