第12話

第十二話 【ブラックホール】[超大質量]

俺達はハミーとウェーブルーラーと一緒に怪しい路地へと足を踏み入れる。

路地には目が鋭い人や、酒を飲んでぐったりしてる人。乞食など。

いかにも治安が悪そうだ。


「確かにここなら、そんな怪しい集団がいてもおかしくないな、、、」


すると、「誰かぁ、助けてくれぇえー」


と叫び声が聞こえる。


「何だ?どこからだ!」


俺は声の方向に走って向かう。

「ちょっと待ってダークエネルギー!」

「待ってくださぁあい、師匠!」


ウェーブルーラーとハミーも俺に続いてやってくる。


横に分かれる路地を一つづつ見ていくと、


男が2人、胸ぐらを掴まれて壁に押し付けられている男と押し付けている男と、、、


俺は物陰に隠れて、様子を窺う。

「お前らは心底馬鹿だよなぁ。この俺に向かって来るなんてよぉ。」


そう男は語りかける。


「クソッタレがぁあああ」


そう言って、その男は唾を吐きかける。

胸ぐらを掴んでいる男は、

「ぎゃはははははははははははははあああ」


と高らかに笑うと、

「いい度胸だな。クソッタレ !いいぜ、愉快なことを思いついた、、、ただ潰してしまうのも仕方ねえからなぁ、、土下座させたまま圧死させてやるよぉ。」


どういうことだ?


そんなことを思っていると、

「やっと見つけた!はぐれちゃうところだったじゃないか !」


「先走りすぎですよ!師匠!」


息を切らしながら、ウェーブルーラーとハミーがやって来た。


その声で胸ぐらを掴んでいる男がこちらに気づく。


「あん?誰だオメェ、、、見せもんじゃねぜぞ!」


「誰ですか?師匠!」


なんか嫌な予感がする。


「こいつはヤベェ、、、はやくとんずらしたほうが、、、」


「何やってるんだい君?」


「そうですよ!早くその人を離してあげてください!」


「あはは、何なんだお前らはぁ?勘違いするなよ。こいつが先に突っかかってきたんだからな?」

そう言って俺達を睨みつける。


「それとも、お前らも俺の作品になりたいのかぁ?」


男はニヤける。


「ともかく君を騎士団に連れて行く。ご同行願おう。」


ウェーブルーラーがそう伝えると、

「答えはNoだ。そんな面倒なことに付き合いきれねえんだよ。クソ女。」


「クソ女?それは僕のことかい。君は死にたいようだね。」


ウェーブルーラーは虹色の翼を広げ、戦闘態勢に入る。


「ここは話し合いで、、、」

「問答無用!!」


俺の制止を振り切ってウェーブルーラーはその男に飛びかかる。


男は掴んでいる胸ぐらを振り払い、右手をウェーブルーラーに向ける。


すると、一瞬で宙のウェーブルーラーが壁に打ち付けられる。


「魔術?いや、魔力の痕跡なんて無かった、、、まさか、、、転移者?」


そう言ってウェーブルーラーは手からレーザーを放つ。


その男は


「なぁ、重力レンズって知ってるかぁ?」


そう言って避けることもなく、そのままモロに巨大レーザーをくらう。


建造物に穴があき、数キロ先まで光の線が走る。


「な、何で無事なの?」

ウェーブルーラーが驚くまもなく、


「残念だったな、ウェーブルーラー!」


そう言って一瞬でウェーブルーラーの前に移動し、胸ぐらをつかむと、


「相手がわりぃんだよ。俺は【ブラックホール】[超大質量]。あらゆる物質間で行われるグラヴィトンの相互作用を制御できる力だからなぁ。」


そう言って、ウェーブルーラーを思い切り蹴り上げる。


「ぐぁああ」


ウェーブルーラーは壁にめり込み、血を流す。


「お前も作品になりたいんだろう?あん?なんとか言えよクソッタレ!」


そうブラックホールはウェーブルーラーに問いかける。


「師匠!」


「分かってる!」


俺は瞬間移動でブラックホールの手を掴むと、

「もういいだろう?彼女を離せ!」

とブラックホールに詰め寄る。


「あん、邪魔すんじゃねぇぞ!」


そう言って右手を俺にかざすが、

、、、、、、


何も、、、起こらない。


「は?、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、クソ、クソ、クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソぉおおおおおおおおお」


