見ていた彼女

「お姉ちゃん?」

「うん。そうなんだ」


 チャットで送った失礼極まりない返信について、ボクは正直に話した。


「実は家に来るのを断ったのも、お姉ちゃんが何するか分からなくて」


 体育祭の日が近づいてきて、体育の授業が多めに取られている。

 リレーの練習は終わったので、騎馬戦の練習待ちだ。

 今は男子たちが応援団をして、声を張り上げている。


 そのくだりを遠くから、一部のクラスメイトが眺めていた。


 グラウンドの隅でボクが弁解をすると、堤さんは「よかったぁ」と安堵の息を吐く。


「嫌われたのかと思って、ちょっとショック受けたじゃん」

「ご、ごめん」

「そういうことなら。いいよん♪ 許す」


 堤さんの明るい笑顔で、心が浄化されていく。


「それはそうとさ」

「うん」

「今日の放課後。騎馬戦の練習しようよ」


 騎馬戦は下に三人がいて、その上に一人が乗る形。

 どう考えても、二人では足りなかった。


「人数足りないよ?」

「ふっふ~。わたし、見てて気づいたんだよねぇ」

「?」

「レンくんは、バランス感覚悪すぎ」


 言われてみると、確かにそうだ。

 他の男子たちは身長が高いので、ボクからすれば、ぐらぐら揺れる高所に座らされているのと同じだった。


 落ちたらどうしよう、と怖くて前に手が伸ばせない。

 事実、頑張って前のめりになれば、馬が崩れて、下の男子におぶさる格好となった。


「そ、そうだね」

「だから、わたしが馬やるよ。あ、応援団終わった」


 前を向くと、クラスメイト達は拍手をして、長い学ランを来た男子たちに、からかいの声や称賛しょうさんを浴びせる。


「次は騎馬戦かぁ」

「マジでだっるいよなぁ」

「一人勝ち目指しますか!」


 応援団をやった男子たちは学ランを脱いで、観ていた人たちはグラウンドに集まっていく。


「レンくん! がんばって!」

「う、うん!」


 笑顔で送られ、ボクはグラウンドに移動した。

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