第37話
「行くぞ、澄田」
「お、おう……」
彼は僕の方を見てそう言うと、僕は明美を引っ張って運動グラウンドの外に出る。
「やっぱり、そっちも勧誘ひと悶着あったか」
「あぁ、そっちも大変そうだったな」
互いに苦労している
「部活動、ちゃんと話聞きたかったな~」
「お前が行くと、女子がホの字になるからやめとけ」
心底面倒くさそうな顔で赤羽は高田さんを見ている。
「そんなこと言われたって、私だって好きでこうなってるわけじゃないわ」
無意識系イケメンというべきだろうか。
食堂での件でもそうだが、彼女の行動力は凄まじく男子に対しても物怖じせず言う姿は女子からしたら憧れるだろう。
「……そろそろ戻るか」
「うん、そうだね……」
僕の言葉に疲れたような顔で明美はそう答えた。
「にしても、お前らは違う意味で大変そうだったな」
「みてたのなら助けろよ」
「それは、お前の役割だろうよ」
何が役割だこの野郎。
まぁ、赤羽も高田さんの様子を見ていたのでそんな余裕はなかったのだろう。
「とりあえず、部活動のチラシは集まったしクエスト達成だな」
「誰が発注したのよ、そんなクエスト」
赤羽の言葉に、呆れたように彼女は突っ込みを入れる。
「だから言ったじゃない、運動部はやめとこうって」
「俺は入るなら運動部がいいんだよ……っても入りたい部活はなかったな」
彼は勧誘紙を見ながらそういうと、見終えたのか彼女に一部を渡す。
「女子部の勧誘紙だ」
「……ありがと」
「わ、私も見せて」
「うん、戻ってから一緒に見よ」
そう言って僕らは教室に戻る。
明美は高田さんと楽しそうに話している。
「なんだ、二人を見て」
そう言うと、赤羽は斜め前の席から椅子を寄せて話しかけてくる。
「いや、明美と仲良く話してくれる女子なんていなかったから」
「ふ~ん、真田さん可愛いから仲良くなりたいって子多いと思うけど……」
「そりゃ、いたにはいたけど……ろくでもない奴ばっかりだったよ」
彼女を悪い方向に行かせようとする奴や利用しようって奴ばかりだったので、対処が大変だった。
明美も明美で、結構騙されやすいので肝を冷やしたことは数知れなかった。
「それに比べて高田さんは何事もなさそうだよな」
「んなわけあるか、あいつは違う意味で大変だわ」
僕が言うと、赤羽は食って掛かるように僕に言い放った。
「あいつ、何でもかんでもズバッというから敵多くて、こっちがどれだけ苦労したか」
あ~、なんとなくわかる。
彼女は曲がったことが嫌いな感じだ。
食堂の件も文句を言いに来た時も、人目をはばからずそう言った。
「今は大人しくなったが、昔は喧嘩っ早くて」
「そうなのか?」
「あぁ、俺なんて何度殴られた事か」
それは、君が失礼なことを言ったからでは?
今回も殴られてたし。
自業自得な気がする。
「お前ってさ、なんかやってんの?」
「ん?」
「いや、ガタイのいい先輩に絡まれても物怖じしかったから」
「あぁ、いつもの事だよ……」
というか、彼女といると面倒な輩がモンスターのように湧いてくるので、あの程度ならスライムに等しい。
「それに、明美の方が強いぞ?」
「え、そうなの?」
しまった、これは言ったら不味いやつだった。
明美は空手をやっている。
通信教育で習ったにもかかわらず、その腕前は僕よりも上だ。
「今のは忘れてくれ」
「なんでだよ」
「頼む、明美に怒られる」
「何の話?」
僕はその声を聴いて背中に悪寒が走った。
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