045 透かしユリと夢みがち

◆2023年月日6月17日

なさけない姿の夏野菜がまばらなプチ畑──。

その奥というかボロロプレハブ寄りで、ただいま透かしユリが3色咲いてます。

勝手に生え育った桑の木に陰る根方なので、きっと本来より花色が淡め。

そしてこの亜属にしては、草丈もひょろりと伸びすぎ。


けれどかえってそれで…はかなげが風情なのが、いい。

終いに咲いたさやかな山吹色のは、よりそいあいながら横たわりかけている。



初めにつぼみがほどけたのは象牙色の一輪でした。

その翌々日、残る二輪がおずおずと。

そう見えたのは、どれもうつむき咲いたからでしょう。

次の桃色だけは、透かしユリらしく上向きでした。

それでもやはり、どこかしら夢みがちに見えました。



実はこれまで、透かしユリは好きじゃありませんでした。

海沿いの国道際のが日差しの強さに抗した朱花は、丈低くなんだか造花みたいで。

だから買いこんだのは、木々で鬱蒼とした山に六月も彩りをって理由だけでした。


イノシシに球根を喰われぬよう、増やすまでは囲いのあるプチ野菜畑で、空きは桑の樹下だけとて、透かしユリは軟弱に育ったわけですが、おかげで秘めてた魅力に気づかされたんでした。

獣害に泣かされる荒れ山なればこそ、こうして知ることができた。




いつかこのみずぼらしいプチ畑ではなく、広々囲える資金と気力が蓄えられたとしても、それでもやはりどこかの樹下へ植えたいなあ…………。


透かしユリばかりか、貧乏たれ婆さんまで夢みがちな梅雨晴れ間のことでした。。









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