第51話 【H】ランク冒険者の活動 -依頼をマッハでこなしますね-
「後、20個か」
亮二はそう呟くとストレージに仕舞っていた証明書を取り出して現在の進捗状況確認を行った。
【H】ランク完了済み依頼
・庭の草むしり ×3
・迷い猫の捜索
・鉄鉱石の運搬 ×5
・害虫退治 ×3
・買い物補助 ×3
・キノコのお化け討伐 ×15
【H】ランク依頼受領中
・鉄鉱石の運搬 ×2
・害虫退治 ×3
・キノコのお化け討伐 ×15
「明日くらいには終わりそうだな。それにしてもギルドも几帳面だよな。”試練の洞窟”での戦闘の功績でスキップして【G】ランクになれるって聞いたのに『最初のランクアップは自力でやってもらう。もちろん試験も行う』だもんな」
ユーハンからの声掛けも有り、亮二の冒険者ランクは【D】ランクにスキップする予定となっていた。ただ、いくら多大な功績がある亮二とはいえ、いきなりランクアップは他への示しがつかないとギルドから横入りが有り【H】から【G】ランクへのアップついては自力でステップアップしてもらうとの事だった。
亮二としては【G】ランクに上がればすぐに【D】になるので、【H】ランクの昇格条件である依頼完了数の50個をクリアするくらい特に気にならなかったが。
◇□◇□◇□
依頼:鉄鉱石の運搬
亮二はドリュグルの街から歩いて2時間ほどの場所にある鉱山に来ていた。最初に来た時は道を間違えて森に入ってしまい、そこでキノコのお化けが大量発生した時は軽くトラウマになりそうだったが。今回は6回目の訪問になるので道に迷う事無く到着した亮二は受付で暇そうにしている男性に声を掛けた。
「こんにちは、今日も鉄鉱石の運搬に来ましたよっと」
「おう!リョージ、今日も済まないな。”ドリュグルの英雄”に鉄鉱石運びさせるなんて最初はどうしようかと思ったが、ランクアップする為に必要ならしょうがないよな。それにしてもリョージのアイテムボックスは凄いよな。初めて見た時は自分の目を疑ったよ。キノコのお化けが無尽蔵に出てくるんだもんな」
「そっちかよ!鉄鉱石が物凄い勢いで収納されていく方に驚けよ!」
亮二の叫び声に受付の男性は嬉しそうに手を叩きながら「さすが、リョージだよな。鋭いツッコミに芸術性を感じるよ。あっ、ちなみにキノコのお化けは美味しく頂きました」と言いながら集積場のバインダーを持って亮二を依頼の場所まで連れて行った。
「今日はここにある分を頼む。さっきは冗談を言ったが本当にリョージのアイテムボックスは凄いよな。この山のような鉄鉱石がその中に入るんだから」
「そう言えば、ギルドの依頼掲示板に鉄鉱石運搬がなくなってたけど、俺のせいかな?」
「お前さんがこの2日間で運んでくれた量は1年分くらいはあるからな。午後の分を運んでくれたら当面はギルドへの依頼は停止だ。ただ、気にすることはないぞ。元々、この依頼を受けてくれる奴は少なかったんだ。リョージが運んでくれたお陰で俺達は採掘に集中することが出来るんだからな」
受付の男性はそう言うと亮二の肩を叩いて「頼んだぞ」と伝えて受付に戻っていった。
「よし、ストレージ能力全力開放!俺のフットワークの軽さを見せてやるぜ!」
亮二は受付の男性が居なくなったのを確認すると、勢い良く積み上げられている鉄鉱石を触って片っ端からストレージへの収納を始めた。50分ほどで収納が終わった亮二は受付の男性に「終わったから、また午後に来るね」と伝えると鉱山の近くにある森に入っていくのだった。
依頼:害虫退治
「この虫ってどっから湧いてくるんだろうな。倒しても、倒しても湧き出てくるんだけど」
キノコのお化けの比じゃないよなと思いながら亮二は”ミスリルの剣”を振るっていた。鉱山から歩いて10分ほどの森の奥にある泉の近くで亮二は飛んでくる蛾のような魔物と格闘していた。この時期に10日間だけ蛾のような魔物が大量発生する為、毎年ギルドで依頼を出して対応をしていた。本来なら10人で交代しながら殲滅していくのだが、今回は亮二が1人で対応をしていた。亮二が依頼を独り占めしているのだが、蛾のような魔物を討伐しても素材にも使えず、買い取り金額も無いボランティア対応なので他の【H】ランクの冒険者からは感謝されていた。
依頼:キノコのお化け討伐
「結局、ギルドの連中からは“キノコを極めし者”って呼ばれるようになったな」
亮二はキノコのお化けを倒しながら呟いていた。キノコのお化けの討伐は10体で1依頼となり【H】ランクの冒険者にとって小遣い稼ぎにはもってこいの魔物であった。ドリュグルの街に入る前に600匹を倒していたが絶滅した様子もなく出てくるところを見ると、繁殖力は亮二のイメージ以上に旺盛のようである。
「よし、一気に150匹狩って、さっさと終わらせるか」
亮二は勢い良く剣を振るいながらキノコのお化けを討伐していくのだった。
◇□◇□◇□
「カレナリエンさん!やっと50個の依頼を終わらせたよ。ものすごく大変だったけどやりきったんだから、褒めて!ねえ褒めてよ!」
嬉しそうにカレナリエンに報告する亮二を呆然とした顔で眺めているのはカレナリエンだけでなく「進み具合はどうですか?」と聞きに来たメルタも一緒に硬直していた。
「え?全部終わらせたんですか?」
「うん!大変だったんだよ!何が大変だったかって50個もの依頼を4日で終わらせるのは面倒くさい!」
「いやいや!普通は1日1個クリアを目安にするんですからね。最短記録としても破格すぎますね。カレナリエンどうする?ギルドマスターに報告する?」
「そうだね、さすがにリョージさんを紹介しないとまずいかもね」
カレナリエンとメルタを眺めながら「ギルマスきたぁ!」と小さくガッツポーズをする亮二であった。
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