第3話 ぬいぐるみ

さっき僕は、ママと喧嘩をした。

ママが「さっさと学校に行きなさい!」と、怒るから、僕は食べていたパンを皿に戻して部屋に閉じこもった。

僕は学校に行きたくない。

みんな僕のことを気味悪がって、話しかけてもくれないし、勉強もつまらないから行きたくないんだ。

家で、くまちゃんと一緒にテレビゲームをしていた方が楽しい。

それなのにママは無理やり僕を学校に行かせようとする。

行きたくない理由を言えば、ママだって、学校に行け!学校に行け!と、言わなくなると思う。

けど僕が、学校でみんなに無視をされている。なんって知ったらママが悲しむから言えないんだよ。

そんな気弱な僕が、声を荒げてママを怒鳴ったのは初めて事だった。

ママが鬼のような形相で、僕の部屋に入ってくると、大事なくまちゃんを取り上げた。「いつまでも、ぬいぐるみに依存してないで一人で学校に行きなさい!」

「やめてよ…くまちゃんを返して」

「返しません!ぬいぐるみと一緒に学校に行く人なんって誰もいないのに、なんであんたは、いつもいつも……はあーもうママは疲れたわ……こんなボロボロのぬいぐるみなんて捨てて友達を作りない。分かったわね」

ママはくまちゃんを持って部屋を出ようとした。

大切なくまちゃんが捨てられてしまう前に、くまちゃんを取り返さなきゃと必死で僕は、ママに体当たりをして転ばせた。

ママの腕からくまちゃんが離れた隙に、僕はくまちゃんを救出した。

「二度と捨てるなんって言うな!くまちゃんは僕の友達なんだ!!」

僕は、くまちゃんを抱いて台所に向かった。そして、ママがいつも使っている包丁を取り出して、ママのお腹・胸・足・腕を、何度も何度も刺した。

ママは真っ赤に染まって動かなくなった。

「くまちゃんが動けないから、僕の友達だと思えないんでしょ。だからママの心臓を貸してね」

僕は、ママの体から生暖かい心臓を取り出して、くまちゃんのお腹にそっと詰め込んだ。

「くまちゃん…起きて…ほら、ママから心臓を借りたから動けるでしょ?」

僕は暫く、くまちゃんの様子を見ていたけど、動く気配がない。

「あっ、そっか!くまちゃんは男の子だから、ママの心臓じゃ駄目なんだ!じゃパパが帰ってくるまで、一緒にマイクラやって待ってよう」

僕はママの心臓をママの体に返した。

「ママ、ごめんね。ちゃんと心臓を返したんだから怒らないでね」

と、伝えてから、僕の掛け布団をかけてあげた。

「そうだ!まだ朝御飯の途中だったから、食べてからゲームをしよう」

僕はくまちゃんと一緒に台所に行った。

「はあーママが怒るから、おかず冷めちゃったよ……あっ、ママが寝ている間に、お湯沸かしてカップラーメン食べよーうと……ん?なに………やだなー、僕は、もう17歳だよ。お湯くらい一人で沸かせるよ。くまちゃんは心配性だなーあっはははは」

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一本道+脇道=○○○ 葵染 理恵 @ALUCAD_Aozome

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