第6話 琵琶湖が余呉湖を餌にして大阪湾で淡路島を釣る ・・・

ある晴れた朝、突然に、

琵琶湖と、その連れである琵琶湖北部突端に位置する余呉湖が───


琵琶湖「ちょっとこっち来てくれるか」

余呉湖「え? 何するん?・・・わわわ、琵琶湖に引っ張り込まれた、

    これ、ちょっとどないなってんの? 

    わ、北湖は深いな大きいな、ちゃうねん、言うてる間に

    琵琶湖大橋くぐって南湖まで来てしもたがなこれ・・・

    ちゅーとったら瀬田川に入ってしもてやなこれがまた・・・

    はれ? 今宇治川通らんかった?

    え? ここ淀川ちゃうん・・・

    げ! 大阪湾に出てしもたあ!」


琵琶湖「おう、大阪湾まで行ったか。悪いけどなあ、淡路島釣ってきてくれるか」

余呉湖「え? 淡路島なんかどないするん?」

琵琶湖「そろそろ冬やでな」

余呉湖「季節はめぐるわな」

琵琶湖「雪も降るわな」

余呉湖「降るやろな」

琵琶湖「ふとんに丁度ええやろ」

余呉湖「ふとんて・・・あんた淡路島かぶる気か?」

琵琶湖「こう、180度回してやな」

余呉湖「すっぽりポッカポカ・・・何でやねん!」

琵琶湖「とりあえず淡路島の近く行って餌になってくれるか」

余呉湖「餌て、淡路島て余呉湖で釣れるん?」


琵琶湖「あそこに橋見えるやろ?」

余呉湖「明石大橋やな」

琵琶湖「もういっちょ向こうにも」

余呉湖「鳴門大橋か」

琵琶湖「明石の根元と鳴門の根元におっかぶさってやな、ちぎって橋ごと持ってくるんや」

余呉湖「・・・悪いこと考えよんな」

琵琶湖「早よせーや! 寒いの嫌いなんじゃ。ちゃっちゃとやらんと元の場所に

    戻したらへんど!」


余呉湖「わー、それつらい! 大阪湾に混ざってしもたら余呉湖もへったくれも

    あらへんがな。

    よーし! やったるでえ!」


余呉湖「ちょっと、淡路のおにーさん」

淡路島「なんや、見かけんやっちゃな」

余呉湖「はあ、琵琶湖の陰に隠れてま。

    ほっとけ」

淡路島「なんか用か?」

余呉湖「九日、十日。ちゃうねん、

    滋賀行く気ない?」

淡路島「なんで淡路島が滋賀行かないかんねん」

余呉湖「琵琶湖はんがやな、ちょっと顔貸してほしい言うてまんねん」

淡路島「何? 琵琶湖? あいつ一ぺん絞めたらないかん思とってん」

余呉湖「閉める! 合意できましたね!」

淡路島「ちょ、何すんねん!」


ザッパ───ン!

も一つ、ザッパ───ン!


余呉湖「合意事項の実行ですよ。

    よっこらせーのー!

    明石大橋持って琵琶湖の方に背負い投げーっと!」


ズワン!


琵琶湖「誰が裏返せ言うてん!」

余呉湖「180度振ったら和歌山奈良大阪なめてまうやん」

琵琶湖「兵庫京都回しの方が近いやろが!」


琵琶湖「まあええわ。今年の冬はヌックヌクや!」

余呉湖「よかったな。やったったで! 戻してえな! もとんとこに!」

琵琶湖「あ? ・・・ごめん、淡路島に蓋されて通るとこなくなったわ」

余呉湖「びぇ〜〜〜!」


淡路島「あ? ・・・琵琶湖の水止めてもたがな」



                     ─── END ───
















































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る