おねえちゃん達と昼食

 借り物競争や玉入れ競技。

 他の種目を終えると、あっという間に昼がきた。


 他の生徒たちは、学食でご飯を食べたり、グラウンドの端っこで親子揃って昼食にしたり、様々だ。


 ボクはグラウンドの端っこの隅という目立たない場所に、ブルーシートを敷いて、安城さん達とご飯を食べた。


 午後の種目に備えて、食べ過ぎないように少なめの料理。

 けれど、野菜や海苔を巻いたおにぎり。ハンバーグなど、他の人とあまり変わらない料理が、弁当箱に詰め込まれていた。


「どうぞ」


 ボクが時折、安城さんを母のようにしたってしまうのは、こう言うところだった。


 細かい気遣いがされていて、本当に嬉しいのだ。

 豪華な食事を用意するのではなく、周囲から浮かないように普通の料理を作ってくれる。

 場所だって、目立つのが苦手なボクが居心地良いように、隅の木陰でシートを敷いてくれていた。


 何より、身内に体育祭を観に来てもらう、というのは小学校の時以来だ。


 ほとんどなかったから、とても嬉しかった。


「いただきます」


 おにぎりを食べ、「美味しい」と感想を言う。

 食べていると、前髪を指で分けられ、手ぐしで整えてくれた。


 今日の安城さんは、白いワンピースを着て、普通の格好だった。


「ねえ。どうして、あたしの料理だけ肉料理が多いのよ」

「好きではないですか」

「い、いやいや。野菜が一つも入ってないじゃない。太るわよ」

「太ってますよ」


 安城さんが大きな胸を見て言った。


「……覚えてなさいよ」

「ボクの食べる?」

「いいわよ。施しは受けないわ」


 相変わらず、プライドが高い。

 ボクはそれを知っているので、自分から折れるのだ。


「いっぱいだから、食べて」

「……もう。仕方ないわね」


 ブロッコリーなどをお姉ちゃんの弁当に移していく。


「ふふ」


 思わず、笑みがこぼれた。


「何がおかしいのよ」

「ん、こうやって、一緒に食べるの美味しいな、って」

「いつも食べてるじゃない」


 安城さんが黙って頭を撫でてくれた。


「そうだけど。むぐ。美味しい」

「変な子」


 肩を軽くぶつけてきて、お姉ちゃんが笑った。

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