第17話 ギルドでの説明やお金の貸し借り -宝石は輝きますね-

 カレナリエンから冒険者としての心構えやギルドの利用について説明を受けた後、亮二は再度インタフェースを起動するとステータスの確認を行っていた。


(そう言えば、HPやMPってどうなってるんだ? あれ? 数値化されてなくてバーで表示される感じなのか。バーの減り具合で今の状態を判断するのか? ある意味怖いな)


 考え込んでいる亮二の肩を大きく叩きながらマルコが笑顔で語りかけてきた。


「よし。これで終わりだよな? 終わったから飲みに行くぞ! いくらお前が未成年でも酒は奢ってもらうからな!」


「分ってるって。今日は世話になったから支払いは任せてくれ。マルコのお陰でギルドにも来れたし、戦士として登録出来た。カレナリエンさんやアウレリオさんとも知り合いになれたんだから、好きなだけエールを飲んでくれていいよ」


「よし! じゃあ、さっそく酒場に行こうぜ! と言っても、ギルド受付の隣にあるんだけどな! 依頼掲示板の見かたを飲みながら教えてやる!」


 マルコとリョージがギルドの酒場コーナーに移動しようとすると、カレナリエンが鋭い声で止めた。


「リョージさん! 私との用事を忘れないでくださいよ! 金貨三〇〇枚貸して下さい!」


「おぉ! すっかり忘れてた。これでいいですか?」


 亮二は金貨を九九枚しか持っていないため、ストレージから宝石(小)を五個取り出すとカレナリエンに手に乗せた。出した本人も初めて見る宝石(小)はダイヤモンドを丸くした感じであり、大きさはビー玉より少し大きいくらいであった。


「はい、どうぞ」


 無造作に亮二から手渡された宝石を受け取ったカレナリエンは硬直してしていた。金貨三〇〇枚は簡単に用意出来る額ではないので、別の日を決めて渡されると思っていたからである。まさか、子供に飴玉を渡すような気楽さで、この場で手渡されるとは思っていなかった。


「でかっ! 宝石(小)ってこんなに大きかったんだ」


 大金を気楽な感じで渡された事に硬直しながらも、カレナリエンは亮二の小さな独り言を聞き漏らさなかった。


(え? ちょっと待って! 宝石ってこんな簡単に気楽な感じで手渡しするもんだっけ? しかも五個も渡されたよ? しかもリョージさんは小声で『宝石(小)』と言ったわよね? どう見ても、この宝石は小じゃ無いよね? この大きさなら一個で金貨二〇〇枚の価値はあるよね? それに宝石を持っていたにもかかわらず、初めて見た感じの感想だよね? なんで? どうなってるの? 彼って何者? マルコは『イイトコのボンボン』と言っていたけど、こんな大金を個人で持ち歩く? ひょっとしたら王侯一族か大貴族じゃないの? そもそも、これって本物なの? 本物だよね?)


「あれ? ひょっとして足りませんでした?」


 宝石を手に持ったまま固まっているカレナリエンを見て、足りないと感じた亮二は更に五個をカレナリエンの手のひらに置いた。


「だぁ! 違う! 違うんですよリョージさん。多過ぎますって! 鑑定しないと分からないんですが、この宝石は一個金貨二〇〇枚くらいの価値が有るんですよ! 旅の資金レベルじゃないですよ。なんでこんなたくさん持ってるんですか?」


「え? そんなに価値があるの? 貰った時は金貨一〇〇枚くらいって聞いたよ?」


「誰に聞いたの? マルコ! 貴方が言ったの?」


 キョトンとした顔で首を傾げた亮二に、カレナリエンはマルコを睨みつけた。マルコは否定の言葉を述べつつ、亮二の首を掴むと小さい声で忠告した。


「俺じゃねえよ! それと、カレナリエンはすぐにそれをしまえ。幸い、俺たち以外に宝石を見た奴は居ない。それと! リョージ! お前は金銭感覚をしっかり持てと言っただろ! そんな大金を手持ちで持ってるなんて分かったら確実に狙われるぞ! 大手を振ってこの街を歩けないと思え。それに俺も聞きたい。こんな大金どうやって手に入れた? いくら貴族でも持ち歩く金額じゃないぞ」


「やっぱり! リョージさんは貴族だったんですね」


 カレナリエンのツッコミに苦笑いをして頷くと、マルコに話していたニホン国の子爵であるでっち上げ話を熱く語り出すのだった。


 ◇□◇□◇□


 ひと通り話を聞いて亮二が異国の貴族で金持ちだと納得したカレナリエンは、金銭賃借契約書について説明を始めた。


「では、改めて金銭貸借契約を結びたいと思います。リョージさんはこちらに署名をお願いします。書かれている内容は分かりますか?」


 カレナリエンの問いに金銭貸借契約書を見た亮二は書かれている内容ではなく読める事に驚いていた。


(おぉ! 普通に読める。内容もスラスラと入ってくるぞ。ひょっとして、イオルスにお願いした『異世界で問題なく生きていくための身体』は、こんな所にも及んでいるのか?)


 亮二が何故か感心しながら署名している事に不思議にそうな顔をしながらも、カレナリエンはその下に自分の名前を署名する。そして、確認者の欄にマルコが署名した事を確認すると小さく聞き取れない言語で金銭貸借契約書に語りかけた。契約書はカレナリエンの言葉に反応するかのように淡く光り始め、亮二とカレナリエンを包んで消え去った。


「はい。これで契約完了です。お借りした金貨三〇〇枚を毎月最低銀貨八枚以上で一〇〇年以内で返却していきます。もちろん、頑張って返します。リョージさんが亡くなる前に完済しますのでご安心ください」


「あれ? 改めて見ると最低返却金額が銀貨八枚になってるけど、ギルドの受付は給料がいいの? マルコから普通に働いても、銀貨一〇枚くらいしか稼げないと聞いたけど?」


「そうですよ。一般家庭なら銀貨一〇枚も有ればゆとり有る生活が出来ます。ですが私は美少女売れっ子ギルド受付兼冒険者なのです。だから稼ぎは普通の方より多いのですよ。えっへん!」


(おぉ。自分で『美少女売れっ子』と言ったよこの人。しかも『えっへん!』付きで。美少女なのは確かだからそれは良いとして、カレナリエンさんは冒険者だったんだ。やっぱり精霊使いってやつか? パーティーを組んでくれるなら、美少女と実力者を一挙獲得で一石二鳥じゃん)


「カレナリエンさん。一緒にパーティーを組みませんか?」


 亮二はカレナリエンの手を握ると、熱い口調でパーティーに誘うのだった。

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