第6話 さらなる戦い -同じ敵ばかりって飽きるよね-
「せっかく倒した初魔物だから、テストも兼ねてストレージに保存してみるか。保存食にもなるらしいからな。そう言えば、ストレージにどうやって入れるんだ?」
亮二はキノコのお化けを前に考え込んでいた。装備やアイテムはインタフェース越しにアイテム欄をクリックして取り出したので問題なかった。だが、ストレージを利用しての取り出しや収納となると説明にも載っていなかった。
試しに、インタフェースを起動してフォルダを表示させ金貨をクリックすると、特に問題なく目の前に金貨が現れる。
「インタフェースを利用しての取り出しは簡単だな。このままでも問題なかったらいいけど、街中でなにも無い場所から金貨やアイテムを出したら目立つよな? 街中ではインタフェースを使わずに、ストレージ越しにアイテムを取り出そう。アイテムボックスだったらアイテムを取り出すのは『オープン』だよな? 同じでもいけるのか?」
イオルスと会った白い部屋で聞いたアイテムボックスの使い方を思い出しながら、皮袋に左手を入れて金貨をイメージして声を出してみる。
「オープン!」
周りを見ながら何も変化がない状態に若干焦りながらも『オープン!オープン?オープーン!』と連呼してみるが、森の中に亮二の声が虚しく吸い込まれるだけだった。
「やり方が間違ってる? 他にやり方があるのか? そんな難しい事は無いと思うんだけど……。あっ! イオルスさんの幸福の皮袋で検索したら出るんじゃないか?」
亮二はインタフェースを起動してイオルスさんの幸福な皮袋を表示させると、利用方法について検索を始める。
イオルスさんの幸福な皮袋
【取り出し方】
皮袋に左手を添えて『イオルスさん素敵!』と大きな声で何回も言いましょう。とてもすっきりとした幸福感に包まれた気分になれます。
取り出し方は2種類です。インタフェースを起動して該当アイテムをクリック、または皮袋に手を添えてから『オープン!』と唱えます
【しまい方】
皮袋に左手を添えて『イオルスさん頑張って!』と、セーフィリアに響き渡る声で叫びましょう。私が嬉しさのあまり小躍りします。
しまい方も2種類です。インタフェースを起動して、該当アイテムを触りながら入れたいフォルダを触ります。同じアイテムはまとめて収納されます。周りの目を気にするなら、アイテムを皮袋に入れてから『クローズ!』と唱えます
「えーと……。利用方法はイオルスが好き勝手に書いてるんだな。インタフェースを使えるのは俺だけだからか? やり方さえ分かればいいんだけどさ。とりあえずキノコのお化けの大きさだと、そのままでは入らないよな? 小さく切るのもめんどくさいし、やっぱりインタフェースからしまうか」
イオルスの説明文に呆れながらインタフェースを起動する。フォルダを表示させてキノコのお化けを収納する時にふと思いつく。
「あっ! そうだ! どうせだったら新規フォルダを作ってみるか。フォルダの右上にある新規作成ってボタンだよな? よし! フォルダが出来たな。名前は【倒した魔物】にしておくか」
新規作成と書かれているボタンをクリックすると【新しいフォルダ】が表示される。そこを【倒した魔物】の名前を変更した亮二は、キノコのお化けを右手で触りながらフォルダを左手で触る。一瞬で姿が消え【倒した魔物】フォルダにキノコのお化けと表示され、同じ手順で残りの二体を触るとキノコのお化け×三と表示された。
「数が分かるっていいよな。時間があるときに干して保存食にしておくか。それにしても、初めての戦闘は思ったほど苦労すること無く勝てたな。ミスリルの剣に不可視の盾形ガントレットが無かったら、触手攻撃で弱い麻痺状態になったろうし、俺みたいな一般人がここまでサクッとは勝てなかったよな」
亮二はドヤ顔のイオルスを思い出しながら、心の中で感謝を込めるのだった。
□◇□◇□◇
「どうしてこうなった?」
げんなりした顔で亮二は、襲い掛かってくるキノコのお化けにミスリルの剣を振っていた。キノコのお化け三体を収納したのち、インタフェースで地図を呼び出して最寄りの街を検索すると、徒歩二時間と出たので歩き始めた。
街に向かって歩いていたが、魔物に遭うことも無く亮二は油断していた。街まで後一時間を切ったので休憩を取ろうと、広場に足を踏み入れた。その際に、手に持っていた拳大の石を広場の中心に何気に打ち捨てたのが間違いの始まりだった。
「検索モードでは赤い点なんて出てなかったのに!」
亮二が足を踏み入れた場所は、キノコのお化けの巣だったようで、何気に打ち捨てた石が運悪く休眠中のキノコのお化けに当たった。その為に目覚めたキノコのお化けが本能の赴くままに仲間を増やそうと亮二を向かって来ていた。
二、三体なら簡単に処理が出来たであろうが、土中から目覚めたキノコのお化けが、次々と湧き出て来たため、亮二は休む間もなくキノコのお化けを捌き続けるのだった。戦闘開始から30分が経っており、亮二は周りに動く物体がいなくなった事を確認する。それとインタフェースの索敵モードで敵意がある物体が近くには居ない事を確認すると剣を収め、ため息とともに呟く。
「さすがに飽きた。どんだけ湧いてくるんだよ。明日は間違いなく筋肉痛だわ」
倒したキノコのお化けを、ボヤキながら【倒した魔物】フォルダに入れていく。全て収納したのを確認するため、フォルダをクリックして数を確認してみた。
・キノコのお化け×九九
・キノコのお化け×三六
「おぉ、三桁か。しばらくはキノコ料理には困らないな」
亮二は誰に対してとはなく呟くと、疲れた表情をして街に向かって歩き始めた。
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