第57話 ご機嫌な幼馴染

「♪♪~」

「ご機嫌だな」


 鼻歌を歌って終始笑顔の明美にそう言うと、彼女は嬉しそうに写真を見つめている。


「そう、かな?」


 休日に同級生と出かける事なんて今までなかったのだ。

 きっと嬉しいのだろう。

 休日出勤で疲れたが、彼女の嬉しそうな笑顔をみれただけでお釣りがくる。


「ちょっと買い物いいか?」

「私もついでに買ってこ~」


 そう言って僕らは555の豚まんに並ぶ。

 

「いい匂いだねぇ~」

「だな~」


 肉のいい匂いが漂ってくる。

 帰るまで我慢できないわ。

 

「肉まん10個入二つと二個入り一つ、あと袋もう一つ」

 

 そう言って頼むと、明美は恨めしそうにこちらを見てきた。

 はしたないとかそういうのではない。

 恐らくだが、体重の事だろう。

 毎年の事だが、彼女は夏に向けてダイエットをするので恐らくそのことだろう。


「たまにはいいんじゃないか? ほら、チートデーってやつ」


 そう言って中から一つ取り出し、彼女に残りを渡す。

 

「うぅ~……(チラッ……フルフルフル)、うぅ~」


 食べたいけど、ダイエットがぁ~って感じで見ていて面白い。

 正直な話、明美は細いのでもっと食べてもいいと思う。

 そうして誘惑に負けたのか、明美は小さな口で一杯に豚まんを頬張る。

 そうして口に入れた瞬間、美味しそうな笑みを浮かべながら口元を抑えモグモグしていた。

 食べ方がリスみたいでめちゃくちゃ可愛いんだよな~。

 そうして食べ終わると、満足そうに鼻歌を歌っていた。

 

「どこ行くんだよ」

「ん~? ちょっと家まで歩いて帰ろっかなって、駄目?」


 あぁ、食べた分動くてきな感じか。

 まだそこまで暑くもないし、豚まんが腐ることもないだろう。

 

「いいよ」

「やった」


 歩いて三十分ほどだが、疲れたらバスを使えばいい話だ。

 そう思いながら歩いていくと、懐かしいゲームセンターが目に飛び込む。

 昔、明美と共に小遣い貰って遊んでたっけ。

 あの頃の事は覚えている。

 忘れるわけがない。

 初恋の子と一緒に来れる事で楽しみだったのだから。


「どうしたの? 懐かしいね、昔はよくお小遣い貰ったら二人で遊んでたっけ」

「だな、あの頃の明美、ぬいぐるみ取れなくて泣きそうになってたな」

「な、泣きそうになってないよ!! 悔しかっただけだもん」

「そういう事にしといてやるか」

「もう、まさくん意地悪なんだから」


 そう言いながら通り過ぎる。

 時間は19時過ぎだ。

 高校生は遊べないのは分かっているので、僕らはそのまま歩き出す。

 そうしていつもの通学路に合流した。

 

「公園、通って行っていい?」

「でももう暗いし危ないぞ」

「大丈夫だよ、この時間ならまだ人がいるだろうし」

「まぁそれもそうか」


 そうして僕は明美と共にいつもの公園に入っていった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る