第19話 宿屋での確認作業 -たまには1人も良いですよね-
「やっとユックリ出来るな」
部屋に設置されているベッドに腰を掛けながら亮二はため息を吐いていた。夕方から始まった宴会は、亮二が酒場から引き上げ日付が変わる時間になっても終わること無く喧騒に包まれていた。あまりの盛況ぶりにギルドの酒場だけでは酒と食材が足りなくなり、近所の飲食店からも急遽材料や酒を調達して対応したほどである。そんな喧騒の中さすがに眠くなってきた亮二は宿屋を探すために、近くにいた比較的酔いが回ってなさそうな冒険者を捕まえると宿屋の場所を聞いて移動を開始するのだった。
冒険者に教えてもらった宿屋はギルドから歩いて5分ほどの場所にあり、夜中にもかかわらずロビーには主人がいて部屋を取ることが出来た。宿は1泊2食付きで銅貨1~5枚であったので、銅貨5枚の一番良い部屋を1ヶ月分まとめて予約をおこなった。夜分遅く来た詫びの分も含めて銀貨3枚を渡すと、宿屋の主人は全額一括払いの上に、気前良くチップも支払った亮二を上客と認識し1番いい部屋を自ら案内するのだった。
◇□◇□◇□
「それにしても、この街は冒険者がたくさん居るんだな。100人近くは酒場に居たと思うぞ」
誰に話す訳でもなく呟くと、酒場の状態を思い出すのだった。ギルドに設置されている酒場はパーティーの打ち合わせやギルドでの買い取り待ちの休憩などで利用されるため、大きいスペースを取っていた。それが先ほどの宴会では座る場所すらも無いくらいに人が溢れ返っていたから「100人いる」と亮二が思っても不思議ではない。実際の所は噂を聞きつけた近所の一般市民がかなりの数で混じっていたのだが。
「取り敢えず、酒場の主人には金貨10枚渡してあるから大丈夫だろうけど要確認だな。やっと抜けてきたからインタフェースで体力と魔力のバー表示について確認しとかないとな。明日から依頼を受けてランクアップをしていく必要があるし、討伐系の依頼なら体力がゲージじゃなくてもっと視覚的に分かるようにしておかないとな」
亮二はインタフェースを起動すると体力、魔力のバーを見ながら考えていた。さっきから何回眺めても数値は表示されておらず、自分の体力と魔力がどれだけ有るのかが分からないのである。今の状態はバーが右側いっぱいまで緑色で塗られていて「満タン」状態であることは分かる。亮二は壁を殴って体力を減らすか魔法を使って魔力を減らすかで確認する必要があったが、悩む必要なく魔力を減らすことを選んだ。壁を殴るのは自分的にも宿屋的にも問題がありそうだったからである。
「痛いのは嫌だから魔力を減らすことにしよう。魔力を減らすためにはどうするかな?いきなり魔法をぶっ放すわけにも行かないしな。魔法を使うためには杖とか要るだろうし、やっぱり明日に杖でも買いに行くかな?あれ?そういえばイオルスにもらった“ミスリルの腕輪”って何に使うんだろ?単なる装飾具って事は無いよな」
インタフェースで確認するためにストレージに収納している“ミスリルの腕輪”を検索して出てきたフレーバーテキストを読み始めた。
- ミスリルの腕輪 -
幸福の神イオルスがミスリルだけを使用して作成した腕輪である。魔法を使う際の発動体として優れており、一人前とされる魔術師が持つ杖に比べても5倍以上の性能を誇っており、また杖との併用も可能である。さらに自身の魔力を充填することが出来、充填量は使用者の魔力2日分となる(本人の魔力保有量によって数値は変動)。現在0/100% 魔法使いを目指す君!魔法で無双ができるために頑張って作ったんだから魔法を撃つたびに私の事を思い出して感謝するよーに!
「最後の一言は、転生する人間にしかインタフェースが開けないのを分かっているイオルスのお茶目だな。それは置いといて“ミスリルの腕輪”って素晴らしいアーティファクトって言っても良いアイテムだな。これって今の内に魔力を充填しといたら、実際の戦いの時は相手にとっては無尽蔵に魔法を撃たれ続けるのと同じって事じゃないか?魔力ゲージのチェックにもなるしちょっとやってみるか」
「俺だったら魔法を無尽蔵に撃ってくる相手と戦うのは嫌だな」と呟きながら亮二は“ミスリルの腕輪”を握り締めると、ギルドの適性検査で使った測定器のように魔力をつぎ込み始めた。魔力測定器のようにやり過ぎて壊すのも怖いので少しずつ魔力を注ぎながらバーの減り具合を確認していてふと気付いた。
- あれ?これって体力、魔力のバーも%表示にしたらいいんじゃね?出るかどうかは分からないけどオプションを探してみよう -
亮二はインタフェースに表示されている魔力バーを確認すると、全体の3割ほどが黒くなっており魔力の残量が7割であることは分かった。“ミスリルの腕輪”は14/100%と出ており、腕輪と同じように体力、魔力をパーセント表示にすることが出来れば戦闘時の撤退タイミングなどもコントロールしやすい。そう考えた亮二は魔力バーをクリックしたり、検索してみたが何も変化が無かったため、オンラインゲームのオプションを起動するイメージを浮かべてみた。
しばらくオプションを起動するイメージを悪戦苦闘しながら試していると軽やかな音が頭の中に響いてオプションが現れた。オプションには大量の項目が並んでおり、今後の役にも立ちそうな項目も有ったが、まずは「バーの数値を%で表示」の項目を見付けだして有効にした。
「おっ!バーが消えてパーセント表示になった!魔力残量は67%か。このままもう少し注いでみるか。おぉ!どんどんパーセントが減っていく!これは分かりやすい!取り敢えずギリギリまで魔力を注いで頑張ってみよう」
勢い良く亮二は気合を入れると、魔力のパーセントをチェックしながら“ミスリルの腕輪”に魔力を注ぎ続けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます