第53話 ランクアップ試験2 -実技は自信がありますね-
「いいか、お前ら。これは間違いなく模擬戦だからな。怪我とかしないように十分に注意するように」
両者が通常使っている“メイス”と”ミスリルの剣”で戦えるわけがなく、亮二は”木剣”をクセニアは”こん棒”に武器を変更させられていた。お互いに武器の感覚をつかめた所で開始線に向かうと審判であるマルコに向いて号令が掛かるのを待った。マルコは「もう一度言っとくが、全力もいいが怪我だけは気をつけろよ」と言った後で「始め」と開始の合図を行った。
「じゃあ、私から遠慮無くいかしてもらうよ!」
クセニアは”こん棒”を握りしめた状態から一足飛びで間合いを詰めてきた。亮二は様子を見るためにバックステップで間合いを開けようとしたが、クセニアはそれ以上にスピードを上げながら距離を詰め”こん棒”を上段から打ち下ろしてきた。
職業適性検査場全体に響き渡るかの様な衝撃音が見学に来ていた冒険者達の耳に響いてきた。冒険者達は左腕でギルドマスターの一撃を受け止めた亮二に驚愕すると「あの、ギルドマスターの一撃を左腕で受け止めたぞ!」「あのガントレットは魔道具か!“飛竜を砕く者”の一撃を“こん棒”とはいえ受け止めるとは。だが魔道具を付けて防御は出来るみたいだが反撃はできるのか?」などと驚きと賞賛の声が上がった。
- おいおい、なんだよこの衝撃は。”こん棒”だから衝撃が来るのは分かるけど、人間の力でここまでの衝撃って出せるもんか?イオルスから援助された強靭な身体だから受け止められた感じだぞ? -
クセニアの一撃を受け止めた後に体重を乗せて連撃してくるのを“不可視の盾形ガントレット”で歯を食いしばって防ぎながら亮二は反撃の糸口を探していた。初撃の後の連撃も止められたクセニアは、一旦間合いを取って賞賛にも似た言葉で語りかけると舐める様な視線で亮二を見詰め“こん棒”を握り直した。
「やるねぇ、リョージ!私の初撃からの連撃を受け止めたのはお前で3人目だよ。やっぱり私の目に狂いはなかった!今度はお前の番だぞ!その身体に秘められている力を全て見せてくれ」
「じゃあ、ギルドマスターからのせっかくのお言葉なんで全力でいかせてもらうよ!」
亮二はそう叫びながら手にした木剣を上段に大きく振りかぶると勢い良く振り下ろした。
「なんだい、その大雑把な攻撃は!私のことをバカにし…ぬぁ!」
亮二の大振りの一撃を軽くバックステップで躱して文句を言いながら、反撃しようとしたクセニアは振り下ろされたはずの剣が横から襲ってくるのに気付くと慌てて後ろに下がったが、無理に下がったために体勢を崩してしまった。もちろん体勢を崩したクセニアの隙を逃す亮二ではなく、そこからさらに畳み掛けるように上下左右と細やかな攻撃を立て続けに出していった。
クセニアは最初の内は軽やかに躱していたが10合、20合と打ち合っていく内にだんだんと余裕がなくなっていき、次第に受けきれなくなり防戦一方どころか亮二の攻撃がクセニアの鎧の部分に当たり始めた。
「だぁ、ふざっけんな!」
クセニアは大きく叫びながら、こん棒を亮二に投げつけると腰を落とした状態で飛びかかってきた。流石に攻撃されている最中に武器を投げつけ飛び掛かられるとは思わなかった亮二は、何とか身をかわしたものの木剣を取り落としてしまい、クセニアとの距離を大きく取らざるを得なかった。
「おいおい、クセニア。なんで武器を投げつけてるんだよ。模擬戦において武器の放棄は負けになるってルールを作ったのはお前だろう。審判としてはクセニアの負けを宣言させてもらうぞ」
マルコの宣言が聞こえなかったのか、亮二の攻撃を受け続けて息が上がったのか真っ赤な顔をしながらクセニアはファイティングポーズを取って亮二に殴りかかっていった。
「おい!クセニア。負けって言ってるだろ、聞こえなかったのか!」
「うるさい!ここまで一方的にやられたんだ!このまま引き下がれるか!必ずぶっ倒してやる!」
完全に頭に血が上っているクセニアはマルコが止めるのを聞かず、それどころか攻撃の手を増しながら亮二に掴み掛かろうとしてきた。亮二はクセニアが掴みかかってくる事が分かっているかのような動きで、クセニアの腕を取ると担ぎ上げると一本背負いの要領で床に倒した後は腕を絡ませながら首を絞め上げ始めた。しばらくは首にかかっている腕を取り払おうとクセニアは暴れていたが、10秒も経たない内にいきなり糸が切れたように動かなくなった。
亮二はクセニアが動かなくなったのを確認すると首にかかっている腕を外してインタフェースを起動すると、クセニアのステータスが「気絶状態」になっている事を確認して立ち上がりマルコに「審判、判定を」と促した。
「あ、あぁ。そうだな」
マルコは慌ててクセニアに近寄ると生存確認を行って問題なく呼吸をしている事を確認して「気絶状態」である事を確認すると、亮二の腕を取って上に突上げながら「勝者、リョージ!」と見学に来ている冒険者達に告げるのだった
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