第12話 叱責と卑怯な幼馴染

「ん?」

「ん? じゃないよ!! 何勝手にいなくなってんの!!」


 なんで怒られているのだろうか。

 僕には、全くといっていいほど心辺りがない。


「えっと……」

「まさくんの馬鹿」


 後ろに隠れていた明美がそう言うと、小さい舌を出してべ~っと出してくる。

 っていうか言うなら隠れずに言おうな……いや、言われたくないけど。

 

「お昼、明美ちゃんと一緒に食べる予定だったんでしょ!! 何何処か言ってんの!!」

「いや、新しく出来た友達だし……その……」

「遠慮したと?」


 全くその通りです、はい……。

 僕は彼女の詰問にコクリと頷いた。


「馬っ鹿じゃないの!!」


 そう言うと、彼女は肩まで伸びた中身を靡かせて僕の前に詰め寄ってくる。

 石鹸のいい匂いがする。

 

「どんなことがあっても、約束が優先でしょうが!!」


 気の強そうな瞳がより一層細められる。

 怖いというより、違うドキドキが勝っている。


「聞いてるの!?」

「た、高田さん…そのくらいで……」

「た~か~だ~さ~ん~?」


 その視線は、明美に向き彼女はビクッと小柄な体を震わせる。


「ひゅい!? り、梨乃ちゃん……」

「……」


 そう言うと、彼女は僕の方を呆れたように見つめてくる。


「明美がいいならいいんだけど……」


 そう言うと、彼女はそのまま離れると僕の腕を握る。


「お、おい……」

「昼休み少ないんだから急ぐわよ」


 そう言って彼女は僕の腕を引っ張り、明美の方へ向かい彼女の手も握って歩き出した。


 場所は屋上の近く……屋上は立ち入り禁止されているため、ここに人は来ることはない……そう思っていたのだろう。

 人がいたことに彼女は想定していなかった。

 ここに、シートを敷いてご飯を食べている人たちがいた。

 

「あら、新入生の方?」


 物腰の柔らかいリボンからして上級生だろうか、包容力のありそうな女性が僕らを見る。

 隣には先程、入学式の時に壇上にいた生徒会長……確か間島海まじまかいさんだったか? 

 彼女と秘密の密会だろうか……なら邪魔しちゃ悪いよな。

 

「はい、新入生の高田梨乃です。 そしてこっちが真田明美ちゃん…こっちが澄田

……まさくんです!!」


 この子、今僕の名前が覚えられず、明美が呼んでいる名前で自己紹介しやがった。

 っというか僕、さっき自己紹介したよな?

 クラスの自己紹介したはずなのに覚えられてないのは、流石に凹む。

 まぁ、記憶に残る自己紹介じゃなかったのが悪いんだろうけど。

 そういうのをモブの僕に求めないでほしいものだ。


「澄田将司です」


 そう言って僕は改めて屋上にいる二人に挨拶した。

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