お姉ちゃんと試着室

 午後からは、お姉ちゃんとお出かけをした。

 バスで町の方に向かい、店が集中している駅の所で降りる。


 連れて行かれたのは、ショッピングモール。

 お姉ちゃんは洋服の置いている店にきて、ウィンドウ越しに独りで頷いていた。


 そして、中に入ると、小学生が着るような女の子の服をボクに重ねて、首を傾げている。


「お姉ちゃん。外で待ってたい」

「ダメよ。迷子になるでしょ」

「な、ならないよ」


 実は初デートで迷子になり、泣いてしまったのは記憶に新しい。


「フリル付きの方が可愛いわ。どうしよう。ゴスロリの方がいいかしら」

「お姉ちゃんが着るの?」

「あなたに決まってるでしょ。バカ言わないの」

「えぇ……」


 女の子の服を男が着る。

 それは、抵抗があるってものだ。


「きなさい」


 言われた通りについていく。

 連れて行かれたのは試着室。


「これを着て」


 渡されたのは、花柄のワンピースだった。

 他には、お姉ちゃんが着るような、気品のある服。

 また、やけに背中の裂け目が大きい服まであった。


 絶対に嫌だ。


「や、やだ」

「わがまま言わないの。ほら」

「大体、着方が分からないし」


 ワンピースに着方もへったくれもないだろうけど。


「……仕方ないわね」


 お姉ちゃんが試着室に入ってきて、カーテンを閉める。

 当たり前のように服を脱がしてきて、まずはワンピースを手にした。


「足上げて。そう。いい子ね」


 あっという間にワンピースを着せ、一緒に姿見を見る。


「んー、悪くないけど」

「……似合わないよ」

「こっちは?」


 今度は気品のある服。


「ませた子供みたいで可愛いわ。叩いてしまいそうよ」

「ひ、酷い」

「あとは……」


 変な服を着せてきた。

 お尻は丸出しで、前だけ隠れているセーター生地の服。


「ふふ。ちょっとセクシー過ぎるわね。これは買わないと」

「買うんだ……」

「へそが出てるのもあるけど。これは微妙ね。ゴスロリ服を試しましょう」


 この日、服を10着以上買う事になった。

 全て女の子の着るもので、きっちりと靴まで衣装に合わせるため、買っていた。

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