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 7の月と言っておいてよかった。

 ひとりぼっちで遠くの青き星地球に向かうタコさんのことをこの星の全員で励ましたり壮行会を開いたりしていたら、七月も終わりかけている。


 具体的な日付を告げていたら大混乱になるところだった。

 どちらにせよ混乱は生じている、と思われるが、例えば明日雪が降ると予報されていて前日頑張って準備したにも関わらず実際には降らず、肩透かしを食らわされるよりは、――いやどちらも嫌か。嫌でした。


 ボクもこの星の言葉をある程度は理解できるようになった。

 ボクがタコさんに日本語を教え、タコさんはボクへ対応する宇宙語を伝えてくれる。

 周りで悪口を言われていてもわかるぐらいにはなった。


 もっとも〝恐怖の大王〟であるボクの耳に入る場所で誹謗中傷してくるような輩もいない。


「大王様」


 初期に比べればかなり流暢だ。

 いよいよ出発の刻か。


「タコさんには行ってほしいところがある」

「はい。大王様の勅令とあらば、たとえ火の中水の底」


 慣用句まで使いこなすようになった。


「ボクが亡くなった病院だ」

「大王様が……?」


 正確には〝恐怖の大王〟の中の人であるボクが最期の瞬間を迎えた病院。


 大王様はそう簡単には死なない。

 この肉体、かなり頑丈にできている。


 タコさんにバレたら心配性のタコさんからタコ殴りにされてしまうので、タコさんにはナイショで大佐からボクの武勇伝を聞き出したのだ。信憑性に欠ける情報はこの身をもって検証した。大佐は最初こそ手加減しているように見えたが、最後の方はガチでボクを殺しにかかっていた。ここだけの話、二度目の死を迎えてしまうかと戦慄したぐらい。

 ガドリング砲が出てきたり、高いところに連れられて真緑の草原に叩きつけられたり、火炙りにされたりしてもなんともなく、こうしてピンピンしている。痛くも痒くもない。


「ボクが死んだ後、ボクの遺体がどうなったのか気になっていてね」

「大王様のことですから、盛大にお別れの儀式が執り行われたことでしょう」


 生前のボクは今のような大それた存在ではないから、タコさんが言うような派手な葬式はしていないだろう。


 ボクの両親はボクが結婚してから亡くなってしまった。

 付き合いのあった親戚もいない。


 離婚した元妻が引き取ったとは到底思えない。

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