すれ違い
「え・・・・?」
「ど、どうして~?」
「早朝の・・・・・仕事中に・・階段で、足滑らせて・・・」
「・・・・それは本当に事故なのか?もしかして澤上の誰かが」
「ァ、アオ~!そ、そんなわけないでしょ~!」
「今の状況だと何でも疑ってかからないと」
真剣に訴えるアオから、あかりは目を反らした。
「・・・・何で、私のお母さんが澤上に殺されないといけないのよ・・・」
「あと、あんたの父親が自殺した日は、八月十五日だったよな?」
「・・・・・は?」
「ア、アオ~、今そんな話は・・・」
「あんたの父親が自殺した日、朝からハカセは研究所から離れてた。もしかして・・・・」
「・・・・お盆だから、朝から二人でおじいちゃんの墓参りに行ってたらしいけど・・」
「!・・・・何で言わなかった?」
「別に兄弟なんだから普通でしょ・・・」
「でもその日の夜に父親は自殺したんだろ?」
「なに?叔父さんが殺したって言うの!?いい加減にして!!私はお母さんが死んでるんだよ?こんな時に、何でこんな事詰問されなきゃなんないの!!」
あかりはアオをきつく睨みつけた。
「・・・いや、俺は」
「そうよね、あなたにわかるわけないよね!マトモな人間じゃないんだもん!」
「どういう意味だ!」
「ふ、二人とも落ち着いて~」
「もういい!知らない!出てって!二度と私に関わらないで!」
あかりは激しく激高し、アオとキイロは家から追い出された。
「・・・たく」
「これからどうする~?」
「あの様子だと聞く耳なさそうだし、とりあえず日を改める」
そう言って、アオは病院に向かって歩き出した。
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「アオ~さっきの言い過ぎだよ~これからどうすんの~」
「・・・知らねえよ、あんな奴」
「あかりちゃん、大事なお母さん亡くしたんだよ~、もっと労わってあげないと~」
「うるせー!」
「・・・アオ~」
「しょうがねえだろ、俺はマトモな人間じゃねえし、親もいねえんだから!わかんねーだろ!!」
「・・・・・・・・」
そう言ってずかずか前を歩くアオの背中に、キイロは小さく呟いた。
「で、でも~」
「何だよ!」
「・・・わ、わかんなくても、相手の立場に立って考えるのが、人間なんじゃないの~・・・」
「・・・・・・・」
「わからないからって考えることを辞めちゃったら、いつまでたっても、人間ぽくなれないっていうか~」
「・・・・・・・」
「ァ、アオ・・・だから謝りに~」
「うるさい!ついてくんな!」
「え・・・え・・アオ・・・アオに嫌われた~~!ヤダ~」
後ろで大泣きするキイロを無視して、アオは早足で歩き出した。
〝そうよね、あなたにわかるわけないよね!マトモな人間じゃないんだもん!〟
(結局アイツも・・・そう思ってたんだな・・・・)
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「え、あかりさんのお母さんが!?しかもアオくんと喧嘩した!?」
「どうしましょ~上野さん~ぼ、僕・・・アオがいなきゃ・・・アオがいないと・・生きてけないのに~」
傷心のキイロは一人で上野の個室へ駆け込み、休憩中の上野に泣きついた。
「キ、キイロくん・・・落ち着いて。他の色人達は?」
「ま、まだ何も~」
「・・・と、とりあえず一人では行動しないほうがいいから、早く仲直りして、皆を招集した方が」
「は、はい~・・・・」
キイロは涙を拭いて、力なく立ち上がり、個室のドアに手をかけた。
「キイロくん、」
「・・・・?」
名前を呼ばれて振り返ると、上野はまっすぐにキイロを見つめた。
「・・・これは・・・キイロくんの事を思ってあえて言うけど、」
「?」
「・・・人は一人で生きていくことは出来ないし、何もかも一人でこなすことも、もちろんできないから、アオくんや、誰かを頼ることは、いいんだけど・・・」
「・・・でも、人や何かに依存しすぎてしまう人の人生は、・・・・・」
「・・・・・・一人で生きていくより・・・遥かに、孤独なものになるよ・・・」
「・・・・・・・」
上野の言葉に、キイロは目を見開いた。
上野はキイロをまっすぐ見つめたあと、デスクに視線を戻し、何もなかったかのように事務作業を進めた。
キイロは無言で頭を下げて、上野の個室を後にした。
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個室に一人残った上野は、天井を見上げた。
