056 七夕ひとりぼっち
◆2023年7月7日
銀河にへだてられた織姫と彦星が年一度だけ逢瀬がかなうという、今夜。
されど海月婆さん、相も変わらずひとりぼっち。
とはいえ天の恋人たちをうらやむほどのパッションなんぞは干からびてて、淋しいのはヤモリンたちが現れてくれないせい。
梅雨時となると例年、毎晩のようにガラス窓にはりついてくれるはずだったから。
…つまんないなあ……。つまらんぞォ。
窓をおおうキーウィのツルを挟み、2匹が近寄っては離れては七夕伝説を具現してくれてた夜々──。
それが今夜に限って見られないだなんて。
がっかりしてたら、
なんと、ゴキこそが2匹、私目がけて飛んで来た! ギャーッ!!
わめきながらティッシュボックスぶん回しちゃった。
お前らなんぞ、待ってたわけないじゃーん!!
奴らなり気を利かせてくれたか知らんけど、死ぬほど許せんわッ。
憤慨して息荒く、なんでヤモリンもゴキも海月山では連れ立ち現れるんじゃと滅裂疑問。伴い、答もパッとひらめいたのでありました。
そうです、なぜにヤモリンが地下ごろめっきり現れなくなったのかを。
それって、電気代節約にボロロプレハブの灯りを卓上スタンドだけにしたからで。
それじゃあ窓辺まで明るさ届かない。虫は集まらん。ヤモリンまで出て来ない。
そんでもって私の手元しかない明るさへ、ゴキ共ならば突進して来たっちゅう!
しみじみ……、電気代もままならない貧乏暮らしぶりを嘆かされたことでした。
こんなだものなあ、今夜くらいは老いらくの恋にあこがれてもおかしくなかったろうに、ゴキ襲撃されたとライン発信できる爺ィすらいやしないんでした。
しつこく招けど
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