第26話 駐屯地での一コマ -模擬戦は楽しいですね-
「こら!リョージ何をやってんだよ!」
ディーノが降参の意思を示したタイミングを見計らったかの様にマルコとカレナリエンがやって来て叫んだ。
「なんだよ!ディーノさんがハイランカーっぽかったから、自分の実力を見極めるために相手してもらっただけじゃん。」
マルコの叱責に対して亮二は言い訳すると「圧勝だったよ!」とドヤ顔で答え、カレナリエンには「どう凄いでしょ!」と胸を張って自慢するのだった。
「なんだ、マルコさんの知り合いかよ。一体この子は何者なんだい?年齢的にも【H】ランクと言われて軽く相手をするつもりだったのに、いざ戦ってみたら【C】ランク以上の動きをしてきたぞ。あの動きは一朝一夕で身につく動きじゃない、冒険者って言ってたけど只者じゃないよな?」
「すまないな、ディーノ。リョージは昨日冒険者登録をした所なんだよ。ただ、実力はディーノが体験したとおりだよ。しかも、こいつは属性付与もできるんだぜ。何でそんなに強いのかは俺も知りたいぐらいだよ」
汗を拭きながらディーノの質問に答えはするものの、マルコにしても何で亮二がそんなに強いのかは疑問に思うのであった。
「リョージさんは何でそんなに強いんですか?属性付与も簡単に出来ますし。ご自分の国で何か訓練とかされてたんですか?」
「そうだね、カレナリエンさんにだけ教えてあげる。ウチノ家は、男子が生まれたら3歳になった時点で戦闘と属性付与に対する教育が始まるんだ。8年間は血の滲むような訓練!そして訓練!更に訓練!で、11才になったら諸国漫遊との名で武者修行に追い出されるんだよ。成人式を向かえるまでの2年間で実力と伴侶を連れて帰る事が義務付けられてるから、伴侶と言えばカレナリエンさんさえ良かっ…「よし!そこまでだリョージ。それとカレナリエンも満更な顔をしない!」」
強さについて質問をしてきたカレナリエンの手を握って見つめ合いながら説明を始めた亮二だが、最後は脱線しそうになってマルコからのツッコミを受けるのだった。
- あれ?ノリでカレナリエンさんを口説こうとしたけど結構反応いいんじゃない?ひょっとして、ひょっとする?俺の彼女いない歴=年齢に終止符が打たれる? -
「もぅ!せっかくいい感じだったのに邪魔しないでよマルコ。もう少しでリョージくんから言質が取れる所だったのに。それにしてもリョージくんの国って凄いですね。3才から戦闘と属性付与の教育を始めるんですか。それでそれだけ強いんですね」
亮二の心の中で叫んでいる喜びの声に気付くこと無く、カレナリエンは残念そうな口調でマルコを軽く睨むと、亮二に向けて笑顔で感想を述べるのだった。
◇□◇□◇□
- おいおい、何回模擬戦をさせるんだよ -
亮二は心の中でため息をつきながら木剣を振るい続けていた。ディーノが負けたと聞いた駐屯軍の精鋭たちが「リョージ強いんだって?俺ともやってくれよ」「ディーノが敵わないなんて凄いじゃないか!俺と勝負してくれよ」「ディーノはオレたちの中では最弱」とどこかで聞いたことの有るような台詞も混じりながら亮二に戦いを挑んできたのである。ディーノのことを最弱呼ばわりした男はディーノと模擬戦をする事になりボコボコにされていたが。
10人ほどとの模擬戦が終わった所で一時休憩となり、残りの対戦相手は亮二が“試練の洞窟”から帰って来てからとなった。先ほど戦って負けた10人も今度こそ勝つと早速訓練を始めるのだった。
□◇□◇□◇
「それにしても、よく寝たね」
模擬戦が終わった後で、早々に宿舎に戻って休んだ亮二は、日が昇る前に目を覚ました。亮二はベッドから起き上がると、大きく伸びをしながら身体を少しずつほぐしていくのだった。模擬戦とはいえ連続で戦ったため、流石に身体が硬くなっており、“試練の洞窟”にアタックする前に準備運動をしようと“ミスリルの剣”を抜いて、軽く素振りを行いながら【火、水、雷、風、氷、土】と属性付与を行っていった。10分ほどで身体が温まってきたので一息つくと“ミスリルの剣”をじっと見つめた。
- あれ?もしかして属性を纏わせるのって2種類とか出来るんじゃないか?まずは半分だけやってみるか -
亮二はミスリルの剣の片刃だけに【火】の属性が纏うようにイメージをしてみた。ぴったり半分には分かれなかったが、残りの半分に【水】のイメージを浮かべようとし、一見上手くいったかのように見えた。だが、【火】の部分に【水】がぶつかった瞬間に大量の水蒸気が発生し周り一面が霧のようになってしまった。
「な、なんだ!敵襲か!!」
遠くにいたディーノを含む駐屯軍の兵士数名が抜剣した状態で走ってきた。
「ごめんなさい!ディーノさん!!俺が犯人です」
ディーノたちの目に写ったのは霧の中から剣を抜いた状態で頭を掻きながら出てきた亮二だった。ディーノ達がこの霧について質問しようとする前に亮二は“ミスリルの剣”を大きく振りかぶると「風」を纏わせ霧に向かって振り下ろし、辺りを覆っていた霧が晴れると亮二はディーノの元に走って行き再度「ゴメンナサイ」と謝った。
「さっきの霧はリョージがやったのか?どうやって?それに霧が無くなったのは何をした?」
「えーと、剣に【火】属性と【水】属性を一緒にしたらどうなるかなって思ってやってみたら突然爆発して霧が出ちゃったんだよ。で、ディーノさん達が来たから、霧が邪魔になると思って【風】属性を纏わせて吹き飛ばしたんだよ。ごめんね」
何が起こったのか理解出ずに戸惑いながらも質問したディーノに、亮二は大騒動になった事を謝罪しながら何が起こったのかを細かく説明を行っていった。何が起こったのかを起こした本人から聞かされたディーノ達の戸惑いから納得、そして仰天に変わっていく顔に「どうしたんだろう?」と不思議そうな顔を向ける亮二だった。
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