「母親が死んだということは・・・・やはり、〝そうゆうこと〟なのか・・・」
『PIPIPIPIPPI』
そうつぶやいた直後に、上野のスマホが鳴った。
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キイロは病院の屋上にいるアオの元へ向かった。
「ァ、アオ~、」
キイロが声をかけると、アオは無言で振り返った。
「・・・・・・・・」
「アオくん、キイロくん!」
無言の二人の元に、慌てた様子の上野が駆け寄ってきた。
「どうした?」
「佐久間さんが見つかった!!」
「!!」
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アオ、キイロは上野の車に乗り込み、佐久間の元へ向かうために、高速を走っていた。
「・・・大学時代の友人が興信所やってて、調べてもらってたんだ。佐久間さんは今、仕事もせずに実家で引きこもってるらしい」
「サクマ・・・生きてたのか」
「電話したら母親が出て、彼の大学の友人になりすまして、これから会う約束できたから。丁度、今日の午後が休診で良かった・・・」
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三人は表札に佐久間と書かれた軒家に到着し、インターホンを鳴らすと、母親らしき女性の声で対応された。
『はいー』
「先ほど連絡した友人の佐藤です」
『どうぞ、お待ちしていました』
佐久間の母は、上野の偽名を疑うこともなく、広い家の中へ案内した。
「涼さんの大学時代のお友達でしたわね?」
「はい。久しぶりに里帰りしてきたので、佐久間くんの顔見たくなって。この子達は、うちの弟です。昔、よく一緒に遊んでくれたんですよ」
上野の弟になりすましたアオとキイロは何も言わずに会釈し、佐久間の母は「あら、可愛い」と言って微笑んだ。
「きっと喜びますわ。階段上がった奥の部屋にいます。私は下でお茶入れてきますね」
「ありがとうございます」
部屋の前に到着した上野は佐久間の部屋をノックしたが、返事を待たずにドアを開けた。
「・・・・・・・!」
散らかった部屋の中には、奥のベッドでうずくまる佐久間の姿があり、佐久間はシーツの隙間から顔を覗かせ、アオとキイロを確認すると、目を見開き、焦って窓に向かった。
「・・・・・・・!」
窓を開ける寸前で、アオが塗料を変形させ、窓を閉じた。
「・・・・・・・う、うわわわ!」
「落ち着け。俺たちはあんたに危害を加えたいわけじゃない」
「・・・・・・・・」
佐久間は泣きそうな顔でアオを見つめた。
「あんたが研究所を去った後、銃を持った集団が襲ってきた。ハカセは殺されて、俺たちはバラバラになった。単刀直入に聞くが、あんたが澤上にリークしたのか?」
「わ、わざとじゃない・・・!お、俺はずっと藤吉さんに、お、脅されて、て、手伝いやらされてて・・・そしたら父親に、藤吉さんと連絡とってるとこ、見られて」
「それで、俺たちの場所教えたのか?」
「じょ、上層部につれてかれて、い、居場所、しゃべらないと、殺すって言われたんだ・・・」
「上層部?」
「そ、それが何かはわかんねーけど、人体実験なんかやってるくらいだから、相当、やばい。ふ、藤吉さんは死んだけど、ひ、被験者は逃げたから、お前のもとにきたら、お、教えろって。お、俺だって、本当はこ、殺されてた、はず。で、でも、無事なのは、お、俺の親父が、幹部だから。そ、その後、実家に戻ったけど、い、未だに、お、お前たちの行方わからないのかって、れ、連絡、くるし」
「・・・今も俺たちを探してるのか」
「と、当然。つ、捕まるのも、じ、時間の問題」
「何?」
「し、白の色人のが、画像が出回ってる、ネ、ネットで」
「・・・・はあ!?」
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佐久間の部屋にあったパソコンで動画サイトにアクセスすると、車が爆発し、周囲の人間が逃げ回る様子が映し出されていた。以前、クロが起こした爆発事故だ。
そして、シロとあかりが車の爆発から供に逃げる様子がモザイクなしで映っていた。
「・・そうか。テレビだとモザイクかかってたけど、ネットだと・・・」
「や、闇サイトで、い、いくらでも、み、見れる。か、関係者が見れば、こ、こいつが、ひ、被験者だって、わかる」
「・・・アイツが危ない」
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