第5話 新入生代表挨拶

 なんてことでしょう……いつの間にか私はあれよあれよという間にもう少しで壇上に立たないといけないではありませんか。

 憂鬱です。


「それではお三方、それぞれ開始まで今しばらくお待ちください」


 そう言って進行裏方の男性は元の配置に戻っていきます。

 私もあの役がいいです……いえ、やっぱり何もしたくありません。

 やるなら裏方ですが、出来れば何にも関わらずボーっとしていたいです。


「緊張してる?」


 爽やかそうなイケメンが私に声を掛けてきました。

 こういう男はモテるので、女子に目をつけられるので注意しなければなりません。


「はい、大丈夫です」

「君、名前は?」


 私の笑顔が気に入ったのか、名前を聞いてきました。

 不味いです。

 早速私の理想の 学校生活王国が早くも崩れ去りそうです。


「おい、後にしろ」


 理知的で私に話しかけてる爽やかな感じとは違い、こちらは違う意味でモテそうな男だった。


「相変わらずお堅いですね、会長は……」


 どうやら生徒会長の様です。

 えっと確か……思い出せないので、どうでもいいです。


「お前が楽観的すぎるだけだ……怜雄」


 れおさんというのですか、道理で獣みたいにグイグイ来るわけです。

 あ、名前で決めるのは偏見でした……反省です……。


「会長、俺は緊張してる女の子に声を掛けただけですよ?」

「緊張している? この子が?」


 まるで私の性格を見抜いているような、そんな瞳。

 私のセンサーが反応しています。

 関わってはいけないと……。


「……とにかく、もうすぐ始まる……緊張感を持て」

「はいはい」


 おっと、獣さんがあっさり引きました。

 この人はある程度人徳があるという証明だろう。

 不味いです。

 

「そろそろ、会長……お願いします」


 そう言って彼は壇上に上がりました。

 驚くことに、紙など一切見ずに……否、元々紙は持ち込みのはずなので、彼は何も持っていないはずです。

 それなのに、彼は淡々と言葉を連ねていくです。

 驚きました……あんな長文、よくも詰まらずに答えられるものです。

 きっとすごい練習したに違いありません。

 彼は努力家なのでしょう。


「凄いでしょ、あの人文章全部覚えてるんだよ」 

「そうなんですね……凄いです」


 ここに彼が居ないのが恨めしいです。

 隠れる場所がないので、私は仕方なく口を開くことにします。


 そう言いながら壇上を見ていると、猛獣さんが歩き出す。

 そのまま会長さんも話し終え、こちらに戻ってきます。


「しょうもないこと言ったら許さん」

「へ~い」


 そう言って猛獣さんが壇上に立つと割れんばかりの甲高い歓声が響き渡った。

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