第8話 新しい生活の一番最初の席ガチャ
教室へ向かうと、席順が張り出されていた。
「僕は一番後ろの席か……」
「私は一番前か~」
列は同じく窓側だが、僕は一番後ろで彼女は前に書かれていた。
「一緒の席じゃないのは残念」
残念そうな顔で彼女は俯いていた。
「代表挨拶頑張れたんだ、もう少し頑張ってみよう?」
友達百人とはいかないまでも、一人でも友達が出来るといいなと思った。
「うん、そうだね……頑張ってみる!!」
明美は胸の所に拳を作り、ガッツポーズする。
可愛い……。
女の子としてではなく、親目線で応援したくなる可愛さだ。
「よし、じゃあ行ってこい」
「うん、頑張ってみる!!」
フンスっと鼻を鳴らして彼女は席に着く。
僕も彼女を見送ると、自分の席に座る。
彼女の方を見ると、さっそく隣の女子が話しかけていた。
日差しを反射するほどの綺麗な黒髪に、気の強そうで意志の強そうな吊り上がった瞳。
見た目からは確実に陽の分類の……クラスの中心でふんぞり返っているような子だ。
一方の明美はというと、緊張しているのかビビっているのか、その場で固まっている。
気の弱い彼女と気の強そうな女生徒……その光景は完全に蛇に睨まれた蛙だった。
「お~い」
女子生徒は彼女が話さずに固まっているので、彼女の顔を覗き込む。
駄目だ、完全に目が死んでる。
固まったまま瞬きさえ出来ていない。
仕方ない、助け船を出すか……。
「明美~、今日の……君は……」
さりげなく近づき、声を掛ける。
「私、
見た目からは想像できないほど礼儀正しく挨拶してくる。
「澄田将司……こちらこそ」
そうして明美を見ると、いつの間にか僕の後ろに隠れていた。
音もたてず、気配も出さず……まるで忍者のように僕を盾にして隠れている。
「すまん、こいつ人見知りなんだ……ほら、挨拶しなさい」
そういうと、ひょっこりと彼女の方に顔を出す。
「真田明美……!!」
名前までは言えたが、恥ずかしいのか隠れてしまった。
「すまない、悪気はないんだ……」
「うん、わかってるよ……壇上で見てたし……大変だったね~、よく頑張った!!」
ガッツポーズをして高田さんは明美を見ている。
「が、頑張った……」
右手を出し、ガッツポーズで返す明美。
なんというか、高田さんもどうしていいかわからず藪から棒になっている気がした。
「こいつ、こんなんだけど仲良くしてやってくれ」
「もっちろん!! なんて呼べばいいかな? 真田さん? 明美ちゃん? あけみん?」
「あ、明美でいい……」
「じゃあ明美ちゃん、これからよろしくね」
高田さんがそう言うと、人形のように首を縦に振り続ける。
「明美、今日の……えっと……なんだっけ?」
忘れてしまった風を装う。
「え、速くない!?」
「ど忘れって奴かな? まぁ、思い出したらまた言うよ」
流石に言い訳苦しかったに違いないが、僕はそう言うと再び自分の席に着いた。
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