姉の洞察

 朝食時、お姉ちゃんは辛そうにこめかみを押さえていた。


「……い、たぁ」

「大丈夫?」

「風邪を引いたのかしら。頭がガンガンするわ」

「レン様。ご飯粒が付いています」


 口元を触られて、心臓が飛び跳ねる。

 顔色を窺うように、安城さんを見ると、さらに心臓がバクバクとした。


 落ち着いた目つきで、ボクの目を見てくるのだ。

 見つめたまま、ご飯粒を舌ですくい、口に含む。


 その口が妙に艶めかしく笑うのだ。


「どうかされましたか?」


 太ももに感触があった。

 見ると、温めるように太ももの内側を擦ってくる。


「う、ううん」


 いけない事だと分かっているけど、ボクは朝から股の所が変だった。

 ずっと熱を持っていて、悶々とした気分が晴れない。


 昨日、あれだけ怖い目に遭ったのに。

 ボクの体は安城さんに反応していた。


「ねえ」


 現実に戻され、顔を上げる。

 何やら、お姉ちゃんが目じりをヒクつかせ、ボク達を見ていた。


「……どうして、あなたが隣に座ってるわけ?」


 特に、隣へ座っている安城さんに疑問を抱いているようだ。


「いけませんか?」

「おかしいでしょう。わざわざ隣に座る理由がないわ」

「理由はありますよ」

「聞かせてもらえる?」

「……レン様は、甘えん坊ですので。ふふ」


 お姉ちゃんの目つきが鋭くなった。

 下から睨みつけるようにして、安城さんに無言の圧力を掛けている。


「レン」

「あ、うん」

「昨日、……あった?」

「え?」


 なぜ、そんな事を聞くんだろう。

 お姉ちゃんは確かに寝ていたはずだ。

 けれど、今のお姉ちゃんは明らかに疑っている。


「何もありませんでしたよ」

「あなたに聞いてないわ。黙りなさい」

「あらら」


 相変わらず、ボクの内股を擦りつつ、笑みを浮かべる安城さん。

 頬杖を突いて、カッと目を見開くお姉ちゃん。


 朝から、険悪な雰囲気だった。

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