疑惑

「アオ~死なないで~」

「ア・・・アオアオ・・」

「・・・どうしてこんな事二?」


「・・・サワガミの奴らに撃たれたらしい。あかりちゃんを庇って」


心臓を撃たれたアオは、上野と佐久間、事情を聞いた上野の母によって処置された。


なんとか一命を取り留めたものの、意識は戻らず、今は個室の集中治療室で眠っている。

この緊急事態に、色人達は病院へ集まっていた。


「弾丸は回収できたし、心臓の傷も塞ぐことはできた。大量に出血してたから、青の塗料で輸血して、」

「で、でもっ、色人は色を口に入れてもすぐ吐き出さないとっ・・・」

「口から吸収する分にはそうなんだけど、直接体内の血管に輸血する分には問題なかったよ。点滴も、青の塗料を混ぜたら、拒否反応はなかった。その辺の体のメカニズムは僕にもよくわからないけど・・・」


「アオはた、助かるんですか?」

目を真っ赤にしたあかりが上野に詰め寄った。


「今は一応大丈夫だけど、今回のケガで、アオくんの心臓機能が落ちていて・・・正直いつまでもつか・・・」

「・・・・・アオは死ぬんですか?」

「も、もちろん、できる限りのことはするけど」

「お願いします、上野さん・・・!アオは、私を庇って・・・私のせいで・・・・」

「あかりんっ・・・」


その場で泣き崩れるあかりの肩を、クロが抱き寄せた。


「わ、わかった。とりあえず、あかりさんはお母さんの告別式あるだろ?とりあえずそっちに・・・クロさん、キイロくん、あかりちゃんについててあげて。サワガミの奴らは、きっとまた狙ってくるから」

「は、はい~」

上野に見送られ、シロ、クロ、キイロは病院を後にした。


そして、ミドリ、チャイロは病院でアオに付き添うことになった。アオの様子を見ながら、ミドリは上野に話しかけた。


「・・・にしても、随分用意が良いデスネ?何故病院にそんなに大量の青色の塗料があったんデスカ?」

「・・・何かの役に立つかなって思って用意してあったんだよ。もちろん、青だけじゃなくて君たち全員の塗料を用意してある。何かあったらいつでも助けられるように」


「・・・・・・・・・」


ミドリの疑問に上野は冷静に返したが、ミドリの疑念は晴れなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「私はあの男が信用できまセン」


翌日。意識の戻らないアオの付き添いをするキイロに、ミドリは鼻息を荒くして言った。


「あの男って~?」

「上野デスヨ、ハカセの息子の!」

「ええ~!上野さんは良い人だよ~。今もアオのこと助けてくれたし~」

「タイミング良すぎませんカ?青が襲撃されるのを見越したかのように、青の塗料を購入していたり、サワガミの奴らも、病院に現れタシ」

「え、ええ~?上野さんがサワガミの人ってこと~?」

「そもそもアイツはハカセの息子ですし、サワガミとつながっていてもおかしくありまセン」


つまり、上野はサワガミのスパイ。それが、ミドリが立てた仮説だった。


「で、でもそれならアオを助ける必要なくない~?」

「大事な被験者を死なすわけには行かなかったのでショウ。もしかしたら、私たちの信用させるためにあえてアオを撃たせて助けたのカモ」

「え、ええ~考えすぎじゃない~?」

「それに、何故か病院に色人を集めたがっていたデショウ?アオが重症を負えば、私たちは病院に集マル。色人全員おびき寄せて、捕らえるつもりカモ」

「た、確かに色人全員で行動した方がいいとは言われたけど~」


「とりあえず、私は信用できまセン。確かめマス」

「ど、どうやって~?」

「実力行使デス」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・ハイ、それで、その女性患者が・・・」

ガラッ

個室で電話をする上野の背後のドアがいきなり開き、ミドリは上野をおさえた。


「わ、わ、なに、なに?」

「・・・今の電話は何デスカ?」

「え・?」


「相手はサワガミではありませんカ?」

「はあ!?」

「キイロ!後ろのロッカー、開きなサイ!」


「ええ?」

ミドリに呼ばれ、怯えた様子のキイロが入ってきた。


「う、上野さん~。ぼ、僕は上野さん信じたいんですけど~」

「グタグタ言ってないで、開きなサイ!」

「う、うう~」

キイロが戸惑いながらも、個室のロッカーを開けると、そこには青の塗料が大量に敷き詰められていた。他の塗料はない。


「え、こ、これ~」

「アナタはアオが襲われることを想定していたデショウ!」

「え・・・・」


「じゃなければこんなに青の塗料だけを保持してるのデスカ!?全員分、用意してる言っていたノニ!」

「い、いやそれは・・痛ッ」


反論しようとする上野の腕をミドリはさらにきつく縛り上げた。


「しかもサワガミの者は、病院で藤吉あかりを待ち伏せしてマシタ!あなたが呼んだのでショウ!白状しなサイ!」


ミドリの持っていたツルは、上野の首をつたいはじめた。


「白状しなサイ!じゃないとこのまま絞め殺しマス!」


「・・・わかった!言う!言う!言うから離して!痛い!」


「え、ええ~?上野さん、、」

キイロは泣きそうな顔で上野を見つめた。


「ち、違う、キイロくん。僕はサワガミの者ではない、本当に!信じてくれ!」

「・・・じゃあ何を隠してたんデスカ?」


「・・・確かに、ミドリくんの言う通り、僕はこの事態になることを想定していた」

「ほらやっぱリ」

「ち、違う!僕が仕組んだんじゃない!姉さん!姉さんが言ったんだ!!」


「・・・・姉さん?」

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