第7話 サキュバスの水着

 しばらくつなちゃんとイチャイチャした後、彼女はそのまま言ってくる。


「じゃあ今から尻尾見せてあげよっか」

「ほ、本気で言ってたんですか?」

「うん」

「流石にその、生でっていうのは……」


 キスして結構アレな気分になっているため、じっとつなちゃんの事を見てしまう。

 つなちゃんも俺の視線に気づいているらしく、優しく微笑んだ。

 というか彼女の場合、既にわかりやすいくらい尻尾が見えていた。

 俺と同じで興奮しているらしい。


「なに? 見たくないの?」

「……見たいです」

「あはは、正直で良いね」


 欲望には抗えなかった。

 エロいこと云々の前に、そもそも好奇心もあった。

 サキュバスなんか見たことがないため、尻尾がどうなっているのかはとても気になる。


 と、そんな俺につなちゃんは照れくさそうに苦笑した。


「ごめん。自分から言っておいてあれだけど、生は恥ずかしいね。ちょっと水着に着替えるから部屋出てもらえるかな」

「あ、はい」

「すぐ着替えるから」


 俺はそのまま若干前かがみになって部屋を出た。

 その姿につなちゃんはまた笑った。



 ◇



「あはは、どう?」

「いやその……綺麗です」

「ありがと~」


 呼ばれて部屋に戻ると、つなちゃんは水着に着替えてベッドの上に座っていた。

 上下黒のビキニである。

 吸い込まれそうになる豊満な胸の谷間から視線を外しつつ、俺は聞いた。


「なんで上まで……」

「見たいかと思って」

「……」

「感想は?」

「おっきいですね」

「あはは、赤くなっちゃって可愛い。ねぇねぇ、これどのくらいあると思う?」


 胸をぎゅっと寄せながら聞いてくるつなちゃん。

 その顔は若干上気しているのがわかる。

 今のつなちゃんは本当にサキュバスみたいだ。

 えっちだ……。


 ってかなんだっけ。

 どのくらいっていうのはカップ数の事かな。

 とりあえず首を傾げながら、俺は答えてみる。


「Fカップとか?」

「ざんね~ん。Hカップでした~」

「そ、そんなに……」

「アニメとかとリアルの大きさは違うよ」


 ニヤニヤされながら言われて、めちゃくちゃ恥ずかしくなる。

 ヤバい、童貞丸出し過ぎた。

 つなちゃんには俺がモテない陰キャだという事もバレているが、それとこれとは別である。

 恥ずかしい。


「触ってみる?」

「え、遠慮します!」

「あはは、そっか。まぁ今日のメインはおっぱいじゃないしね」


 彼女はそう言うと笑いながら四つん這いでベッドに上がる。

 そしてお尻を俺に向けてきた。


「……マジか」


 そこには本当に尻尾があった。

 俺達の尾てい骨があるくらいの位置から、黒くてしなやかな尻尾が伸びている。

 先っぽはハートマークみたいになっている。

 若干水着を下げているため、お尻が危ういところまで見えているが、そんなのどうでもいいくらいに尻尾に気を取られた。

 なんだこれ……。


「どう?」

「さ、触ってみて良いですか?」

「や~だ。敏感だからダメ」

「あ、すみません」

「あはは、触られると私も本格的にえっちな気分になりそうだから。私に襲われてもいいなら好きにして良いよ?」

「やめておきます」


 流石にこの場でヤるのは俺も望んでいない。

 つなちゃんは元の体勢に戻って座りなおす。


「私、初めて尻尾を他人に見せたんだ」

「え?」

「ふふ、二十一年間の人生で瑛大君だけだよ」

「二十一歳だったんですか?」

「うん。言ってなかったっけ? 拳で抵抗する年齢」


 サキュバスと言えど、つなちゃんは普通に人間と同じように生活をしている。

 尻尾の生えた姿でネットのネタを言われると違和感が凄いが、同じ日本人だと強く意識させられた。


「っていうかなんで俺だけ?」

「……」


 俺が聞くとつなちゃんはニコッと首を傾げる。

 え?

 どういう意味だ。


 困惑している俺につなちゃんは首を振った。


「まだ内緒」

「そうですか」


 はぐらかされて微妙な気分になりながら、俺は頬を掻く。

 しかしその直後、おかしなことに気付いた。


 俺以外に尻尾を見せた事がないって、どういうことだ?


 だってその、そういう行為に及ぶ際はどうしても見えるだろ。

 裸になれば自ずとわかるはずだ。

 なのに、どうして。


 俺はチラッと隣のつなちゃんの顔を見る。

 先程からやけに赤らんでいるように見えるのは気のせいだろうか。


「あの」

「どうしたの?」

「ずっと気になってるんですけど、なんで電気すらつけないんですか?」

「……瑛大君が恥ずかしいかと思って」

「なるほど」


 まぁ確かに、明るいところでつなちゃんに興奮している俺の顔を見られるのは少し気が引ける。

 ありがたい配慮だった。

 だけど、本当にそれだけなのだろうか。


 俺は首を傾げながら、つなちゃんの隣でぼーっとする。


「あ~、なんか寒くなってきたし服着るね。着替えるからちょっと良いかな」

「あ、はい」


 なんだかやっぱり、サキュバスっぽくないお姉さんである。

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