リトライ

 タコさんが再び地球へ向かう日が来てしまった。

 ボクはタコさんにひとつだけお願いをする。


『毎日ボクにレポートを送ること』


 7の月のあとに地球へと送り込んでいた偵察隊は、ボクが切望していたスマートフォンを持ち帰ってきてくれた。

 タコさんが敗走してから、地球の環境を再調査するために偵察隊を送るようになったのだ。


 スマートフォンは地球とこの星とでやりとりができるように技師長が改造してくれた。

 不必要な時は腕に収納できるようになっている。


「行ってきます!」


 タコさんの二度目の地球行きを、大佐以外にも反対する者はいた。

 いたが、この星から宇宙空間に放り出したから今はいない。生きているかどうかも不明だ。


 大佐は出発式で腑に落ちないような表情を浮かべている。

 出席してくれるだけでもありがたい。


 大佐が欠席したら自分も出なくていいやって言い出すやつが出てくる。


 ボクはタコさんこそが適任だと思っている。

 ボクに歯向かう者は追放されても致し方ない。


「行ってらっしゃい」

「ご武運を」


 参謀はにこやかに手を振り、技師長は敬礼した。

 ボクからは「レポートを忘れないように」と念を押す。


「わかりました!」


 これがこの星で最後に聞いたタコさんの言葉になった。

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