041 家守君のお出ましにつき…

    ◆2023年6月9日

さあ、今日こそは外仕事に!

──と立ち上がったら窓にはりつくヤモリン君を見つけ、またも昨日も放置畑へは出向かず終いでした。

だってね、彼の右前脚がないみたいだった。

シッポ落とし癖が高じ、ついに脚まで粗末にしたかいな?

こりゃ確かめないわけにいきゃしません。こんなボロロプレハブなのにお守りくださる、家守一族様のオミアシよ。





でも大丈夫でありました。

あぁ、よかったよ。


すっかり汚れた窓ガラスと網戸越しのため、なかなか確認できなかったんです。

近寄りすぎて驚かしたら逃げられちゃうしね。

窓をふさいで厚く繁る金木犀、のたくるキーウィにまぎれて。


けど昨日のヤモリン君はぷっくりお腹で四肢をふんばらせ、しばらく警護の意気にみじろぎませんでした。

こんなぼっち婆さんの雨もり家をねえ……。



そして、なぜ、無償ガードの善行を知られるたび、あの一族は悪事が露見したごとく雲隠れするんでしょ・・・。

ひきこもるだけでお礼すらのべたことない婆さんこそ、恥じ入り消えなきゃなのに。




そんなひがみ根性婆さんがこもる、雨漏り鉄錆びプレハブ──。

それでも家守一族様は、梅雨も守護してくれる気満々のようでした。





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