第5話 循環 ・・・

どこからが始まりだろう?


一粒の雨が落ちてきた。

木の葉に当たり、

木の葉はそれをはじいて

細かな飛沫に分け、

残ったかたまりは葉先へとすべって

下へと落ちた。


大地がそれを抱きとめた。

深く、深く、そのふところへ。

そこにはたくさんの仲間がひしめいていた。

その中に混じり、溶け込み、

誰が誰だかわからなくなった。


やがて、みんなでどこへともなく地中をくぐり、

いつの間にか、一つの、小さな気泡を道連れに、

大勢のたまり場へと湧いて出ていた。


プク・・・と。


団体で一つの方向へと、流れていく。

魚たちの体内をすり抜けたり、

繁る水草の迷路をさまよったり、

岩に分けられて、また出会ったり・・・


いつしか流れは悠々となり、


やがて、否応もなく、塩気の混じった潮の流れへと乗り継いでいく・・・


遥かな大海の、

どことも知れない真ん中で、

それは陽の光に誘惑されて、上へと吸い込まれていった。


透明になった。

そのまま、大気に包まれ、

大空を進んだ。

包んでいるのも、同じ団体。


みんなで、白くなった。

大勢の冷たさが、ほんのちょっとだけ、

重さを与える。


もうちょっと重くなって、

とうとう、下へと墜落していった。


どこへ落ちるのだろう?


大勢と一緒に、

焼けたアスファルトに当たって、

散り散りに跳ね返った。


みんな、どこへ行くのだろう?

どこまで行くのだろう?


どんな旅を始めるのだろう?


いや・・・

始めるまでもなく、

この旅は、永遠に終わらない。

何度も、何度も、繰り返す。

繰り返し続ける。


それが、地球の命である限り───。



                 ─── END ───




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