第23話 目的地までの道のり -モテてるみたいですね-

 亮二が「この子、本当に大丈夫なの?」と疑問に思いながらシーヴと会話をしていると、メルタがカレナリエンとマルコを連れて応接室に入ってきた。


「もうすでに時の人だなリョージは。今日は何をしたんだ?」


「まだ何もしてないよ!これからしようとしたところだよ!」


「開き直るなよ。お前が何かしようとしたから俺が呼ばれてるんだよ。メルタからも『リョージ君の為に行ってあげて下さい』って頼まれてるから安心しろ。リョージは俺達が付いて行ってやるからシーヴには通常の依頼として登録してもらえ。俺達と一緒なら”試練の洞窟”に行くためのランクは余裕で超えてるからな」


「えっ!ひょっとしてメルタさんのデレ期到来?」


「“でれきとうらい”ってなんだよ?相変わらずお前の言っていることは意味が分からんな」


 亮二とマルコの掛け合いを聞いていたカレナリエン、メルタ、シーヴの3人は呆れたような顔をしていたが、代表としてメルタが2人の間に入って会話を終了させた。


「はいはい、2人とも掛け合い漫才は終了ですよ。では、今後の詳細を説明させていただきますね。シーヴさんの依頼については通常依頼で受領させていただきます。リョージさんは通常の手続きで依頼を受けて下さい。報奨金は銀貨1枚。期間は3日以内とさせていただきます」


「はい!メルタさん質問です!”試練の洞窟”までの道のりはどの位ですか?」


「ドリュグルの街から馬の足なら半日ほどですね。洞窟の前には駐屯地も有りますので、安心して馬を預けて下さい。探索に必要な道具なども販売している道具屋の様なところも有りますよ」


 亮二の質問にメルタは答えると心配そうな眼差しで亮二を見つめてきた。


「いいですか、リョージさん。貴方は久しぶりにドリュグルの街から発掘された有望な冒険者の原石なんですよ。さっき、カレナリエンから昨日の職業適性検査の内容を全て聞きました。貴方がいかに優れた冒険者になれる資質を持っているかを本当に分かっていますか?これから【A】ランクも狙えるとギルド側では期待しているんですよ。それにリョージさんはお金持ちとの噂が出ていますし、異国の子爵とも聞いています。将来有望株の貴方の事を狙っている女子は多いみたいですよ。ねえ、カレナリエン?」


「最後の方は関係ないよね?11才の子供を狙うってどうなんだよ!」


 亮二のツッコミにメルタとカレナリエンはステキな笑顔で「でも、後2年で成人ですよね?」「顔も可愛いし、今後に期待!」と告げ、今度は女同士で見つめ合うとニヤリと肉食動物の様な獰猛な笑顔で牽制し合う様に見つめ合った。


「そ、それでリョージ君が依頼を受けてくれるってことでいいんだよね?」


 おずおずと会話に参加してきたシーヴに対して2人は一時休戦とばかりに視線を外し、シーヴの方に向くと今回の依頼についての詳細を話し始めた。


 ・マルコとカレナリエンと一時的にパーティーを組むことで”試練の洞窟”に挑戦するランクになると認定する

 ・駐屯地までの道のりでリョージの実戦での戦闘力を確認し、無理そうならその時点で依頼は取り消しとする

 ・今回の件は特例処置であり、失敗した場合はペナルティとして金貨10枚を違約金としてギルドに支払う


「金貨10枚ですか!リョージ君!やっぱりいいよ。私の依頼の為にそこまでしてくれなくても、私が自分で頑張って取りに…「でも、お父さんの傷を治したいんだよね?それに、シーヴじゃ”試練の洞窟”に辿り着く事も出来ないよ。だったら俺に任せてくれたらいいんだよ。安心してお父さんの面倒を見ながら3日後を待っててくれ」」


 シーヴの話を途中で遮ると亮二は笑顔でシーヴを見つめて言い切った。その様子を最初は微笑ましそうに見ていたカレナリエンとメルタは、徐々に顔を赤くするシーヴに軽く危機感を覚え、慌てて2人を引き剥がし始めるのだった。


 ◇□◇□◇□


 亮二、マルコ、カレナリエンの3人は馬上で昼を迎えていた。あの後すぐに準備を整えるとドリュグルの街を出発し”試練の洞窟”へ後1時間の場所まで来ていた。


「リョージは馬にも問題なく乗れるんだな」


「だろ?俺がやって出来ないことなんて無いんだよ。素晴らしいほどにハイスペックだからな」


 亮二はインターフェースを起動させて索敵モードを半径500mで設定しており、特に反応がないのでマルコの軽口に対して気楽に返事を返すことが出来るのだった。昼食を兼ねた休憩をしていると、索敵範囲ギリギリの場所に赤い点が5つこちらに向かって来るのが分かった亮二は“ミスリルの剣”を抜き放つと2人に向かって叫んだ。


「マルコ、カレナリエン!大体500m先から敵意を持った何かが5体ほどこちらに向かってきてるぞ」


「え?何で分かるんですか?」


 亮二が当たり前のように敵襲を告げたことにカレナリエンは不思議そうな顔をしたが、亮二の視線を見て何か口ずさむと「あっ、本当だ」と呟いた。


「マルコ!本当に5体の緑狼がこっちに向かって来てるよ」


「おぉ!そうか丁度いいな。リョージ!これから試練の洞窟に入れるかどうかの試験を行う。俺達はお前が本当に危ないと判断するまでは手を出さないからな」


 亮二はマルコの言葉に「分ってるって!こんなテンプレな展開で俺が遅れを取るわけ無いじゃん」と返すと“ミスリルの剣”を握り直すのだった。

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