第22話 ギルドで依頼を受ける  -ヒロイン候補ですかね?-

  - ん?何か俺の方に視線を感じるな。ひょっとして口に出してた感じ?皆の視線が『どうしたんだ?この可哀想な子は』って感じで俺を見るような状態になってるんですけど -


「ひょっとして、今の独り言って声に出てました?」


 バツの悪そうな顔で周りを見回しながら誰と無く尋ねると、全員が打ち合わせをしていたかのように一斉に頷いた。その中で話を進める必要があると判断したメルタは亮二に対して問いかけを行った。


「えーと、リョージ君。君が何を言っているかは分からなかったけど、彼女の依頼を受けるつもりなの?」


 メルタの問いかけに亮二は力強く頷いた。


「ええ、私がその依頼を受諾します。掲示板に載せる前なら報酬は依頼人と直接やり取りしてもいいんですよね?」


「でも、それは指定依頼の場合だけよ。それに薬草が”試練の洞窟”に生えているか分かって言ってるの?」


 メルタの問いかけに再び力強く頷くと少女の方を向いて笑顔で問いかけた。


「お嬢さん、私が貴方の依頼を受けさせて頂きますので大船に乗ったつもりで待っていて下さい。そう言えば、お名前を聞いてませんでしたね。私の名前はリョージ・ウチノと申します。よろしければお名前をお聞かせ願えますか?」


「え、えーと。リョージ君…でいいんだよね?依頼受けてくれるのは嬉しいけど大丈夫なの?同い年位だと思うけど?イキナリ叫んだりとかしてるけど頭大丈夫?」


「間違いなく頭は大丈夫だから安心して。それに俺は剣も魔法も使えるから大丈夫だよ。同じ年位って言ったけど俺は11才だよ?君の年は?それに名前も教えて欲しいな」


 先ほどの亮二の雄叫び直後のバカ丁寧な挨拶にかなり引きながらも、亮二が剣も魔法も使えると聞いて目に希望を灯して「シーヴ=ルンディン。8歳だよ」と名乗った。「8歳かよ!」と心の中で叫んだが大事な依頼人である。口に出しては何も言わずに依頼の話をするために酒場の方にシーヴを連れて行こうとして亮二はメルタに再度止められた。


「ちょっと待ちなさい、リョージ君!さっきから私を無視して話を進めようとしないでくれるかな。薬草が咲いている場所は”試練の洞窟”って言ったのを覚えているよね?さっき話にも出た様にソロなら【C】ランクは最低限で必要だから君の【H】ランクじゃ到底依頼を受けるなんて出来ないわよ」


 メルタはシーヴを酒場に連れて行こうとする亮二を引き止めると呆れた様にため息を付きながら話し始めた。


「もう一度言うけど、君は昨日登録したばかりの【Hランク・・・・】の冒険者なの!そんな駆け出しにギルドとして許可することは出来ないわ」


「メルタさんは昨日あった俺の職業適性検査の様子を知らないんですよね?」


 イキナリの亮二の質問に「知らないけど、それが何?」と首をかしげながら答えたメルタに対して、亮二は野次馬として集まっている冒険者達の中に居た人物を目ざとく見つけると、メルタの前に引っ張って来て説明を始めた。


「この人を知ってる?」


「え?バルトロメインさんでしょ。冒険者ランク【F】の期待の新人さんで、今度のランクアップ試験で【E】ランクに挑戦するんですよね?」


「そんな彼に俺は圧勝しましたよ。ねえ、バルトロメインさん」


 亮二のドヤ顔で同意を求められたバルトロメインは引き攣った顔をしながらもメルタに「ああ、そうだ。こいつの実力なら“試練の洞窟”は大丈夫だと思う」と請け負った。


 メルタはバルトロメインの話を確認するために野次馬として集まっている冒険者達に視線を向けると、【C】ランク以上の冒険者達が「昨日の実力を見ると俺たちランクは十分にあると思うぜ」「魔法も使えるみたいだしな」「カレナリエンちゃんと仲がいいのは万死に値するけどな」と口々に話しだした。実力的には問題無と周りに言われたメルタはしばらく考えると、野次馬冒険者達に解散を伝えて亮二とシーヴを連れて応接室に連れて行くのだった。


 □◇□◇□◇


 応接室に連れて行かれた亮二とシーヴはメルタから「しばらく待っていなさい」と言われてから30分ほどが経っていた。その間に亮二はシーヴから詳しい状況を聞き出していた。


 ・シーヴの父は武器屋の2代目で祖父の死を機に後を継いだばかりである

 ・祖父はこの街では高名な武器屋だったが、父は全く名前が売れてなかった

 ・父は名声を得るためには祖父を超える武器を作る必要があると考え1人で鉱山に向かった

 ・鉱山で貴重な金属を取ることは出来たが、途中で魔物に襲われてしまった

 ・死ぬような怪我ではなかったが、傷が治ったにも関わらずほぼ力が入らない状態になってしまった

 ・このままでは仕事が出来ないと塞ぎこんでいる父を見て様々な事に効果があるとされる薬草を飲めば治ると聞いたので自分で何とかしようと思った


 - おぉ、物凄いテンプレ展開だな。それにしても薬草ってそんなに効果があるのか?ストレージの中にポーションが有るけど、それじゃあダメなのかな? -


 亮二はシーヴと話しながらインタフェースを起動するとポーションについて検索を始めた。


 - ポーション -

 セーフィリアで一般的に流通している体力回復薬である。“創薬”のスキルを持つと作成可能になる。飲めば体力が回復する物ではなく回復力が通常の2倍になる程度である。でも!神様である私が作ったポーションはそんなチンケなモノではないのです!一気に飲めば直近で一番元気だった時点に復帰するのですよ!びっくりデスねー。用法用量を守ってご利用下さい。


「相変わらず後半は適当な書き方だな」と思いながらもストレージに入っているモノと、この世界で流通しているモノは全く違う事は分かったのでシーヴに軽く確認してみた。


「薬草ってそんなに効果があるんだね。よくそんなコトを知ってるね、凄いねシーヴ」


「え?近所のおばちゃんに聞いただけだよ?」


「え?情報ってそれだけ??」


「それだけじゃダメなの?お父さんが大変だから頑張ろうと思っただけだもん」


 マジか、この子。と軽く頭を抱えながら亮二に対して気さくな言葉使いになっているシーヴは飛びっきりの笑顔で答えるのだった。

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