第48話帰宅

「送ってくれてありがと」


 明美と何気ない話をして帰宅していると明美の家に着いた。

 

「あぁ、また明日な」


 そう言って明美が中に入っていくのを確認すると、僕は帰路に着く。

 いつも一緒に居るから悪くないと思っているか……。

 才人の言葉が頭をよぎる。

 明美が僕を?

 ……無いな。

 多分だけど、明美は僕の事を仲のいい幼馴染みとしか見てないだろう。

 

 自分で言ってて悲しいけど、明美にはもっと相応しい男がいると思う。 

 イケメンで優しくて、明美を幸せにできる。

 そんな人間が明美には相応しいだろう。

 まぁ、それまでは彼女を変な虫から守るのが僕の役割だ。

 ……胸が痛いな。

 明美が僕ではない誰かの横で笑っている姿を想像すると胸が痛む。


「まさくんまさくん!!」

  

 明美が玄関の方でこちらを呼んでいる。


「どした?」

「……手を出して」

「あ、うん」

「はい、これあげる」


 そう言うと。可愛らしい小包のの入った袋を渡してくる。


「クッキー作ったの、よかったら食べて」

「……ありがとう」

 

 可愛らしい笑顔にドキッとしてしまった。

 

「それじゃあ、また明日」

「うん、また明日」


 そう言って彼女が家に入ると、再び帰路に着く。

 うまそうだな。

 役得というかなんというべきか、他の男子が聞いたら殺されるだろうな。

 

 袋を開けると、クッキーの中に手紙が入っていた。


 まさくんいつもありがとう♡


 手紙にはそう書かれていた。

 ………。


 勘違いするな勘違いするな勘違いするな。

 明美にそんな気はなくても、僕だって男だ。

 わかっていても心の中で嬉しくなってしまう。

 

「すぅ~、はぁ~」


 深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせる。

 そうして僕は家に着くと、風呂を済ませて部屋でゆっくりしながらクッキーを食べる。

 仄かなチョコの甘みと少量の塩分がマッチして美味しい。

 

「お兄、ちょっといい?」

「んぁ? どふぃた?」


 妹の紗理奈が部屋に入ってくる。

 

「漫画貸し……何それ?」

「あぁ、明美がくれたんだよ、いつものお礼って」

「明美姉の!? 私も食べたい!!」


 紗理奈は机の皿に出していたクッキーを食べると、美味しそうな表情をしている。

 

「美味しい~」


 そう言ってそのまま明美のクッキーを平らげる。

 それ、僕のなんだけどな~。


「この漫画借りていくね~」


 そう言って紗理奈は本棚にある漫画を二巻分持って自分の部屋に戻っていった。



 

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