#11 宗教(4)
なぜ、宇宙の起源や運命にまつわる問題を、宗教が解決してくれると期待するのだろう。
私たちは、よくできた論文が電気や熱の起源について教えてくれるとは思わないし、自然史が人生の起源にスポットを当てることもない。生物学が存在証明をしようとしたことがあるだろうか。
シモニデスは、シラクサのヒエロン一世から「神とは誰か、神とは何か」と問われたとき、答えを考えるために一日の猶予を求めたが、その後、熟考に必要な期間を二日に延長した。ヒエロン一世が理由を尋ねると、シモニデスは「この問題は考えれば考えるほどわからなくなる」と答えた。
インドの聖典ヴェーダには、「太陽の中心に光があり、光の中心に真理があり、真理の中心に不滅の存在がある」と書かれている。
神とは、あらゆるところに中心があり、周縁部のない円であると定義されているが、聖ヨハネの「神は愛である」はより強く人間の魂に訴えかけてくる。
教会は、勉強や思索の場ではない。
日記作家のウジェニー・ド・ゲランがカフーズの小さな礼拝堂に寄せる愛情に共感する人は少ないが、彼女はここで『Tant de Miseres(たくさんの不幸)』を書き残したと語っている。
(※)ウジェニー・ド・ゲラン(Eugenie de Gurein):詩人モーリス・ド・ゲランの姉。弟を縛りつけるほど溺愛し、モーリスの死後、天国にいるモーリスに宛てて文通と称した日記を書いた。
疑いは、信仰・信条を否定するものではない。
「信仰に迷いがあるが、行動が清らかな彼は
ついに自分の音楽を完成させた。
信条の半分よりも、素直な疑問の中にこそ、
より多くの信頼がある」[3]
宗教に関する多くのことが、現在(おそらく将来的にも)明らかではないと認めるなら、私たちが「人類の始まりと終わり」について、さまざまな推論にふけることを赦されるかもしれない。
「私たちの誕生は、眠りと忘却にすぎない。
私たちと共に昇る魂、私たちの人生の星は、
他の場所に沈んでいて、遠くからやってくる。
完全な忘却でもなく、完全な裸でもなく、
栄光の雲を引きつれて、私たちはやってくる。
私たちの故郷である神のもとから」[4]
残念なことに、多くの人が「人生の邪悪さ」を「純粋な信仰」で埋め合わせようと試みているが、これは無駄で実りのない努力だ。
正しい行いは、天国へ至る確かなはしごになるが、真の信仰は、そのはしごを見つけて登るのに役立つ。
「至高を愛したのは、私の義務である
至高を知ることは、間違いなく私の利益となり
至高を見ることは、私の喜びとなるだろう」
宗教的な真理は、苦い思考や経験を正当化することはできない。
だが、考えたり研究したりする価値は十分にある。
私は、真理に到達しようとする誠実な努力や、宗教のために命を落とした人々の献身を過小評価することがないようにと願っている。しかし、彼らの視点からすれば実際は特権だったのに、殉教を功徳と見なすのは間違いだ。
人はそれぞれ、自分の心の中でこう言い聞かせよう。
「真理とは、人間が守るべき最高のものだ」[5]
真理に到達するためには、自分自身の苦痛・苦悩を惜しんではいけないが、他人には絶対に苦痛を与えてはいけない。
争いは決して宗教を進歩させないし、迫害は改宗の道ではない。
「我々に賛同しない者はすべて永遠の苦しみを受ける」と考える人々は、死に至るまで迫害することを理屈っぽく正当化しようとしている。このような方針が一貫して実行されれば、特定の宗派を一掃できるかもしれない。
仮説によれば、「地上で与えられるいかなる苦しみも、地獄の苦しみに比べれば大したことではない」という。
たとえそうだとしても、このような宗教観は神の善意を尊ぶ信仰とはかけ離れているし、ましてやキリストの教えとはまったく相容れない。
さらに、異端審問はそれ自身の観点からしても、ほとんど失敗だったと証明されている。殉教者の血は、教会の種である。
「コンスタンス公会議(1415年)の命令で、ウィクリフの遺体は掘り起こされ、焼かれて灰にされ、すぐそばを流れる小川スウィフトに投げ込まれた。小川は彼の遺灰をエイヴォン川に運び、エイヴォン川からセヴァーン川河口に、河口から狭い海に、海から大洋へ。こうして、ウィクリフの灰は彼の教義の象徴となり、今や世界中に散らばっている」[6]
タルムードによると、ある男が「片足で立っている間に律法を教えてくれ」とシャマイに頼んだところ、シャマイは怒って追い払った。ヒレルに同じことを頼むと、ヒレルは「自分がしてほしいことを他人にしなさい。これが律法のすべてだ。他はその注釈に過ぎない」と語った。
(※)シャマイ(Shamai)とヒレル(Hillel):ユダヤ教の律法学者。
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