第36話
不本意ですが、仕方ありません。
今、私ははぐれない様にまさくんに手を引かれています。
これは、デジャブというやつでしょうか。
中学の頃も、部活動の勧誘が酷かった。
特に運動する側ではなく、暑苦しい猛獣のサポートなんてまっぴらごめんです。
それに私は運動が好きなので、運動する側の勧誘をすれば少し考えてやらないこともありません。
「君、可愛いね~!! マネージャーとかどう!?」
案の定、マネージャー目的の男子部員が話しかけてきます。
まるでナンパの様です。
否、ナンパの方がもっとうまく誘うでしょう。
まぁ、断りますが。
「この子はうちの部に入るんだ!! ね、はいってよ」
おっと、違う生徒が来ました。
次々くる生徒に囲まれ、私の腕が掴まれました。
痛いです。
私の小枝のような細い腕が折れそうです。
「あの、この子に何か用ですか?」
まさくんは私の腕を引っ張り、引き寄せてきます。
思わずときめきかけたじゃないですか、この天然。
「なんだ、お前は!?」
邪魔をされて苛立ったのか、先輩がまさくんを睨みつけています。
だから嫌なんですよ、野蛮な奴が多い鉄板系の部活動は……。
凄んだり暴力とかいつの時代だって話ですよ。
「幼馴染ですが? どいてくれますか?」
まさくんが言い返します。
いいですよまさくん、流石私の騎士!!
「あ? お前、舐めてんの?」
出ました、頭の悪い単細胞の筋肉馬鹿は頭が悪いですね。
すぐ何かあれば暴力で支配しようとするのは悪い癖ですね。
「ここで暴力沙汰は部活動に響くのでやめた方がよくないですか?」
まさくんが冷静に言い放つと、男は睨みながら去っていきます。
これは、後で何かしてきますね。
こういう直ぐ引くやつの次の行動パターンは二つです。
彼を排除して彼女を勧誘する。
彼がいない時を見計らって勧誘する。
排除……つまり、物理的もしくは後輩を使って私から引き離し、その間に私を執拗に勧誘することだろう。
あの目からして恐らく後で彼を呼び出して暴力でわからせる気でしょう。
一応、対策しておきますか……。
やりようはいくらでもあります。
「明美、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
顔が近いです。
何でしょう、身体が熱いです。
それに、彼の顔がいつもモブ顔なのに近いからか少し、ほんの少しかっこよく見えます。
「おっとすまん」
そう言って彼は私から離れると、私の鼓動と体温が戻っていきます。
「それじゃあ行くか……」
「う、うん……」
どうしよう、顔が見れない。
なんていうか、本当に私おかしいのです。
「あれ、二人は……」
まさくんの言葉で彼女達がいないのに気が付きます。
私は辺りを見回すと、彼女達を見つけます。
「あ、あそこ……」
女性部員が梨乃ちゃんを取り囲んでいます。
「ぜひ、私の部活に!!」
「いえ、私達の!!」
梨乃ちゃんが困っているのに対し、赤羽君は面白そうに見ています。
なんてやつでしょう、困っている彼女を見て楽しむなんて性格が悪い極みです。
女生徒に囲まれている梨乃ちゃんに気が付き、男子部員たちも集まってきます。
「はい、そこまでにしてくださ~い」
男子生徒が勧誘しようとしたところで、赤羽が彼女の前に立ちます。
まるで男子を近づけたくないような、そんな感じがします。
「もうそろそろ、戻らないといけないのですみません」
彼はそう言うと、梨乃ちゃんの手を握りこちらへ歩いてきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます