大佐の場合

「なりませぬ。大王様。次こそは我があの星を焦土に「しないでほしいぞ!」黙れアンゴルモア!」


 取っ組み合いになってしまった。

 そうよなあ。


「大王様、お気を確かに。我らは侵略者。慈悲などいりませぬ」

「いる!」

「お主には聞いていない!」


 あーあーあー。


 先に参謀のほう行っといてよかった。

 技師長がタコさんをパワーアップしてくれたから、大佐と互角に張り合っている。

 強化前だったら張り倒されていたところだ。


『技師長に頼んで、大王様の頭を元通りに戻したい』

『トチ狂ったとおっしゃる?』


 大佐の呟きにボクが現地語で反応すると、大佐はギョッとした顔をする。


 そういうの全部わかるんだから。

 タコさんに教えてもらったもの。


「いえいえ、めっそうもない」

『いや、わかるよ。ボクになる前の〝恐怖の大王〟は侵略バンザイ! だったんでしょう? それがこの体たらくだ』

『この通り! 地球の件は我に!』


 土下座されたってそうはいかんよ。

 タコさんが大佐に墨吐こうとしてる。


『今の〝恐怖の大王〟は、タコさんにもう一度チャンスを与えたい』


 これまでの恐怖の大王とは違うのだ。

 大佐にはわかってほしいのだ。のだ。


『タコさんが失敗したら、ボクが直接手を下す』


 ボクの生まれ故郷、地球に住まう人類を滅亡させる。

 それだけの力が今のボクにはあり、今のボクが他の何よりもすべきことだ。


 ……そりゃあまあ、ボクにも仲の良かった友だちはいる。彼らの人生がどうなってもいい、と、ボクが一蹴できるような権利はどこにもない。


 人類を滅亡させてしまったら、ボクは完全に恐怖の大王となるだろう。

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