守りたい人
上野の指示で色人全員とあかりの血液と細胞を採取し、提出した。
そして、数時間後に病院の中にある上野の個室に全員呼び出された。
「・・・君たちそれぞれの血液、細胞を調べてみたけど・・・やはり血液の色素は普通の人間と違う。・・でも、細胞や髪の毛、レントゲン見ても構造は普通の人間と同じだし、やはり色素だけが違うんだよね・・・」
「あと、食べ物については、胃腸とか調べないとわからないから詳しくは調べられないけど、これを見てほしい」
上野は三つの試験管を差し出した。
「まず、これがアオくんの血液で、その横が普通の人間・・ていうか僕の血なんだけど。見てて」
赤い血液が入った試験管に青の血液を注ぐ、すると、その二色の血液は分離した。
「・・・・・・!」
「僕も驚いたんだけど、油みたいに分離して、決して交わらないんだ。次に、あかりちゃんの血液なんだけど・・・」
あかりの血液が入った試験管にアオの血液を注ぐ。
すると、試験管に入れた青の血液は、赤く染まった。
「これは・・・つまり・・・?」
「そう。赤色の血になった。だから、あかりちゃんの血液には、色人のウイルスを打ち消す
作用がある、可能性が高い・・・」
「でも、今は半色人みたいになってるよね~?」
「うん。父さんがウイルスの繁殖を見逃してたか、時間差で発症したのか、アオ君たちと接触したことで何か変化が起きたとか・・・」
「・・俺たちと関わったせいで色人になったのか?」
「あ、あくまで可能性の一つだから。・・何であかりちゃんの血液にこんな作用があるのかわからないし、これからどうするかは、色々調べてからでないとだけど」
「・・・コイツの血液は?コイツが人間に戻る方法はないのか?」
「・・・ああ、あかりちゃんね。そうだね、ちょっとやってみる」
上野はあかりの血が入った試験管に、上野の血を注いだ。すると、先ほどのように分離した。
「・・・あれ?混ざらない・・・」
「・・・じゃあ、私も・・完全な人間には戻れない・・・?」
「・・・うーん・・そのことも含め、これから調べて・・・」
「頼む」
アオは真剣に、上野に頭を下げた。
「・・・アオくん・・・」
「コイツを・・・俺たちを、治す方法、調べてくれ。俺も、協力するから」
「わ、わかった。あと、あかりちゃんの心臓の精密検査の結果も出たんだけど、特に異常はないよ」
「あ、そうなんですね・・・」
あかりはホッと胸を撫でおろした。
(でもじゃあ、何でこんな頻繁に・・・?)
「ストレスとかの可能性もあるけど。あと、もしかしたら、あかりちゃんの中で、色人のウイルスが、暴走しているのかもしれない」
「え、何で私だけ?」
「あくまで仮説だから。元々の体質で拒否反応が出ているのかもしれないし。ずっと研究していた僕の父も、原因はわかってないみたいだったし・・・これから、調べていくしかないけど」
不安そうに俯いたあかりのスマホのアラームが鳴った。
「あ、私、そろそろバイト・・・」
「送ってく」
不安そうなあかりの心情を察してか、アオがあかりの後をついてきた。
「いいのに」
「いいから。行くぞ」
病院を出て、二人は並んで歩道を歩いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アオ・・ありがとね」
「?何が?」
「私のために頭下げてくれて」
「・・・それは、これ以上、ハカセや俺たちの事に無関係なアンタを巻き込みたくないから」
「・・・それに、いつも私の事、守ってくれて」
「だから、それは」
「・・・嬉しいけど、もしかして、あなたには、私の他に、私以上に、守りたい存在がいるんじゃない?」
「?どうゆうことだ?」
「私にも、よくわからないけど。なんか、そんな気がしたから・・」
あかりは優しく微笑んで、そのまま前を見て歩き続けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アオ、どうしたの~?ぼーとして~」
あかりを送り届けた後、アオは病院に戻り、ずっと考え事をしていた。
上野の色人の研究に協力するために、アオとキイロは病院の客室で寝泊りしていた。しかし、帰ってからずっと無言のアオをキイロが心配そうに覗き込んでいた。
(・・・・俺の、守りたいもの・・・?)
『・・・これは、去年の八月十五日の映像です。この日は大雨で、洪水が起こり、観光地として有名な信濃橋が流されて・・・』
客室についているテレビのニュース映像が目に入った。そこには、大雨で氾濫した川の水で、橋が流される様子が映し出されていた。
「これ、見たことある~」
そうだ。アオは、この映像に見覚えがあった。
(そうだ。あれは確か・・・・ハカセがいない時・・)
あの日は大雨で、何かの用事で朝から研究所を出ていたハカセの代わりに佐久間が監視にきていた。ハカセに比べて監視が甘いサクマの目を盗んで、キイロと天気のニュースを見ていた。隣の県では、大雨で川の水が氾濫し、観光で有名な橋が流された、とニュースでやっていた。
アオは、あかりの言葉を思い出していた。
〝お父さんが亡くなったのは十五日・・〟
「キイロ・・・・」
「ん~?」
「あいつの父親が自殺した日って・・・・」
「えっと~去年のオボンって言ってたよね~。確か、十五日・・・」
「その日の朝から・・・ハカセはいなかった・・・」
「え、どうゆうこと、アオ~!?」
「・・・ハカセは、あいつの父親が死んだ日に研究所を留守にしてる・・・」
(アイツの父親の自殺と何か関わりがあるのか・・・?)
もちろん、ただの偶然かもしれないし、山を降りてあかりの兄に会っていたという確証もない。
しかし。
「アイツに確認してみるか・・・」
「え、でももう夜だよ~?」
そう呟いて、アオは時計を見た。もう夜十時を回っていて、あかりが帰宅している時間だった。
「明日の朝会いに行く。休日だから、家にいるだろ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日の朝、キイロとアオはあかりの家に駆けつけ、インターホンを押した。
「・・・・・・・」
だが、反応はない。
「あれ~?電気ついてるよね~?」
今日は学校は休みで、バイトも昼からだと言っていた。あかりの母が早朝のパートにでるから、代わりにあかりが家事をやる日だと聞いていた。
インターホンを何度押しても反応はない。
他の用事で、ただ単に外出してるだけかもしれない。しかし、アオはなんとなく嫌な予感がした。
(まさか、サワガミの奴らが・・・?)
澤上が追っているのは色人の自分たちのはずだが、ハカセ経由で藤吉あかりの情報を手に入れているかもしれない。
「お~い、あか「シっ!静かに!」」
アオは絵具を取り出し、静かに鍵穴に流し込み、変形させてからゆっくり回した。
「せーので飛び込むぞ・・・」
「うん・・・」
「せーのっ!」
勢いよく突入したが、中の光景は想定外のものだった。
玄関には顔を青白くしたあかりが立っていた。
「え、あ、あかりちゃん!?どうしたの~?」
あかりは何も言わずに一点を見つめていた。
「・・・・どうした?」
どうやら尋常ではないあかりの様子に、アオは冷静に問いかけた。
しばらく黙っていたあかりだったが、体を震わせながら、ゆっくり口を開いた。
「今・・・警察から、電話があって・・・・」
「え?」
「・・・お母さんが、死んだって・・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます