第27話 試練の洞窟内での出来事 -敵がイッパイですね-

 - それにしても、ディーノ達は何であんなに仰天した顔をしたんだろう?ひょっとして属性付与自体が珍しい技術なんだろうか?あとでマルコやカレナリエンに聞いてみよう -


 亮二は2重がけの属性付与がこの世界では異常な事で有る事に気付かずに、ディーノたちの驚愕した顔を思い出しながら試練の洞窟について、マルコから説明を受けながら歩みを進めていた。


 - 試練の洞窟 -

 ドリュグルの街から馬で半日ほど離れた場所で10年ほど前に発見された洞窟である。その昔よりこの周辺では魔物の発生率が他の場所に比べると異常なほど高く、ギルドが主体になって周辺調査が進められていた。あるパーティーが偶然の産物で洞窟を発見し、中の調査を行っていたが運の悪い事に魔物の大量発生時期だったために1人を除いて帰らぬ人となってしまった。軍を投入しての魔物討伐後、魔物の大量発生が起こった際に対処できる様に駐屯軍を洞窟の近くに配置し、洞窟自体にも軍事的示威活動を定期的に行い魔物の間引きを行っている。また洞窟を2時間ほど進んだ場所は広間となっており、発見当初から設置されている石版があり、その石版にタグをかざすとタグが反応する仕組みになっていた。そこでドリュグルのギルドでは単独で広場まで到着しカードをかざすことが【C】ランク冒険者として認められる試練の1つとなっていた。なぜ、石版にタグをかざすと反応するかは今だに分かっていない。


「当時の話の詳細だがな、命からがらドリュグルに辿り着いた冒険者の報告により辺境伯であるユーハン = ストークマンは500名の兵を自ら率いて魔物の撃退に成功したんだ。着任早々にドリュグルの街を救った武勲により住民からの信頼を勝ち得て現在の地位を不動のものとしたんだよ」


「なんで、急に辺境伯の話なんてしだしたんだ?マルコさんよ」


 “試練の洞窟”だけの説明ではなく、辺境伯の話までし始めたマルコに亮二は怪訝な顔を向けた。


「隠してても仕方が無いから先に言っとくが、お前を辺境伯に会わす予定なんだよ。当然ながらこの依頼が問題なく終了することが条件だけどな。お前の価値はお前さんが思っている以上にドリュグルの街を震わせてるんだよ」


 マルコからの返事に亮二は「ほほぉ!辺境伯と対面ですか!テンプレ展開で心が踊りますな!『俺の右腕になれ』とか言われるのかな?」とワクワクしていた。何も知らない者が文章だけで2人の様子を推測するなら気楽に会話をしながら洞窟を進んでいるように読み取れたであろう。実際は洞窟に入ってから2時間が経過しており戦闘回数も2桁を超えているのである。倒した魔物の数も50体を越えようとしていた。


「マルコ。気のせいじゃなくて魔物の数が多くないか?“試練の洞窟”ってこんなに大変なの?」


「確かにな。お前のレアアイテムボックスが無かったらそこら中に魔物の死骸が転がっているだろうよ。それにしても軍事的示威活動を昨日もやったはずなのに魔物の数が異常なほど多いな」


 亮二の質問に対して答えながらも、魔物との遭遇数が普段とは比べ物にもならない位に多い事をかなりの疑問と少しの不安を同時に抱えるマルコであった。普段なら2時間ほどで到着する広間に3時間を費やして広場に到着したマルコと亮二を待ち受けていたのは大量の魔物と交戦中の駐屯軍とカレナリエンの姿だった。


 ◇□◇□◇□


 亮二とマルコに先行してカレナリエンは駐屯軍の広場で2人が来るのを待ちわびていた。定時交代の時間に合わせて駐屯軍の広場に来た理由はギルドの職員として亮二を迎え入れるためである。“試練の洞窟”のランクアップ試験では無いとは言え、ここまで来るのだからカードに記録をしておくことで、亮二が【C】ランクに挑戦する際に2度手間にならないようするためのギルド側の配慮でもあった。


「それにしても、今日は魔物の数が少ない・・・ですね」


「それは軍事的示威活動を昨日行ったからじゃないですかね。昨日の時点で結構狩りましたからね」


 カレナリエンと一緒に広間まで来た兵士の1人がそう答えた。


 - そんなものかな。でも魔物が少ないってのは有難いわ。今日はギルド職員として来てるから戦闘は避けたいしね。それにしてもリョージくんは超優良物件だよね。それに私の事も気に入っているみたいだし頑張って青田買いでもしちゃおうか! -


 そんな事を考えながらカレナリエンは無意識に精霊魔法を発動させて索敵を行っていた。亮二が普段行っている索敵と違って精霊に頼んでいるので、どんな魔物がどれだけいるのかまで分かるためパーティー内では重宝されていた。


「ん?なんか魔物がこっちに向かってきてるよね?えっ!何この数!皆さん!最大級での警戒対応!広間に魔物が集まろうとしています。今来た道からは大丈夫だけど、奥から少なくと200匹以上がこっちに向かってきています!!」


 カレナリエンの叫び声に休憩に入ろうとしていた駐屯軍20名は背負っていた荷物を放り投げると、常設されているバリケードを日頃の訓練通りに設置していった。最初の魔物が広間に入ってきたのはバリケード設置完了直後であった。

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