そうブラックホールは声を荒あげ、

背中に3つの円が三角形の配置で現れる。


その円の真ん中から、勢いよく同時に俺めがけて何かが発射される。


「ホーキング放射、、、ガスか。」


そう言って俺は遅延防壁でそれを防ぐ。


「何だよ。何なんだよ。お前?」


その隙にウェーブルーラーとハミーを抱えて飛び立つ。


「いひゃひゃひゃひゃ、待てよぉ、もっと楽しもうぜぇ!」


ブラックホールは3個の円形の翼で飛び上がる。


俺はハミーにウェーブルーラーを任せる。


「俺が引き付けるから、ウェーブルーラーを頼む。」

「分かりました!師匠!!」


そう言ってハミーは箒にウェーブルーラーを乗せ、飛び立っていく。


「ったくよぉ。観客がいねぇと盛り上がらねぇじゃねぇか。せっかく重力で土下座させたまま押し潰そうと思ったのによぉ。」


「正気じゃないな、、、お前。」


「あん?うるせぇぞクソッタレ!」


そう言って重力波で攻撃してくる。

俺も同様に重力波で迎え撃つ。


ブラックホールとダークエネルギーの重力波がぶつかり、打ち消し合う。


「俺にここまでついてこれるやつはお前が初めてだな、、、、」


ブラックホールはそう俺を褒め称える。


「そりゃどうも。」


「なぁ、お前は神を信じるか?」


「俺は無神論者ではないが、、、そこまで信仰に厚いわけでもない。」


「お前はどうか知らないが、俺の以前の世界はクソッタレだった。俺は収容所でいつ死ぬかもわからないまま幼少期を過ごし、大人になれば人体実験に使い回される日々、、、そして俺はようやく自分の人生を取り戻した。神様もきっと俺に頑張って欲しいと思っているはずだ。」


「それは大変だったな。同情するよ。だが、それでアーティストになったのか(笑)」


「その通りさ!何度も体を弄くり回されているせいで、体にはいろいろ不自由しててな。より美しく歪なボディを作りたくなったんだ。お前を作品にしたらきっといいものができるはずだ。」


「そんなことされてたまるか。」


「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、いひゃひゃあああ!だよなぁだよなぁ?そうだよなぁ?」


そう言って、ブラックホールは無数のブラックホールを展開し、ガス流を噴射する。


俺はそれを避けながら少しずつブラックホールに近づく。


「何でなんでなんでぇええ?なんでだよぉおおおおお?」


ブラックホールは発狂しながら俺の前に巨大なブラックホールを作り、吸い込もうとする。



バシュウウウウウ


音を立てて壁となっていた巨大なブラックホールが消え、あとはブラックホール(人)が残る。


ブラックホールは驚愕の表情で


「何でお前は食らわないんだぁああああああ」


と叫ぶ。


俺は右手を力強く握ると、

「とっとと目を覚まして、人に戻りやがれぇ!」

そう言って、ブラックホールの左頬を思いっきりぶん殴った。


「ぐはあぁああぁあああ」


そう言ってブラックホールは建物にめり込む。


たくさんの人だかりがめり込んだブラックホールに集まり、

「魔術師同士の喧嘩か?」

と野次馬ができる。

騎士団も到着して救助活動が行われた。


俺はブラックホールを見届けたあと、重力波の翼を広げ、急いでハミー達のところへと向かう。


「結構、目立っちまったな。」


そう俺はのんびりとした異世界ライフから離れていってしまっていく現状を深く憂いた。




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