第7話

第七話 新たなる最強

急いで外に飛び出すと、

「誰、だ?」


俺は思わず口にする。

周りにいる人は驚嘆し、狭いが賑わっていた街道は悲鳴で覆い尽くされる。


「こんなところで何やってるんですか?ダークエネルギー?」


その男は

俺に問いかける。


えっ、俺のこと、、、だよな。

でも嫌な予感しかしない、、、


「人違いじゃないっすかねぇ、、、」


俺はその場しのぎで言ってみるが、


すると一息置いて、


「ふっ、人違いじゃねぇよ!!!」


その男はドスの効いた声でそう反論する。

周囲の空気がガラリと変わり、風が荒々しく流れる。


「あなたですよね?私の仲間に手を出したのは?」


そうその男はは睨んで問いかける。


「何っどういうこと?ダークエネルギー、この人は誰?」


「やっぱりダークエネルギーですか。」


ハミー、、、余計なこと言っちゃだめだよー。


「まぁ、そんなことはどうだっていいんですが、、、。あなた、異世界転移していますよね。」


「何で、もしかしてお前も。」


「そうですよ。私も異世界転移しました。

そして、この世界にあなたと同様に力を得て、降り立った。」


するとこの国の警察?らしき人影が現れ、、、


「動くな!手を上げろ!!」


そう警告するが、その男は余裕の笑みで警官達に近付く。


「止まれって言ってるだろ!!」


それでも尚、男はゆっくりと歩を進め、だんだんと警官との距離を詰めていく。


「う、撃てっ撃てっ!」


警官達が一斉に発砲するが、それと同時に男は背中から白い翼を広げ勢いよく飛び立ち、銃弾を回避する。


「お前達が先に攻撃を行った。当然私には正当防衛が発動する。」


そう言って男は指をパチンッと鳴らす。


すると警官達が勢いよく露店にめり込み、血を流す。

その後悠々と空から降りてきた男は、ゆっくりと警官達の前に着地し、立ち塞がる。


「くっ!騎士団にこんなことして、ただで済むと思ってるのか?」


あぁ、警官じゃなくて騎士団だったのか。


「安心してください。騎士団が全員束になってかかってきても、、、皆殺しになるだけですから、、、」


そう言って、男は騎士を踏みつける。


「覚えておいてください。私の名前は

【アンチマター】[反物質]。

あなた方ルビラスタ王国を滅ぼす者です。」


そう彼は自己紹介した。


アンチマターは振り返って、こちらに近づくと、手をポケットに入れて俺を見やる。

「アンチマター?あんたが?」


「やっと会えましたね。ダークエネルギー。」


「なんで、この国を滅ぼそうとするんだ?」


俺はさっきの発言を振り返り、尋ねる。


「私は民主主義の人間でね、、、この国の時代遅れな身分制度と、独裁に革命という手段で対抗しようとしているんです。」


そうアンチマターは語った。


「革命?フランス革命でもこの異世界に起こそうというんですか?」


「その通り。」


マジかよ。

俺は息を飲む。


「私はこの異世界がより良いものになるために民衆がやるべき闘争を肩代わりしてるんですよ。昔も現代も、人は社会に構築された秩序と構造に組み込まれ、手も足も動かせない。

盲目的に社会的地位を確立させた無能な人間の言うことを聞く哀れな存在、、、

もうそんなのにはうんざりなんですよ。

本物の無能とは力を持っていながら、それを信念を持たずに使うことです。

信念を持たないものが上に立ってもより良い社会にならないのは道理でしょ?

一番独裁が、無能な人間を生み出しやすい社会構造だってことも、、、」


俺は一考する。確かに私も民主主義派の人間だが、、、


「あんたの言っていることは概ね賛成だ。だが、それには人の死を伴うのか?」


「もちろん伴います。たしかに死を伴わない革命もありますが、それは奇跡です。聖なる闘争には当然犠牲は伴います 。」


アンチマターは一息つくと、

「同胞よ。我等の仲間になりませんか?」


そうアンチマターは持ちかける。

「あなたも分かっていると思いますが、ダークエネルギーは空間を自在に操る脳力です。そんな強力な力を持っているあなたなら、世界を変えられる、、、

そうでしょう?」


「そうだな。だが残念ながら、俺は自分の人生を生き直すことに決めたんだ。だからお前のような目立つ生き方はしたくない。」


俺はそう断りを入れる。


「なるほど、、、、、」


アンチマターは溜息をつく。

「仲間達は襲撃を邪魔されたことにいきりたっています。ですから、私も味方にならないのなら貴方の首を取らなければならないのです。残念です。」


そう言って、

後ろの大きな白い翼を更に輝かせた。


「不味い、、、」

俺は重力波の翼を全開にしてハミーを抱えて飛び立つ。


「またっ、お姫様抱っこ、、、!」


ハミーは少し照れているがそんなことを気にしている場合じゃない。


アンチマターは白い、いや光の翼を大きく広げ急上昇し、俺と対面する。


「知っているでしょうが、、、貴方のダークエネルギーはディラックの海で起こる対生成と、対消滅を利用した力です。ですが、

私のアンチマターは、

対生成で発生する反物質のみを無限に生成することができるのです。

それも無条件で、、、」


アンチマターはニヤリと笑う。


「例えばあなたの周囲にある空気の電子をエネルギーに変換して別の物質にするとか、、、」


急に息苦しくなる。

「電子殻の配置を変えたのか。」

翼で酸素がある場所に逃げるが、


「ぐぁあ」


背中で何かが爆発し、俺は吹き飛ばされる。

「ハミーは大丈夫か?」


俺はハミーを見る。


「衝撃で意識を失ってはいるが命に別条はないな。」


俺は安心するが、

「よそ見をしてるんですか?」


そう言って、アンチマターは俺の顔面を殴った。


盛大に宙を舞いながら、俺は重力に従って落下する。


だが僅かに残った意識を頼りに、重力波の翼を広げ、再び上昇する。


それに合わせ、アンチマターも光の翼を広げ、こちらへと向かう。



「驚いたでしょう?あなたの遅延防壁は、巨視的スケールの物質のみが防げるだけで、エネルギーの波動は防ぎようがないのですよ。」


「クッ。」


「もう一度言いましょう。私達の仲間になりませんか?」


「何度言っても無駄ですよ。」


俺はそう言うが、


「ならば、、、死です!」


俺は瞬間移動で戦線を離脱した。

一瞬で姿を消してしまった俺に、アンチマターは少し戸惑うが、すぐにタネを理解する。


「なるほど、真空のエネルギーを基底値にしたのか(笑)」


そう笑うと

「腰抜けですね。ダークエネルギーは、、、」と

そう嘲笑した。

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