第13話 緊張感でおかしくなりそうです

  最後の難関が立ちはだかります。

 今、私は第二の難関が開幕しようとして少し緊張しています。

 それは、自己紹介です。

 新入生代表挨拶で特大成功を収めた私ですが、それでも連続は心身の疲労によくないです。

 心が折れそうです……。

 そんなことなど、世界は許してくれません。


 あぁ、世界なんて滅びてしまえばいいのに……。


 なんて心の中で明美は明美は厨二発言を繰り返してみます。

 そんなことを言っている場合ではなりません、難関がすぐそばまで迫ってきています。

 緊張します。

 恥ずかしさとかそういうのではなく、自己紹介とは最初の上下関係を決める最重要案件です。

 これで苦難が待ち受けているか、楽園が待っているかクラスでの立ち位置が決まるのです。

 まぁ、可愛さでは最強部類に君臨する私ですが、それに嫉妬した恋愛獣が私に嫉妬して反旗を翻す可能性は何としても避けねばなりません。

 

 そして、私の番が来ました。

 私はゆっくりと立ち上がります。 


「さ、真田……明美……です……」

 

 よし、人見知りながら頑張った作戦は上手くいきました。

 しかし、ここからは沈黙が必要です。

 人見知りとは緊張して話せない風を装わねばなりません。

 ならば、この沈黙に耐えて誰かが声を掛けてくれるのを待たねばならないのです。

 ですが、この沈黙は視線を集めるので、私は少し……ほんの少しだけ恥ずかしくなってきます。 


「……真田さん、ええっと……」


 私の気持ちを察したのでしょうか、枝川先生が心配そうに話しかけてきます。

 流石、私の気持ちを察して言うとはいい教師ですね!!


「あけ……真田さん、質問いい?」

「あ、うん……」


 高田さん……いえ、梨乃と呼ぶのを意識しないといけません。

 彼女にそう呼んでと言われたのなら、そう呼ぶしかありません。


 私は正直、何を聞かれるのか気になりました。

 スリーサイズはとか聞かれたら、放課後校舎裏でミンチです。

 間違えました、リンチです。


 まぁ、私の世界で彼女をしばき回すだけなのですが。

 実際やったら私の方が返り討ちにされそうなので脳内で留めておきます。


「趣味は、なんですか?」

「趣味は、読書です」


 読書と言っても漫画やラノベを読んでいるだけですが、これも立派な読書です。

 誰がなんて言おうと読書です。

 違うとかいう奴は今すぐ私の脳内でしばき回します。


「お~、本好きなんだ~」


 そうして何かくだらない質問をしてきたが、知識はあるのでそれなりに気に入りそうな言葉を連ねていきます。


「以上で質問を終えます!!」


 まるでドラマで見る裁判の弁護士のような言い方で彼女は質問を終えました。

 馬鹿なのでしょうか?


「はい、では真田さん……座ってください」


 私はそう言われて席に着きます。

 そうして私の最難関は幕を閉じました。

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